
AI導入に必要な「基礎体力」とは、マネジメントの四則演算を正しく実践できることです。
足し算・引き算・掛け算・割り算が数の世界の基本であるように、
経営にも“成果を生むための基本操作”があります。
その基本とは、
目的を設計し、計画を立て、実行し、振り返る。
このサイクルが正しく機能して初めて、経営データに意味が宿ります。
ところが日本企業の現場では、この四則演算が驚くほど崩れています。目的が曖昧なまま計画が立ち、計画が属人的なまま実行され、結果の振り返りは“報告会”で終わる。
AIを導入しても、データの整合性が取れず、意図のない分析に終始してしまうのはこのためです。
多くの経営者は、AIが意思決定を支援してくれると信じています。
しかし、AIは「問い」に答えることはできても、「何を問うべきか」を教えてはくれません。
問いを設計する力、すなわち「目的を設計する力」こそが、経営の四則演算の第一歩です。
海外の先進企業では、マネジメント教育の初期段階から、目的・指標・行動・成果を論理的に紐づける訓練が行われています。
彼らにとってAIは、計算を自動化するツールではなく、意図を精度高く実行する仕組みです。
一方、日本企業では、四則演算をおろそかにしたまま、
べき演算(効率化)や微積分(AI活用)に飛びついてしまう。
だが、足し算・引き算を誤れば、どれだけ掛けても正しい結果にはならないのです。
AIの活用は、基礎的なマネジメント思考の延長線上にしか存在しません。
「目的を設計する」ことから始まる四則演算をやり直すこと。
それが、DXやAI導入の真の出発点なのです。
次の第3回では、
・この「四則演算」の次に来る「一次方程式=業務プロセスの構造理解」
・なぜ“構造を持たない業務”ではAIが活かせないのか
を掘り下げていきます。
合同会社タッチコア 小西一有
Leading sentence:AI導入の前に、マネジメントの四則演算をやり直そうー日本企業が失った「基礎体力」を取り戻す
第1回:AI導入は“上級問題”基礎体力なしに解けるはずがない