TouchCore Blog | File 8:リスキリング施策に取り組む前に
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File 8:リスキリング施策に取り組む前に

海外では2018年頃から、DXの潮流とともにリスキリングが注目され政府や企業が取り組みを始めていました。
日本は最近になってようやく政府や企業が取り組みを始めたようです。
皆さまも最近よく聞くワードだと思います。

1)リスキリングに対する取り組み
政府は今後5年間のリスキリングに対する投資を発表しました。
大手製造業、や大手酒造会社、損害保険会社などがリスキリングに関して今月にも協議会を設立したりしています。
企業相互の就労交流や共同での研修会を開催など、スキリングの機会と効果向上を狙ったものなのでしょう。
弊社は、「人材育成」「リスキリング」に関わる仕事もしています。
こういう動きが弊社の活動の追い風になって欲しいと思いますが、実際はどうなるのでしょう?

2)リスキリングという処方箋に何を混ぜるのか
企業がこぞって取り組んでいるDX推進にも散見されますが、方向性が誤っているのではという懸念があります。
例えば「デジタル」「デジタルビジネス」に資するリスキリングの方向性。
様々な企業に「リスキリングで学ぶべきは?」と聞くと、多くが「データ解析」「AIプログラミング」と回答します。
実際に日本の大手企業のリスキリング計画などを覗いてみると「AI基礎」「文系社員AI研修」「データサイエンス講座」といった単語が目につきます。
しかし、一般社団法人スキルマネージメント協会のイノベーション研究会によると、データアナリストやAIプログラマが一番足りていない訳ではないそうです。
つまり、データアナリストやAIプログラマが枯渇しているために、日本からDXの好事例が出てこないとは考えにくいということでしょう。
圧倒的に不足しているのは「デジタルビジネス・プロデューサー」だといいます。
これはIPA((独法)情報処理推進機構)や経済産業省の主張と呼応しています。
「デジタルビジネス・プロデューサー」に「データ解析」「AIプログラミング」の素養が不要だとは言いません。
ですが、それ以外に優先的に必要なスキルがあることを理解しなければ、正しい人材育成は不可能です。
また、リスキリング教育を受ける対象者は、若い人だけでは無いことを理解されていないように見受けます。
実際、フロントラインから聞こえてくる声があります。
「部長と事業部長は"確実に儲かる"アイディアしか承認しないと言うのです」
「同僚に新規事業を考案して上層部に提案しようと誘ったらそんなリスキーなことしたくないと言われました」
これらの症状が、統計解析やAIプログラミングを学べば変化するに違いないと会社は考えているのでしょうか。
「ビジネス開発」「イノベーション・マネジメント」などの領域を学ばせる必要性について認識が薄いのではないでしょうか。
誰に如何なるリスキリングの処方箋が必要かを、きちんと考える必要があるのです。

3)効果的なリスキリングを阻むもの
日本でDXが起きないのは「経路依存性」に因るのだという早稲田大学の入山先生のお話しを聞きました。
本当にその通りだと思います。
IMD(International Institute for Management Development:スイスのローザンヌに拠点を置くビジネススクール)が国際競争力ランキングを毎年発表しています。
日本は1988年から4年連続第一位でした。
それが、現在は34位に低迷している理由もそこにあるかもしれません。
過去の栄光に縋り付いてきたレイヤーが現在経営トップになっているからです。 
1980年後半時代に英雅を経験し、その後バブル崩壊でコストカットが上手い人が珍重される時代が続きました。
私は長年、企業の経営陣にアドバイス・知見提供する仕事をしてきました。
日本企業の場合、おおよそ高年齢者です。
意外だと思われるかもしれませんが、経営陣の当事者ではなくその部下員がアドバイザリー契約を申し込んでくる、または勧めるケースが多くあります。
そうすると、当の本人(役職者)は「俺は大丈夫だから、部下に教えてやってほしい」と宣うのです。
何が大丈夫なのか。自身で勉強は必要無いと言い切られると手が付けられない。
経路依存性と言うよりも「老害」に値する問題だなと思いつつ、部下員ではなく本来経営トップが対処すべき課題だと思ったものです。
高年齢者こそリスキリングの対象であり、しっかりと勉強を続けて貰わないとならないと思います。
人の上に立つ者の影響は、一人分の成果にだけでなくその組織全体に波及します。
過去の栄光に縋り付いている高年齢者も、DX推進における罠と言っても過言ではありません。
4)方法を間違わないために

弊社では、イノベーション創造のためのアイディア創出に資する講座を開催しています。
この講座は、新たなアイディアを発想していただくため「(オーソドックスな)思考方法」について学んでいただきます。
新しい事業を発想しようとしたら、多くの企業でどこから始めると思いますか。
まずは百発百中で「強み」と「弱み」の洗い出しから始めるのではないでしょうか。
そのアプローチを誰が教えたのかは知りませんが、殆どがそこから始めます。
しかし、そこから何か新しいモノが生まれたのを「私は見たことが無い」です。
本当に意識していただきたいのですが、私たちの社会は課題だらけです。
この課題が10年後どうなっているのか、それが”Happy!”なのか考えていただきたいと思うのです。
自社(対象の企業)の「強み」と「弱み」からの議論は「やれそうなことから始める」ことを宣言しているようなものです。
弊社の講座では、すべきことは何か?を最初に徹底的に議論し意識に刷り込んでいただきます。
例えば、10年後の未来は現在とは違い「○○○○○○」のような状況にすべき。
そういう想いからバックキャスティングし、今なすべきことを考えるということです。
自社(対象の企業)で如何に何を実現するのかを考える「オーソドックスなアイディア創出法」です。
少なくとも正しい思考法を身につけなければ結果は出ません。
「天才のアイディア出し」では無いのですから。

5)最後に

繰り返しになりますが「データ解析」「AIプログラミング」といったデジタルスキルより、ソフトスキルの方が重要だと主張している訳ではありません。
ソフトスキルが低ければ、イノベーション創造のためのアイディア出しすら危うい、という話です。
また、必ずしもリスキリングのコンテンツ作成や実施計画を、自社で内製しなくても良いのです。
外部からの助力を活用したほうが導入がスムーズになる場合も多いのです。
社内で苦悩する担当者を作り出さないようマネージメントするのも重要だと思います。