TouchCore Blog | Touch Core
TouchCore Blog

File11:新しい価値を生みだすということ

イノベーションとは「新結合」であるとその言葉を生み出したシュンペータは定義しました。

しかし、実務家にとっては、この定義はいまひとつしっくりこないかもしれません。

ひとつご紹介しますと、

「新たな価値を生み出すアイディアをビジネスに実装すること」

この説明を考えたのは、米GartnerのアナリストMary Mesaglio氏です。

彼女は多くのイノベーション研究家の定義や説明文などを分析し、ほぼコンフリクトが起きないような説明文を考えたと言っていました。

実に上手に説明していると思います。

イノベーションは「新しい価値」を生み出すアイディアが起源になります。

ただ、残念なことに「新しい価値」というものは日本人にとってはとても難解なもののようです。

今回は、このわかりにくい「価値」について話しをしてみたいと思います。

1)例えば、わかりやすい価値

新たな価値を生み出すアイディアをビジネスに実装すること」がイノベーションです。

手で触れない、物理的に見えないものは「価値」を感じにくいのでしょう。

笑える話ですが、実際、コンサルティングの納品物を「kg」単位で納品して欲しいと言われたりしました。

最近では、さすがに紙を持ってこいというのは激減しましたが、変わってCDで納品して欲しいとか、やはりそういうことになります。

インターネット普及当時には「日本人は情報取得の為に「新聞代金」以上の支出することは有り得ない」と言われていました。

しかしやがて、インターネット接続料金(回線費用、プロバイダ利用料)は、新聞代金よりも高額ですが普通に支出するようになります。

多くの家庭で光回線を使用できるようになり、ブロードバンドは当たり前になりました。

コンシューマーがあっという間に「価値を見出した」ということです。

関西弁で「値打ちあるなあ」という言い方がありますが、これは価値の表現の一つ。

インターネットは「値打ちがある」とうことです。

この事例は、誰に(Who)何を(What)という提供価値が昔々に比べて変化したことを明確に示しています。

そう考えると、上手くいった事例は「価値」がわかりやすいかもしれません。

2)例えば、わかりにくい価値

最近は印画紙の写真を見ることが無くなくなりました。

デジタルカメラやスマホでフイルムを使うことがなくなったことも一因かもしれません。

ここで詳細は触れませんが、フィルム事業が柱だった米コダック社は経営破綻に追い込まれました。

その昔は、家族・親族一同で炬燵に入ってみかんを食べながら、アルバムを囲んで昔を偲ぶこともありました。

懐かしいですね。

直近、サクマ式ドロップで有名な佐久間製菓が廃業しました。

安価製品との競合、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による販売減、原材料・エネルギー価格の高騰、人員確保の問題などが要因だそうです。

映画「火垂るの墓」でも有名になった缶に入ったドロップです。

私も子ども時代に買って貰って大事に食べていた記憶があります、懐かしいです。

この「懐かしい」という気持ち。

印画紙の写真・アルバムも缶入りドロップも、「懐かしい」という「価値」と捉えることができます。

時代が変わり「懐かしいという価値」を失ってきたというこの事例で「わかりにくい価値」を理解することができます。

時代が移り変わり価値観が変わったら、企業が提供する製品やサービスも旧態依然では売れなくなります。

「価値観が変わることで自社が如何に変わるべきなのか」が分からなかったというのが、消えてしまった企業の本音でしょうか。

3)価値をわかりにくくさせているもの‐日本の業態

「現在の(ビジネスの)延長線上にしか将来が見えない」

多くの経営者はこうおっしゃいます。

しかし、残念なことに「新しい価値」だけでなく「現在の価値」さえも良く理解出来ていないように見えるのです。

「貴社の強みは何ですか?」と問うと「安い」「品質が良い」と多くの企業が回答されます。

「安い」「品質が良い」は、1980年台までに諸外国と競争する際に「競争優位」を生み出すためには役に立ちました。

しかし、2020年代の今はどうでしょうか?

その強みは「価値をお客さまに提供出来て」いて「当社がマーケットに存在しても良い理由」に叶っているでしょうか?

日本の企業がこの手の質問に上手く回答できない理由は、特に「B to B」の業態によるものが大きいと考えています。

「B to B」企業の多くが「下請け」的な仕事の仕方をしていて「言われた通り」に仕事をすることに慣れています。

「安い」「品質が良い」という強みは下請け企業には必須ですが、その製品・サービスの価値は納品先が生み出すので「下請け」企業が考える必要はありません。

そう、自社で「価値」を考える必要がなかったのです。

「B to B」で下請け的仕事をメインにしている企業こそ、本気で転換が必要だと思います。

4)価値を変える・新たな価値を獲得する

企業の儲けが「価値」の全てとして脳ミソに染みついていると、新たな価値を獲得するための変革は本当に大変だと思います。

例えば、「サステナブル」や「ESG投資」とか様々な用語が飛び交っていますが、実は「格好つけ」程度の姿勢で考えている企業は多いように見えます。

ESG推進部などの部署を立ち上げても、社内全体での取り組みになっておらず大失態をしたメガバンクの話は有名です。

ESG推進を謳いながら、投資事業部が油田への大型投資を行ったのです。

本気で取り組んでいなかったということです。

まだまだ、発言と行動が伴っている企業・組織は少ないようにも見えます。

目先のキャッシュに囚われている日本企業の価値観を変えるのにはどうすればよいのでしょう。

それには、サステナブルに対応するのが一番近道だと思うのです。

「どうやって良いのかがわからない」とおっしゃるかもしれません。

しかし、最初にすべきことは決まっているのです。

現在、信じている価値を捨て去り、新たに「社会的課題」に企業・組織として如何に対処すべきかを決め、

それを最優先に検討し実行するという価値観を持つという変革が求められるのです。

「儲けよりも先にすべきことがある」とはにわかに信じがたいかもしれません。

それが価値を変えるということなのです。

勿論、赤字が続くような施策は避けるべきですが、そうならないために「業務を変革」するのです。

正しいこととは、新たな価値観で働くことで利益第一ではありません。

地球環境、社会的課題に対処してサステナブルな活動をすること、それが第一なのです。

「そんなきれい事で、儲かるわけがない」

そう、だからこそイノベーションが必要だと言われているのです。

新たな価値観を醸成するために、考えて考えて考え抜きましょう。

ただ、価値を変えるためのソフトランディングはないのかもしれないと思ったりもしています。


タッチコアは、新たな価値を獲得するための業務変革をお手伝いしています。