TouchCore Blog | 情報とコンサルティングー情報に対する価値観を変える必要性 [File:15]
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情報とコンサルティングー情報に対する価値観を変える必要性 [File:15]

弊社は経営コンサルティングを生業にしています。

経営コンサルティングといっても、
「戦略系」「IT系」「財務・会計系」「人事系」といくつかの分野があり「小売」「医療」といった
業種に特化したものまで多数存在する。
弊社は「戦略系」「IT系」「人事系」をまたいでいると言えるでしょうか。
ぶっちゃけ「専門分野」が分りずらいとまで言われてしまうことが良くあります。
ただ、特に昨今、DX推進の必要性が問われ、戦略とIT、人事を分割して考えることのほうが難しいでしょう。
例えば「業務改善」についてご相談があれば、戦略見直しから必要なIT導入の見極め、組織変革まで一連で取り組まなければなりません。
大手コンサルティングファームなら専門分野毎に人材配置することもできますが、弊社のような零細企業では複数分野をまたがってご相談を承るのは当然です。

今回は、無限で無造作な情報というものの価値と、情報に関わるコンサルティングというものについて話しをしてみたいと思います。

■情報とコンサルティング:情報はタダではない

弊社が得意とする分野は「情報経営」です。
情報経営というのは聞きなれない単語かもしれません。
「情報」を利活用し、個のバイアスの下に意思決定されることを排除したり、新しい視点でのビジネス・アイディアを生み出すことに注力できることを目指し、組織は正しい情報の流れをもってビジネスを展開し、経営者は質の高い「情報」で意思決定ができる。
と、このようなことが情報経営の考え方で、弊社の弊社の基本原則です。
情報にかこつけてITを売りつけるつもりは毛頭ありません。
そういうはしたないコンサルが有象無象に存在することは勿論知っています。
IT開発については、クライアントから特に要望が無ければご紹介することありません。
多くのコンサル企業では、コンサルは「廉価」にて提供してIT開発でごっそり儲けるという図式になっています。
コンサル会社の景気が良いのは、連動してIT開発を行うからです。
開発は桁違いの金額が発生する為に利益率が同じだとしても絶対的な金額は凄まじく大きくなります。
しかもコンサル会社に頼むのとITベンダーに頼むのと金額的な比較をするとこれも圧倒的に前者の方が高価になります。
しかし、弊社は通常IT開発をしません
(儲かるのに)IT開発をしないのには、理由があります。
1つは、弊社はシステム開発要員を持たないので、協力会社と協働でサービス提供しなければなりません。
そうなると、品質を担保するのが難しいからです。
もう1つは、「情報の価値」を最も大事にしているからです。
そこで「情報の価値」とIT開発に何の関連があるのかについて、説明をしておきたいと思います。
まずは「情報」の性質というか機能について。
「情報」は何の役に立つのか考えたことがあるでしょうか?
「情報とは人々の気持ちを動かすための資源」なのです。
コンサルティングの主活動は「情報提供」です。
つまり、コンサルティングを実施することによって「人々の気持ちを動かしている」とも言えます。
コンサル会社は、当然のことながらこのことを良く知っています。
なので、コンサルティングの主活動である情報提供を「棒引き」にしてその後に繋がる仕事(IT開発)でガッポリ儲ける。
企業サイド内に外部のコンサルタントのカウンターになり得る人材がいて、結果的にIT開発が必要かどうか判断出来るような体制になっていれば騙されることも無いでしょうが、企業サイドにそのような人材が存在することが少ない。
コンサルティング会社が(棒引きで)提供してくれる情報は、半分は正しいと思われますが、もう半分はITを導入したら「問題解決する」というPromotionになっていることが多いという話なのです。
情報は人の心を動かす性質を持っているので「IT導入しなければ」という気持ちにさせるのが悪いコンサルティングの儲けの極意といっても過言では無いでしょう。
何故、このような商法が成立するのでしょうか。

■情報とコンサルティング:IT(パッケージ)導入の罠

情報はタダが当然とか、安い方が良いと考えている日本人は今だ多いと思います。
しかし、本当(優良な)の情報はタダではありません。
以前に勤めていた外資系情報サービスのコンサルティング部門はこんな風にクライアントに言っていたそうです。
「後続の仕事を作る為のコンサルティングをしません」
後続の仕事とはIT開発・導入のことで、導入は「特定のソフトウェア・パッケージ」を指しています。
IT開発・導入を実施するコンサルティング会社は「会計なら○○○パッケージ」「人事なら○×△パッケージ」「CRMなら▲◎□パッケージ」と言う風に、取り扱いラインナップを決めているのが通例です。
パッケージメーカーの代理店になっていて、代理店をしていると様々な技術情報やメンテナンス情報などが入手できるというのが表向きの理由ですが、バックマージンも入り旨みも増えます
この意味がお分かりいただけるでしょうか。
情報はタダではないということです。
ついでに話をしておくと、ソフトウェア・パッケージには「業務ノウハウ」が実装されています。
システムを導入することにより「業務ノウハウを獲得出来る」から高価なソフトウェア・パッケージを購入・導入するのです。
しかし、そのパッケージが目指す業務ノウハウとは何かを理解して導入している企業はどれくらいあるのでしょう。
自社にパッケージを導入する際に「一番大事なこと」は価格でもなければ機能(星取り表を作る人達も多いのですが)でもありません。
その「パッケージが目指している業務の方向性とは何か」が自社の方向性と合致するのかどうかが大事なのです。
「現場が自分たちの業務を定義してくれないので、パッケージ・ソフトウェアを導入することを決めました」という話もよく耳に入ってくる。
こういう状況に陥っているならば、本当に危険でシステム導入失敗の引き金になるでしょう。
正解かどうかは別にして、現場には現場のやり方や考え方があって、それは当該現場が知らなくても周辺部門の価値観や経営戦略から導き出すことは可能です。

■情報とコンサルティング:責任の範囲

コンサルティングの主活動は「情報提供」です。
しかし、日本では「情報はタダ」と思っている方々が多く情報提供だけでは実際儲からない。
従って、多くのコンサルティング会社は、要不要に関わらずシステム開発・導入を勧めます。
そして、システム導入後に結果が出せたかどうかは「Out of 眼中」です。
結果を出せないのはクライアントの責任であるというスタンスで、ITベンダーとスタンスは変わりません。

では、弊社はどうか!?
「何故結果が出ないのか?」「結果を出す為に何をすべきか?」についてクライアントと一緒に追求するというスタンス
です。
「何故結果が出ないのか?」を調査すると、業務そのものを変化させていないことが多いし、変化させる為の努力を全くしていない事例が散見されます。
業務を変革するようにコンサルは言っていませんでしたかと尋ねると、システム導入すれば問題は解決されると言われたと言います。
提案書を見せて貰うと、星取り表が書いてありました。
星取り表とは、縦軸に機能一覧を書いて横軸に製品名を書いて、◎とか○とか×を書いて◎や○の数が多いモノが良いように見せる表のことを指します。
私も若い頃は、上司にこういう星取り表を沢山作らされました。
しかし随分と経験を重ねて分かったことは、星取り表に何の意味も無いということです。
「あなたの目指すこと」が当該ソフトウェアパッケージを導入したことにより達成できることが重要なのです。
たくさんの◎や○があると言うことは、そのソフトウェアが「何の特徴も無い」ということを示しているとも言えます。
「何でも出来ます」は「何も出来ません」だと聞いた事が無いでしょうか?
「何でも出来る方が良いではないか」と言われることもありますが、何でも出来ると言うことはソフトウェアの内部構造が何でも出来るようになっているので、複雑性が高いに違いないということでもあるのです。
「何でも出来るノウハウ」って何だろうと疑問を持っていただきたいと思います。
さて話を戻します。
他所のコンサルが残していった資料を拝見すると、きちんと「業務改革の方向性」が示されていました。
しかし、どういう順番にやるのか、何がポイントなのかなど、実行する際に必要な情報がありません。
コンサル料金を棒引きにしているためなのか、こんなことが起きているのです。
ちなみに、コンサル会社のビジネスに関する提案(報告)内容は王道が書いてあり、悪くありませんでした。
ただ、実行するなら何をすべきか書いていない…というか、システム投資が必要だと嘘が書いてありました。
質の悪い(嘘の)情報であっても、情報は人々の気持ちを動かします。
コンサルを依頼されるという信用、そのポジショニングを活かして「騙す」訳です。
情報はタダが当然とか安い方が良いと考えている人も問題ですが、こういうコンサルも罪深いと思います。

■情報とコンサルティング:取得する情報の選択

正しいコンサルティング会社が提供すべき情報とは如何なるモノでしょうか。
ズバリ「公正」「中立」「第三者的」な情報以外にはないと思います。
勿論、クライアントの役に立つ情報であることは言うまでもありません。
情報は「公正」「中立」「第三者的」であり、決して何処かの企業や製品の宣伝に資する情報であってはならないのです。
しかしながら、日本では情報を提供するサイドも、受け取るサイドも、全く意識していないように感じます。
「公正」「中立」「第三者的」な情報とは何でしょうか?
一つ目は情報の出所です。
営利企業や営利団体が出している情報は「基本的に怪しい」と思った方が良いでしょう。
政府が出している情報も「基本的に情報も怪しい」と、まずは思った方が良い。
奥さまがウクライナ人の友人がいるのですが、東日本大震災の時に福島原発での事故の際にこう言ったそうです。
「政府は平気で嘘をつく」
「ウクライナ人は、チェルノブイリの事故の時に嫌と言うほど経験した」
彼らの答えは「東京は危険だから関西に逃げよう」という提案でした。
実際、外資系企業の外国人幹部が京都や大阪のホテルに家族を連れて避難した話は有名です。
政府は「公正」「中立」「第三者的」ではないし、そこからの情報は信用に足るモノが少ない。
またこれも有名な話ですが、時の財務大臣が「老後に年金以外に2000万円が必要だ」と発言しました。
老後の生活の話をしなければならない役割は厚生労働大臣です。
本来、厚生労働大臣以外が口を出してはならないはず。
何故、財務大臣がそのような発言をしたのでしょうか?
財務大臣が管轄している金融機関から「リップサービス」を頼まれたからではと想像します。
財務大臣は、直ぐに発言を取り消しましたが「老後に2000万円必要だ」「2000万円足りない(年金では賄えない)らしい」というのが、今や常識として語られるようになってしまいました。
当の本人は発言を取り消したので知らん顔ですが、最大の効用をあげたリップサービスでしょう。
こんな裏切り行為があっても良いのでしょうか。
「公正」「中立」「第三者的」な情報は高価です。
例えば、スイス・ローザンヌにあるIMDの調査レポートや、米Gartnerの情報が安売りされることはありません。
彼らの情報は「高価」だが、「公正」「中立」「第三者的」という性質が担保されていることがウリです。
講演で話される内容(情報)は、本当に価値があるから世界中で高値でも売れているのです。
ただ、情報を受け取った側が、その情報によって如何に意志決定するのかには提供側は責任を負えない。
そこで、講演したアナリストや、コンサルタントが如何に理解し行動すべきかの相談を承るのですす。
私は、アカデミック(大学や大学院など)な機関・先生方と常々お付き合いを絶やさないようにしてます。

それには「公正」「中立」「第三者的」の情報を取得するためという目的もあります。
しかし実は、大学や大学院も気を付けなければならない場合があります。
それは、大企業出身者が教授になっている場合です。
経産省のWebページで発表されている「DXレポート」がわかりやすいでしょう。
あのレポートを作成するために尽力された先生方の殆どは、某大手ITベンダー(同じ企業)の出身です。
皆さんは、この実態をどう捉え、お考えになるでしょうか!?
「公正」「中立」「第三者的」な情報を取得するための選択は難しく、タダではないということなのです。


■情報とコンサルティング:行動に関するアドバイスも情報である

はっきりと「怪しい情報に飛びつくな」と言ってもベンダー(売りたいサイド)主催の無料セミナーに喜んで出掛けて行く人が後を絶ちません。
「ISPの利用料は、新聞代を上回ることは出来ない」
日本人が情報に支払う金額は、新聞代が上限でそれ以上は無理だと言う意味で、インターネットが登場する際にこんな風に言われたものです。
インターネットサービスが一般に提供され始めたのは1995年前後で、それから30年で様変わりしました。
しかし、日本人の情報に関する「価値観のベース」は変わらずその程度のものだと思います。
また、コンサルティング活動の納品物として「kg(キログラム:重さ)」単位で指定を受けるなんて笑い話も実在した。
(コロナ以降は、若干変化していると聞きます)
手で触れることが出来て、目方があるものしか信用出来ない日本人らしい馬鹿馬鹿しい話です。
さて「公正」「中立」「第三者的」な情報を頼りに意志決定を下すこと、更に組織をリードするのが経営者の役割です。
経営者にとって唯一無二の情報は財務情報のように考えている人も多いのですが、それでは自社の置かれている状況を見誤る可能性が高いでしょう。
私は、財務情報は先行きを見通すための情報ではなく「結果」であると考えています。
先行きを見通すのは誰にとっても至難の業ですが、それを見通すことによって舵取りをするのが経営者の役割です。
「一寸先は闇」と言われる現代において先行きを見通すこと自体に何の意味があるのかと感じる人も少なくないでしょう。
実は、意味が無いと感じる方は「大正解」です。
先行きを見通すことに躍起になるのではなく「起こり得ることに速やかに対応する能力」を自社に備えることの方が大事なのです。
そこに情報は必要ないのか?
だからこそ、価値ある情報が必要なのです。
VUCA時代に必要なアジリティという経営能力が必要だというアドバイスこそが価値ある情報ではないでしょうか。
早耳情報を欲したり、確実な将来予想を欲しがったりしている方々には理解出来ないかもしれません。
アジリティという経営能力に必要なモノ・コトとは、残念ながらIT装備ではありません。
シナリオプランニング手法などで「気持ちや思考面から備える」ことが大事です。
自ら考えて自ら備えることが一番大事だというアドバイス、こういう情報が価値ある情報だと思いませんか。
出来上がった資料(や数字)だけが、情報ではない
ということです。

[追記] 経験という情報

先般発生した宮崎県沖の地震は南海トラフの西端で「太平洋側の各地は大地震への備えを」とのこと。
しかし、具体的に何をすれば良いのかとやはり悩みます。
東日本大震災で大きな津波被害を受けた宮城県南三陸町に訪れたことがあります。
「南三陸ホテル観洋」に訪れて、女将(阿部憲子さん)の話を伺う為でした。
同ホテルは硬い岩盤上の崖の上に建てられた鉄筋コンクリートのホテルで震災の揺れで被害は殆ど無かったことと、津波の被害も崖の上に建っていることから若干の被害で済みました。
そのため、このホテルは当時のお客さまをはじめ南三陸町の方々の避難所になりました。
電気も無ければ水も止まっている。プロパンガスなどの燃料も特に備蓄がある訳でもなく大きな不便を強いられたと言います。
一番困ったことは…という話から、実は生活用水が一番困ったそうです。
飲料水については自衛隊などが運んでくれたりして潤沢ではないものの何とかなったのだそうです。
水洗トイレを流す水、お風呂の水、食器を洗う水など、飲料以外の生活に使う水の圧倒的不足。
生活用水は飲料用ほどの品質は要らないものの「意外に大量」に必要です。
すぐ前に海(水)があるのにと途方に暮れて海を眺めていた時、とある企業が海水を真水に変える機器を提供してくれるという連絡がありました。
「これで生活用水が確保できる!!」
女将は希望の光を見た気がしたと言います。
ところが…。
企業はすぐに機器を運んでくれましたが、これを使用しようとしたところ行政からストップがかかったというのです。
認定避難所が優先だとか、質検査をしてからでないと、等々。
そんな情報、普段から一体誰が知っているというのでしょう。
価値ある(必要な)情報というものは、高価なものだけではなく経験しなければ得られないものもある、というお話しです。



合同会社タッチコア 代表 小西一有


ゼヒトモ内でのプロフィール: 合同会社タッチコア, ゼヒトモのコンサルティングサービス, 仕事をお願いしたい依頼者と様々な「プロ」をつなぐサービス