DX(デジタルトランスフォーメーション)推進がビジネス継続に不可欠と言われるようになってから数年が経過しました。
しかし、実際は着手すらできていない企業がほとんどといっても過言ではないかもしれません。
DXとは、単純に現状の業務のデジタル化・IT化ではありません。
私は長きに渡りこのことを伝え続けているつもりですが、なかなか理解は深まらないようです。
正直に言うと、深まらないというより、正しくDXを推進しようとすればするほど簡単ではないと気付いてしまい、IT化で手を打って(誤魔化して)しまっているのではとまで思えます。
さて、DX推進に欠かせない役割として「IT企画」があります。
なぜなら、DXはデジタル・ITを利活用し、業務の変革や新しいビジネスの創出を目的としています。
あくまで『ビジネスを中心に考える』ものだからです。
多くの企業では「IT企画」と名の付く部門の役割は、年次計画のIT予算欄を埋めたり、ITベンダーに発注をしたりという、ディール仕事が主たる役割かもしれません。
しかし、DX推進が企業の未来を決めると言われる今、正しい役割を強化する必要があるのです。
今回は、DX推進に欠かせない「IT企画」の役割についてお話ししたいと思います。
■IT企画の位置づけ
■IT企画の役割
■IT企画職に必要なスキル
■IT企画の位置づけ
昨今ではIT企画(部だったり、担当だったりするかもしれない)を事業部門に持たせる企業も増えているそうです。
ビジネスからのニーズをダイレクトにIT施策に繋げるためだと言われています。
ただ、このパターンは、全体最適ではなく個別最適に陥ってしまう危険性があります。
なので、今回は、IT部門に正しい仕事をする「IT企画」を持つことを検討いただくためのお話しをします。
何故なら、IT部門は全社を見渡せる位置に存在しているからです。
この点について今回はご説明しませんが「何故?」とご興味を持たれた方には、個別にご説明します。
遠慮なくご一報ください。
■IT企画の役割
DX推進に欠かせないIT企画の役割として以下のようなものがあります。
「経営との連携」
「IT財務管理」
「IT戦略の立案」
「業務改革(BPR)の推進」
「最新テクノロジーの調査や提案」
驚くほど、広範だと思われるのではないでしょうか。
後項でお話ししますが、だからこそ配属する人材については一考が必要です。
さて、「経営との連携」と記しましたが、以降の役割はすべてこのためにあると言ってもよいでしょう。
経営には自社をどのようにしていきたいかという方向性があり、その方向性はビジネス戦略という形で明示されます。
正しく経営と連携できなければ、経営者はIT投資について「もっと安くならんのか」という判断しかできないのです。
今回はその経営の判断に直結する「IT財務管理」「IT戦略の立案」について短くご説明したいと思います。
まず「IT財務管理」についてです。
IT財務管理をどこが担当しているか伺うと、多くの企業で「経理部」と回答するでしょう。
経理部で集計しているIT財務管理は、簡単に言うとIT部門の支出管理をすることで、経費勘定なのか、固定資産勘定で「有形」か「無形」かくらいでしょう。
経理部の分類を「正」とするならば、経営者は「経費」「有形固定資産」「無形固定資産」の3分類を見て何かを意志決定しなければならないということになります。
経営者は、この3分類のIT支出を見たら間違いなくこう聞くしかなくなります。
「もっと安くならないか?」
本来、IT財務管理とは、経営者の意志に沿ってIT支出がなされているのかを説明するという重大な仕事です。
例えば「ビジネス変革に資する支出(T:transform)」「ビジネス成長に資する支出(G:Grow)」「ビジネス運営に資する支出(R:Run)」の3分類で示されたら?
更に「販売時点POS:Point of Sales」「販売前:Before of Sales」「販売後:After of Sales」の3分類で示されたら?
経営者は、IT支出に戦略的な意味合いをもって意志決定できるのではないでしょうか。
こういう支出分類をもって、経営者に意思決定を図るのがIT企画の仕事です。
上述のような分類は経理部では不可能なのです。
では誰がやるのか?
IT企画以外には有り得ないのです。
次に「IT戦略の立案」についてです。
「ITやデジタルテクノロジの進化に応じて投資する方向性を決めるのがIT戦略だよね」
そんな勘違いをしている方が多いのですが、誰が何と言っても戦略の基本は「選択と集中」です。
ITのリソース(ヒト・モノ・カネ)は「有限」なので、やるべきコトとは裏腹にしないコトも決めなければなりません。
従ってITには戦略が必要なのです。
そのIT戦略を決めるための大前提は、ビジネスの成功にフォーカスすることです。
決して、単に最新のテクノロジーを導入することだけではないのです。
■IT企画職に必要なスキル
はっきり言いますと、必ずしもエンジニアとしての素養や知識はすぐさま必要ではありません。
マネジメント能力の高い方若しくは期待される方をIT企画に配属してほしいと思います。
「そんな人材を主要部署から異動させるのは…」
そんな声が聞こえてきそうですが、
IT企画の役割は全社的な視座が必要で、各部門のステークホルダーとの調整は重要な仕事です。
将来の経営企画・経営戦略を担う人材を育成するのに最良の場だとは思いませんか?
私は、この手の相談をいただいた際には「経企・経戦」と「IT企画」を行ったり来たりすると良いですよ、とお話します。
デジタルが企業の未来を決定すると言われる世の中にあって「IT企画」と「経企・経戦」と両方を往き来することで人材育成することは合理的だと思いませんか?
もしかすると、IT企画のマネジメントに適当な上司がいないのでしょうか?
であれば、弊社にお任せください、自信を持って対応させていただきます。
合同会社タッチコア 代表 小西一有