TouchCore Blog | Weekly:経営者が現場に遠慮してしまうことで成長が止まる
TouchCore Blog

Weekly:経営者が現場に遠慮してしまうことで成長が止まる

最近、多くの中小企業の経営者と話していて感じるのは、「現場に遠慮してしまっている」ケースの多さです。

経営者が現場に遠慮すると、会社の成長は確実に止まります。なぜなら、経営が“過去の延長”に引きずられてしまうからです。

■ 現場の自主性と、現場任せは違う

「現場を尊重している」と言えば聞こえは良いのですが、その実態は「現場の反発が怖い」「詳しいことは自分より現場が知っているから」と、一歩引いてしまっていることが多いのです。
しかし、それは尊重ではなく“放任”です。
経営者が手を出さなくなった瞬間、現場は自分たちの都合で最適化を始めます。結果として、会社全体の最適とはズレていくのです。

現場は、目の前の仕事を回すプロです。
だからこそ、彼らが正しいのは“現状を維持するため”の判断においてであり、“次の成長を生み出すため”の判断ではありません。
経営者がその違いを理解し、「現場の常識を超える問い」を立てることこそが、経営の役割です。

■ 現場の常識は、過去の成功の枠組み

多くの企業では、「うちはこうやってきた」「このやり方でうまくいっている」という言葉が当たり前のように飛び交います。
それは決して悪いことではありません。過去に積み上げてきた知恵が今の成果を支えているのですから。
ただし、その常識が“次の成長を妨げる壁”になることがあるのです。

成長とは、過去の延長線上にはありません。
経営者が現場に遠慮して、その「過去の枠組み」に手を入れないままでいると、組織は“現状維持を最優先する文化”に染まっていきます。
一見、安定しているように見えても、実際は変化への対応力を失い、じわじわと競争力が下がっていくのです。

■ 「理解する」と「合わせる」は違う

「現場を理解することは大事だ」と言われます。
その通りです。ただし、理解と同意は違います。
理解するとは、現場の業務構造を把握し、どこで無駄や調整が発生しているかを掴むことです。
合わせるとは、現場の言い分をすべて飲み込み、変化を先送りにすることです。

たとえば、営業部門が「このやり方が一番効率的です」と言ったとしても、それが全社最適とは限りません。
経営者の仕事は、その“ローカル最適”をつなぎ合わせ、全体としての「流れ」を設計し直すことにあります。
だからこそ、経営者は現場に入り込み、構造を見抜く目を持つ必要があるのです。

■ 成長を取り戻す鍵は「構造への介入」

会社の成長を止めているのは、個々の人の努力不足ではありません。
多くの場合、「構造上の歪み」が原因です。
たとえば、部門間の調整が多すぎるとか、判断のボトルネックが一箇所に集中しているとか。
こうした“流れを滞らせる構造”を見つけ出し、設計し直すのが経営者の仕事です。

現場は、目の前のタスクに忙殺されるあまり、この構造を見直す時間がありません。
だからこそ、経営者が一段高い視点から「どこを変えれば全体が滑らかに動くか」を見抜かなければならないのです。
それは決して“現場を否定すること”ではありません。むしろ、現場を本当に楽にするための経営の仕事なのです。

■ 経営者が踏み込むことこそ、最大の尊重

遠慮とは、相手に任せることで責任を逃れる行為でもあります。
本当の尊重は、相手の中にある限界を見抜き、そこを一緒に乗り越えようとすることです。
経営者が現場に踏み込むのは、対立を生むためではなく、成長のための“設計を共に描く”ため。
この姿勢を取り戻した会社ほど、再び勢いを取り戻します。

経営とは、勇気と設計の両輪です。
現場に遠慮して変化を避ける経営者よりも、現場に踏み込んで未来を描ける経営者の方が、ずっと尊敬されます。
組織の停滞を破るのは、新しいシステムでもなく、スローガンでもなく、経営者の一歩です。
その一歩を、遠慮なく踏み出していきましょう。

合同会社タッチコア 小西一有