
ある日、大学の同窓生から、こんなことを言われました。
「小西くんって、ITコンサルなんだってね。
じゃあ、私と同業やね。SAPコンサルでしょ?」
この一言に、私は強い違和感を覚えました。
いや、正直に言えば―かなり傷つきました。
なぜ傷ついたのか…。
それは、この一言が私の仕事を根本から取り違えられていると感じたからです。
彼はSAPコンサルとして第一線で活躍しています。
SAPという優れたERPを前提に、「どう設定するか」「どうカスタマイズするか」を考え、システムを稼働させることが仕事です。
一方、私の仕事はまったく違います。
私は、
• SAPを「どう入れるか」を考える立場ではない
• そもそも「入れるべきかどうか」を問う立場にいる
言い換えれば、SAP導入によって失敗する企業を、事前に止めることが仕事です。
同業どころか、立場は真逆です。
SAPコンサルは、導入が決まって初めて価値が生まれます。
プロジェクトが大きく、複雑になるほど仕事は増えます。
しかし私の仕事は違います。
• 業務を単純化する
• 判断基準を明確にする
• カスタマイズを減らす
その結果、「SAPは今はやめておきましょう」という結論になることも少なくありません。
仕事がなくなる方向に導くことが、価値になります。
同業なわけがありません。
むしろ、経済的なインセンティブは正反対です。
■それでも「同業」に見えてしまう理由
それでも、彼の目には私が「同業」に映りました。
この誤解は、決して彼個人の問題ではありません。
多くの企業にとって、
• SAPコンサル
• ITコンサル
• DXコンサル
これらはすべて「ITの人」 に見えています。
業務を設計しているのか、意思決定を支援しているのか、単にシステムを作っているのか。
この違いを見分けるための言葉も、評価軸も、持っていないのです。
また時に「止める人」は、敵に見えます。
さらに厄介なのは、SAP導入が検討段階を超えた瞬間です。
その時点でSAPは、
• DXの象徴
• 改革の証
• 正しい経営判断
という「物語」になっています。
そこで私はこう問います。「その前提は、本当に正しいでしょうか?」
この問いは、SAPへの反対ではありません。
経営判断そのものへの問いです。
だから私は、
・プロジェクトを潰す人
・空気を読まない人
―つまり「敵」に見えてしまうのです。
■私はITコンサルではない
私はITコンサルタントではありません。システムを売りませんし、導入も請け負いません。
私の仕事は、IT投資が“投資”として成立するかを見極めることです。
入れるなら、無理のない形で。
入れないなら、その理由を構造で説明します。
同業だと言われたあの日の違和感は、社会がまだ「入れる前の仕事」を正しく認識できていないということなのかもしれません。
次回は、「なぜお客さまの目には、全部“ITの人”に見えるのか」
この誤解の構造を、もう一段掘り下げてみたいと思います。
合同会社タッチコア 小西一有