
「業務は変えていません。システムを入れただけです。」
情報システム導入やDXの現場で、何度この言葉を聞いてきたでしょう。
そして不思議なことに、この言葉が出てくるプロジェクトほど、後から「なぜか現場が回らない」「想定外の混乱が起きた」という結果に行き着きます。
本当に、業務は変わっていないのでしょうか。
▶業務を「作業」だと思っている限り、何も見えない
多くの場合、「業務」とは次のように理解されているでしょう。
•画面に入力する作業
•帳票を作る作業
•ボタンを押す作業
この認識に立てば、
「紙が画面に変わっただけ」
「Excelがシステムに置き換わっただけ」
だから業務は変えていない、という理屈になります。
しかし、それは業務のごく表層でしかありません。
業務の本質は、
•誰が
•どのタイミングで
•どの情報をもとに
•何を判断し
•その結果に誰が責任を持つのか
という、意思決定と責任の流れにあります。
そしてここに、情報システムは必ず介入します。
▶システムを入れた瞬間に、必ず起きている変化
たとえば、こんな変化はないでしょうか。
•これまで口頭で済んでいた判断が、入力必須になった
•「後でまとめて」できていた作業が、その場で即時処理になった
•暗の調整役が、ワークフローから消えた
•誰が承認したのかが、全員に可視化された
これらはすべて、業務の変化です。
にもかかわらず、多くの現場ではこう言われます。
「業務は変えていない。変えたのはシステムだけだ。」
いいえ、正確には、業務がどう変わったかを、誰も認識していないのです。
▶「変えていないつもり」が一番危ない
業務改革やDXが失敗する最大の原因は、「変えた」ことではありません。
「変えていないつもり」で、実は大きく変えていることにあります。
しかもその変化は、
•誰にも説明されず
•誰にも設計されず
•誰にも引き受けられていない
結果として、現場にはこうした感覚が残ります。
•仕事がやりにくくなった
•判断しづらくなった
•責任だけが重くなった
こうなると、ここから先「現場の抵抗が強い」「意識改革が必要だ」という言葉が出始めるのは、もはやお決まりの展開です。
▶問題はシステムではない
ここで誤解してはいけません。
問題は、「情報システムを入れたこと」ではない。「ITベンダーの技術力」でもありません。
問題は、
情報システムがもたらす“組織や人への影響”を、最初から考えていないことにあります。
システムは正しく作られて、要件も満たし、テストも通っている。
それでもうまくいかないのは、設計すべき対象を、設計していないからです。
▶次回予告(第2回1/26)
では、なぜその「影響」は放置されるのか。
なぜ現場は、いつの間にか「抵抗勢力」にされてしまうのか。
次回は、「現場の抵抗が強くて…」という言葉の正体を解きほぐしていきます。
合同会社タッチコア 小西一有
話して、整理して、それから相談してみませんか?
▶情報システムと影響システムー正しいITが壊すもの(全4回)今後の予定◀
第1回:ある一言が改革を失敗させる(1/19)
第2回:「現場の抵抗が強くて…」は本当か?(1/26)
第3回:「次はAIを入れれば解決する」―技術が問題を増幅させる(2/2)
第4回:第4回:情報システムに影響システムを合わせる極悪非道(2/9)