
前回、私は「SAPコンサルと同業だね」と言われたときに覚えた違和感について書きました。
今回は、その違和感がどこから生まれるのか―。
お客さま側の視点から掘り下げてみたいと思います。
多くの企業にとって、
• SAPコンサル
• ITコンサル
• DXコンサル
これらは、ほとんど区別されていません。
すべてまとめて、「ITに詳しい人」に見えているのです。
■ 見分けるための「軸」を持っていない
なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。
理由は単純で、見分けるための軸が存在しないからです。
業務を設計しているのか。
システムを設計しているのか。
意思決定を支援しているのか。
本来であれば、これらはまったく別の仕事です。
しかし多くの企業では、
• 業務は「現場が知っているもの」
• ITは「ベンダーが考えるもの」
という暗黙の前提があります。
その結果、業務とITの間に立つ人間は、すべて「IT側の人」として一括りにされてしまいます。
■ 「業務を設計する」という発想が存在しません
さらに根深いのは、業務は設計対象だという発想が、そもそも存在しないことです。
多くの企業では、業務はこう扱われています。
• 長年の慣習
• 現場の知恵の集積
• 変えてはいけないもの
だからこそ「業務を設計する人」「業務をモデル化する人」という役割自体が、想定されていません。
この前提のもとでは、業務構造を整理しようとする人は、「ITの前段にいる人」にしか見えないのです。
■ 「入れる前」の仕事が可視化されていない
もう一つ、大きな理由があります。
それは、入れる前の仕事が成果として見えないということです。
SAPコンサルは、
• 設定画面
• カスタマイズ
• 動くシステム
といった、目に見える成果を提示できます。
一方で、例えば私の仕事の成果はどうでしょうか。
• 入れなくて済んだERP製品
• 作らずに済んだアドオン
• 起きなかったトラブル
つまり、「何も起きないこと」が成果です。
これは、評価されにくいものです。
むしろ、「何もしていない」「価値を生んでいない」と誤解されることさえあります。
■ だから「全部同業」に見える
こうした条件が重なると、どうなるでしょうか。
• 業務を設計するという概念がなく
• ITの前工程が可視化されず
• 見分ける評価軸も存在しない
結果として、
ITの話をする人
= ITで食べている人
= 同業
という、大雑把な認識が生まれます。
第1回でお話した、同窓生の一言は、この構造の中では、ごく自然なものだったのです。
■ 問題は「誤解」ではなく「構造」
重要なのは、これは単なる認識不足や勘違いではない、という点です。
• 日本企業の業務の捉え方
• IT導入の進め方
• 評価制度と成果の可視性
これらが組み合わさった、構造的な問題なのです。
なので、正しい説明を一度しただけでは解消しません。
言い直しても、伝わらないのです。
次回は、この構造の中でなぜ「SAP導入にブレーキをかける人」が「敵(エナミー)」にまで昇格してしまうのか。
その心理と組織のメカニズムを、もう一段深く掘り下げていきます。
合同会社タッチコア 小西一有
第1回(1/5):なぜ私は「ERP製品コンサルと同業だね」と言われて傷ついたのか