CIO(Chief Information Officer)という役職は聞いたことはあるが、大企業での話だろうし流行りみたいなものだったのではと思われている方が多いかもしれません。
確かに、政府機関においてはCIOポータルが更新停止されるなど、オワコン化されてしまっているようにも見えます。
しかし一方で、日本のITユーザー企業が加盟する団体JUAS(日本情報システムユーザー協会)では、CIO設置の必要性を発信しています。
何故でしょう?
それは、DX推進を目指す中、企業が抱えるIT課題は複雑化・多様化し、その采配には経験と高度なスキルが必要になってきたからです。
ただ、CIOの役割や必要性についての認知の低さ、また設置に際しての懸念など、特に今までCIOを設置したことがない企業においてはハードルが高いようです。
今回は、何故CIOが必要なのか、どうすればハードルを越えられるのかなどについてお話したいと思います。
■CIOは何をしてくれるのか
■CIO設置のハードルとそれを超える方法
■将来に備えるために
■CIOは何をしてくれるのか
「今までCIOなんていなくても何とかなった」
そう、今までは、です。
CIOは、特に中堅企業ほど必要な役割だと考えています。
会社の舵切りをするのは最高経営責任者(CEO)ですが、舵切りをした際に会社の様々なところで生じる軋轢を収めて望まれる方向性に進めるようにするのは役員達(オフィサー)です。
お金勘定は最高財務責任者(CFO)で、日々のオペレーションは最高執行責任者(COO)。
では最高情報責任者(CIO)は何をしてくれるのでしょう。
本当は「情報とは何か」「情報という経営資源」からお話しする必要があるのですが、これはこれで重い話なので別の会にお話しすることにして今回は簡潔にお伝えしようと思います。
(ご参考:TouchcoreBlog File10「情報」という経営資源の活用方法ー組織変革)
情報という経営資源は、人々の気持ち(行動も)を変えることが出来る経営資源です。
したがってCIOは、人々を扇動する役割も担うと考えて良いでしょう。
CIOは、ITデリバリーもITマネジメントも両方を管掌するので意外と忙しい役割です。
ITマネジメント領域についてもCIOが担当者も兼任することが多いと考えられます。
さらに、DX推進の必要性が認知された昨今はその推進や人材の育成までが求められています。
IT導入の際にベンダーと値引き交渉をするだけではない、高度なスキルが必要ということがご理解いただけるでしょう。
今までと同じリソースと、同じやり方では変化できないということです。
■CIO設置のハードルとそれを超える方法
良くも悪しきも、CIO人材もほかの人材と同様に正社員・フルタイムで雇用したいという固定観念があるようです。
正社員にはメリットもデメリットもあります。
メリット:
(1)忠誠心が高い
(2)秘密・機密事項が漏洩しにくい
(3)自社社員としてリソースが経営者の思うままになる
(つまり、CIOを採用しても担当者としてアサイン可能)
デメリット:
(1)採用の際にスキルを見誤っても解雇できない
(言い換えると自社では人材を評価出来ない)
(2)既存のメンバーと上手く馴染まない場合、組織作りが上手くいかない
(言い換えると自社の現場を経験していない者にマネジメントを任せられない)
上記デメリットに加えて、以下のような事情もあるでしょう。
第1に「費用が合わない」
給与水準は能力に伴い高額になりますが、下限は1,500万円くらいです。
第2に「常時仕事があると思われない」
ただこれは、実際は誤解で、CIOはITデリバリーもITマネジメントも両方を管掌するので意外に忙しいのです。
更に、ITマネジメント領域についてはCIOが担当者も兼任することが多いと考えられます。
何故、常時仕事があるとは思えないと考えるのでしょうか。
「今までCIOなんていなくても何とかなった」という経験からです。
私が、中堅企業の社長の皆さんと話をする時によく聞く台詞なのですが、それは「今まで」の話ですよね。
ただ実際のところ、中堅企業の場合は自社でCIOをフルタイム雇用するのは難しいかもしれません。
そろそろ正社員・フルタイム雇用は「日本の古い考え方」として、必要なリソース確保の方法について多様性を認めなければならない時代ではないでしょうか?
是非、外部コンサルタントの活用(外部CIOとして雇用)を検討していただきたい。
当社が外部CIOを請負っているからお勧めするわけではありません。
「キャッシュアウトになるではないか!」と言う方もおられると思いますが、デメリットの心配や、事情を払拭し、ベネフィットを得る良い方法だと確信するからです。
ただ、どうしても正社員・フルタイム雇用をということであれば、「採用面接の際に」コンサルタントを活用してください。
いままで採用したことのない人材の採用には、十分な経験が必要だということはご理解いただけると思います。
なお、当社は採用面接についてのご相談も承っております。
■将来に備えるために
「ITコストが見えないなかで、本当にCIOに投資してよいのかわからない」
そんな声が聞こえてきそうなので、コストについて少しお話をします。
まともなCIOを調達することができれば、ITコストは適正化されます。
過大投資になっている箇所と原因を明確にし、ITの現場にもベンダーにも納得いくように説明するのがCIOの役割です。
過大投資の主な原因は以下のようなものがあります。
・喫緊にすべきでないことをしている
・ベンダー間競争をさせていないことによるコスト高
一方で「すべきこと」をしていない場合は、新たな投資が必要になる可能性もあります。
それらを明らかにし、新たに投資を行うのです。
まともなCIOを調達できれば、ITコストを適切にできると言いましたが、正しい認識を持っていただくために更に話を加えます。
IT部門には全社のあらゆる部門から「開発依頼」がひっきりなしにやってきます。
丸々新規の案件も、既存システムの改修というのもあるでしょう。
簡単に言うと、丸々新規の案件のことを新規開発、既存システムの改修を運用保守と理解してください。
この2種は、現状のところ「2:8」の比率くらいだと想像しますが、経営者としては前向きな新規案件に投資したいと考えるのではないでしょうか。
この元々は「2:8」だった比率を、ITマネジメントという分野にも投資できるようにしながら運用保守の比率を下げていく。
それがCIOのマネジメント・パワーなのです。
さらに付け加えるならば、
まともなCIOは「自社の戦略目標」に実直に従って役割を担ってくれるはずです。
この役割、貴社の将来に備えるために重要だと思いませんか?
合同会社タッチコア 代表 小西一有