TouchCore Blog | 【連載】中小企業の未来を拓く:第1回 なぜ中小企業はビジネスモデルを変える必要があるのか?ー価値を実装するための視点転換
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【連載】中小企業の未来を拓く:第1回 なぜ中小企業はビジネスモデルを変える必要があるのか?ー価値を実装するための視点転換

戦略とは「構想」であり、ビジネスモデルとは「価値の実装」

戦略とは、「どこで」「誰に」「何を」届けるのかという方向性=構想です。そしてその構想を現実に落とし込み、儲かる仕組みとして実行するのが「ビジネスモデル」です。
つまり、ビジネスモデルは戦略の“実装ツール”に他なりません。にもかかわらず、多くの企業がこの「実装部分」に無頓着です。商品を作る、サービスを提供する、それで終わってしまっているのです。
たとえば、「新しい化粧品を開発した」「高性能な工具を設計した」というのは、単なる“プロダクト”の話です。それをどうやって誰に届け、どのような関係を築き、どこから収益を得て、継続的に価値提供を行うのかーこの構造全体こそが「ビジネスモデル」です。


日本企業は、良いモノを作れば売れると信じてきた
長年のモノづくりの歴史の中で、日本企業は「プロダクトアウト」の思想に染まってきました。製品や技術の優位性こそが勝敗を分ける、と。
ところが現在では、それだけでは通用しません。モノの良さを伝えるストーリー、買いやすい仕組み、継続的な接点つまり「売れる理由」「使い続ける理由」「選ばれる理由」を作らなければならない時代です。これは単なるマーケティングの話ではありません。構造そのもの、つまりビジネスモデルをどう設計するかという問題です。


大企業の弱点は「遅さ」と「硬直性」
大企業が羨むような資源を持っていても、動き出すまでに時間がかかり、ちょっとした変更にも組織的な制約が付きまとう。これは中小企業にとっては“チャンス”です。
ビジネスモデルの構造を大胆に変えるには、スピードと柔軟性が必要です。新しいサービスの導入、新しい収益構造の試行、チャネル戦略の転換ーこうした試みは、中小企業の方がずっとやりやすいのです。
だからこそ、中小企業こそが「先に動く」ことができる存在であり、実は「先に勝てる」存在でもあるのです。


「プロダクト」ではなく「仕組み」で勝つ
強調しておきたいのは、単なる商品や技術の良し悪しでは勝負がつかないという点です。どんなに良い商品でも、それを届けるルートがない、適切な料金体系がない、継続的な関係性が構築できない──こうした“構造上の欠陥”があるとビジネスは成り立ちません。
逆に言えば、プロダクトそのものが平凡でも、優れたビジネスモデルがあれば大企業すら圧倒できます。
たとえば、同じ清掃業でも、「定額サブスクで訪問頻度を選べる」「AIで清掃ニーズを予測」「顧客との関係をアプリで可視化」など、デジタルと設計思想を加えた仕組みによって、大きな差別化ができます。


経営者が考えるべきは「どのように売るか」ではなく「どのような構造で価値を実装するか」

ビジネスモデルを変えるとは、「新しいアイディアを売る」のではなく、「価値の届け方を変える」ことです。つまり、販売方法・チャネル・収益構造・顧客関係性・提供体験などを、全体として再構成することです。
そして、これを最も柔軟に試せるのが中小企業です。
だからこそ、今こそ、仕組みを見直す時です。

次回予告:
第2回「日本企業はなぜビジネスモデルの研究を怠ってきたのか?」では、
なぜ我々の企業文化に“儲かる仕組み”への視点が欠けているのか?
その背景を歴史と文化の観点から掘り下げていきます。

合同会社タッチコア 小西一有


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