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第2回:幹部教育こそ最大のレバレッジ―組織を動かす層を鍛える

人材育成を語るとき、どうしても焦点は「若手」に当たりがちです。もちろん、若手社員を育てることは欠かせません。ですが、もし本気で会社を変えたいなら、最初に取り組むべきは 幹部層の教育 です。

私はこれを「最大のレバレッジ」と呼びます。なぜなら、幹部層が変われば、組織全体の行動が一気に変わるからです。


幹部層は「組織の翻訳者」

企業を動かすのは経営者一人ではありません。経営トップの方針を受け止め、それを現場に落とし込むのが幹部層です。
幹部は経営者のビジョンを理解し、現場の実情に合わせて翻訳し、社員を動かす役割を担っています。

しかし、多くの企業では、この「翻訳機能」が十分に機能していません。幹部が学ばず、過去のやり方に固執してしまえば、経営者がどんなに新しい戦略を掲げても現場に浸透しません。
結果として、戦略と現場の間に溝が生まれ、改革は絵に描いた餅に終わってしまうのです。


変革を阻むのは「学ばない幹部」

私がこれまでに見てきた事例でも、変革が停滞する原因は若手の力不足ではなく、幹部層の「学ばなさ」にありました。

例えば、とある製造業の企業。DXを推進するために若手にデータ分析研修を受けさせたものの、実際の業務改善は進みませんでした。なぜか? 幹部層が「データに基づく意思決定」の重要性を理解していなかったからです。幹部が学んでいないために、若手の提案はことごとく「前例がない」の一言で却下されました。

幹部が学ばない組織では、若手の成長は空回りするだけです。どれだけ研修に投資しても成果が出ないのは当然でしょう。


幹部教育は「組織文化」を変える

幹部教育の最大の効果は、個々のスキルアップに留まりません。
幹部が学び直すことで、組織全体の文化が変わっていくのです。

幹部が「自分も学ぶ」という姿勢を見せると、部下も自然に学ぶようになります。逆に、幹部が学びを軽んじれば、部下も「勉強しても無駄だ」と思ってしまう。つまり、幹部層は学習文化の“発信源”なのです。

だからこそ、幹部教育に力を入れることは、単なるスキル研修ではなく 学び続ける組織をつくる投資」 なのです。


幹部教育が持つ経営インパクト

幹部教育を本格的に進めた企業では、経営のスピードが確実に変わります。

・会議での意思決定が早くなる

・新しい戦略に対する理解が早まる

・若手の提案を受け止める土壌が育つ

つまり、幹部教育は「変革を実行に移すための推進力」そのものです。

経営者がどれだけ優れたビジョンを掲げても、それを現場に落とし込むのは幹部層です。彼らが学ばずに旧態依然とした価値観にとどまっていれば、改革は進みません。
逆に幹部が学び直せば、会社全体のベクトルが揃い、戦略が一気に動き出すのです。


幹部教育に必要な視点

では、幹部教育では何を学ぶべきでしょうか。
私は次の3つを強調しています。

1.経営戦略の理解
事業環境の変化を踏まえ、自社の戦略を理解し、部下に説明できる力。

2.組織を率いる力
管理ではなく、部下を巻き込みながら方向性を示すリーダーシップ。

3.デジタル・変革への視座
DXやAIなどの潮流を経営にどう活かすかを考え、現場で実行に移す力。

これらを幹部が学ぶことで、単なる「管理職」から「変革を推進するリーダー」へと変わります。


まとめ:幹部教育は最大の投資対効果

人材育成の予算を若手に偏らせるのではなく、幹部層に重点的に投資すること。
それが、最小のコストで最大の成果を生む「レバレッジ」です。

会社を変えたいなら、まず幹部層を教育してください。
そしてその学びを、社員に示してください。

次回は、特にIT企業に多い「技術者出身経営者の罠」を取り上げます。技術に偏った経営の危うさと、その克服のための教育について掘り下げます。

幹部教育をどのように設計すべきか、お悩みの経営者の方へ。
ぜひコメントやメッセージでご意見をお聞かせください。
私が伴走者となり、御社の人材育成戦略を共にデザインいたします。


合同会社タッチコア 小西一有

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