
価値はスローガンでは動きません。
業務の回り方とお金の流れに実装されたとき、初めて効いてくるのです。
実装とは、Who/What/How/Valueの四点を同時に固定することです。
Whoは「未充足の進歩」を最も強く感じる相手を特定する段階です。役割・状況・成功の尺度まで言い切ります(例:営業部長/月末の着地確認/予実ブレ率)。
Whatは「進歩の定義」を一行で固定します(例:予実ブレを半減)。
Howは面倒を名詞で列挙し、解消策を動詞で三つに絞る(稟議→テンプレPDF+効果試算、設定→初回30分同席、障害→一次切り分けSLA15分等)。
そしてValueは、価格を先に決めるのではなく、進歩に比例する単位(価値メトリクス)を先に定義し、そこに価格を従わせます(有効ユーザー×活用量、削減ダウンタイム時間×ライン数、成功件数×規模区分など)。
よくある失敗は順序の逆転です。
価格表を先に作り、後から価値を辻褄合わせする—これでは値引きに呑まれます。
順序をWhat→価値メトリクス→Howと固定すると、「高い・安い」ではなく「進歩の速度と確度」で比較される土俵に立てます。
実装の最短距離は、A3一枚に四点を並べ、二週間スプリントでKPI(導入日数、稟議通過率、活用率、一次切り分け時間など)を二つだけ動かすことです。
部門横断で合意すべきは「面倒→解消策」の対応表と、価値メトリクスの定義。これさえ合えば、営業トーク・製品バックログ・サポート運用が一列に並びます。
結局のところ、価値は実装の設計力で差がつくのです。次回は、ここに『複合』を掛け合わせて模倣困難にする方法を扱います。
合同会社タッチコア 小西一有
第1回:価値とは「お客さまの進歩」である—“儲け”から切り離す再定義