
AI導入で企業が成果を出すには、一定の“基礎体力”が必要です。ところが、多くの日本企業ではその前提が整わないまま、AI活用という「上級問題」に挑んでいます。
たとえるなら、四則演算を理解しないまま、いきなり偏微分方程式を解こうとするようなものです。答えが合わないどころか、「そもそも何を問われているのか」が分からない。これが、現場でAI導入が混乱を招く最大の理由です。
ここで誤解してはいけないのは、「基礎体力」とはAIの動作原理や仕組みを知ることではないという点です。
AIがどう動くか、どんなデータを学習しているか—それらは確かに知っておくべき知識ですが、それだけでは経営の成果は上がりません。
経営における基礎体力とは、
・目的を明確に定義し、
・業務を構造として設計し、
・成果を測定し、
・改善に繋げる力—すなわちマネジメントの思考体系そのものです。
海外の先進企業は、長年かけてこのマネジメント基盤を整備してきました。AIを導入する前に「どの価値を高めたいのか」「どの業務を最適化すべきか」を構造的に定義している。だからAIは、“経営の意図を具現化する補助線”として正しく機能するのです。
一方、日本企業の多くは、目的も構造も曖昧なままAI導入を進めます。ツール導入が目的化し、結果が出ないと「AIは使えない」と嘆く。
しかし、本質はAIではなくマネジメントの設計力が欠けていることにあります。
AI導入とは、経営の成熟度を試すリトマス試験紙です。
基礎体力を整えた企業だけが、AIという上級問題を解くことができる。
つまり「AIを使える企業」とは、「マネジメントの基礎を修めた企業」に他ならないのです。
第2回では、
・マネジメントの「四則演算」とは具体的に何か?
・なぜその基礎が崩れているとAIが“暴走”するのか?
を具体的な経営シーンを交えて掘り下げます。
合同会社タッチコア 小西一有
Leading sentence:AI導入の前に、マネジメントの四則演算をやり直そうー日本企業が失った「基礎体力」を取り戻す