TouchCore Blog | 第2回:小手先の改善では会社が変わらない理由ー「見える現象」と「見えない構造」
TouchCore Blog

第2回:小手先の改善では会社が変わらない理由ー「見える現象」と「見えない構造」

第1回では、中小企業の経営者が“見えない疲れ”を抱えながら、

日々の業務に追われ、未来を考える時間を確保できなくなっている現実について触れました。
忙しさに飲み込まれると、どうしても “見える問題” だけを解決する日々 になります。
しかし、実はここに中小企業が何年経っても同じ問題に悩まされ続ける根本原因が潜んでいます。

■ 「見える問題」をいくら片付けても、会社が変わらない理由
経営者からよく聞く声があります。
・営業を強化しても成果が続かない
・新しい商品を出しても売れ行きは一時的
・業務をIT化したのに忙しさが変わらない
・人を増やしても仕事が楽にならない
これらに共通するのは、“現象だけを相手にしている” という点です。

見えている現象は、いわば“症状”です。
症状に手当てをすれば一時的に楽になりますが、根本原因を見極めない限り、また同じ悩みが顔を出します。

■ 会社には「見える現象」と「見えない構造」がある

会社を一つの“システム”として捉えると、
以下の二つが存在しています。
● 見える現象(表面)
・売上
・忙しさ
・トラブル
・人の動き
・作業量
・顧客の反応
● 見えない構造(内側)
・事業モデル
・顧客価値の設計
・価値連鎖(バリューチェーン)
・業務設計・組織設計
・価格戦略
・強みの源泉

この「構造」が正しく設計されていなければ、どれだけ表面を改善しても成果は長続きしません。
“忙しいのに儲からない”という典型的な状態は、まさに構造が整っていないサインです。

多くの中小企業が「IT導入」でつまずく本当の理由
特に誤解が大きいのが IT です。
ITを導入すれば会社が良くなると思っている経営者は少なくありません。
しかし実際には、ITは「現象」を改善する技術であって、構造を変える技術ではありません。
次のような改善は得意です。
・入力を減らす
・手作業を自動化する
・情報を整える
・伝達を速くする
確かに便利になりますし、従業員も喜ぶかもしれません。
しかし、それはあくまで“現象レベルの改善” に過ぎません。

■ ITベンダーには「構造を変える能力そのものがない」

ここははっきり申し上げるべき点です。
ITベンダーは「事業モデル」も「価値設計」も「業務の本質」も扱えません。
それは契約範囲外だからではなく、そもそも専門外だからです。
ITベンダーの専門性は、“仕様を実装する技術” であって、“会社を作り直す能力” ではありません。
経営構造を変えるのは経営者の仕事であり、必要に応じて専門家が伴走する領域です。

ここを混同すると、高額なIT投資がすべて「現場がちょっと便利になる」だけで終わります。

■ そして本当に問うべきは「その便利さの値段」

経営者が誤解しやすい非常に重要なポイントがあります。
従業員が楽になるのは良いことですし、業務がスムーズになるのもメリットです。
しかしーその“少し楽になること”のために、経営資源のいくらをITベンダーに差し出しているのか?”
ここが経営判断として最も重要な視点です。
・初期開発費
・月額利用料
・保守費
・追加改修
・打ち合わせ時間
中小企業にとっては、決して小さくありません。
もし同じ資金を、“お客様に提供する価値を上げる投資”
あるいは
“強みを育てる投資”に回したらどうなるでしょうか?
未来の成長に直結するはずの資金が、現場の便利さのために消えている。
これが、多くの中小企業が成長を阻害される最大の理由です。

■ 経営の本質は「構造を変える投資」を選ぶこと

経営とは、どこにお金と時間を投じるかを決める仕事です。
価値が生まれる領域に投資すれば会社は伸びます。
現象を整える領域に偏れば、会社は停滞します。
経営を前に進めるには、次の問いを自分に投げかける必要があります。
「この投資は、会社の未来をつくる投資か?」
現象改善ではなく、構造を変えるための投資こそが、会社を根本から強くします。

■ 次回は「経営者の本当の仕事」に踏み込みます

第3回では、経営者の本当の仕事とは何か?というテーマに進みます。
・なぜ経営者は現場から離れられないのか
・未来をつくるとはどういうことか
・戦略とは経営者だけが担える“未来設計”である理由
これらを、分かり易く噛み砕いてお届けします。


[無料体験]アドバイザリーサービス
今あなたに必要なのは、信頼できる相談相手ではないですか?


合同会社タッチコア 小西一有


第1回:第1回:経営者が抱える“見えない疲れ”と、戦略が語られなくなった理由