
最近、多くの企業の情シス部長の方々とお話をすると、同じようなお悩みが返ってきます。
「私は危機感を持っているのに、部下がついてこないのです。」
声のトーンは静かですが、その奥には“どうすれば組織が変われるのか”という深い苦悩がにじみ出ています。
一方、情シス部員の多くは、こう考えています。
「うちらは社内SE。社内の人が困ったら助けるのが仕事です。」
この温度差が、情シス組織を前に進めたい部長にとって、大きな壁になっています。
今回は、この“危機感の断絶”の正体を優しく紐解きながら、情シス部長に対するエールとしてメッセージをまとめてみたいと思います。
■「社内SE」という言葉が生み出した“役割の誤解”
世間では「社内SE」という言葉が当たり前のように使われています。
しかし、この言葉が本質的に示しているのは、
「社内のパソコンに詳しい人」
「困ったら駆けつけてくれる人」
「ベンダーよりは親身になってくれる人」
といった“便利屋”としてのイメージです。
もちろん、現場を支えるその姿勢は非常に尊いものです。
しかし、そのような役割定義のままでは、情シスは企業の未来をつくる役割に進化できません。
そして残念ながら、この構造は企業側にも責任があります。
•情シス部門の上司は総務担当役員
•PCやサーバ、回線費用の管理
•固定資産の整理
•備品の調達と修繕
•ベンダーとの保守契約更新
こうした“設備管理”が情シスの主要な役割に見えてしまう組織構造では、部員が危機感を持たないのは、ある意味で自然な反応と言えます。
■情シス部長は気づいている。「このままでは会社が変われない」
情シス部長は、部下よりもはるかに視野が広く、経営との距離も近く、企業の行く末を現実的に見ています。 だからこそ、危機感を持つのです。
•DXが“掛け声”だけで終わっている
•情シスが便利屋化して未来をつくれていない
•ベンダー任せでは会社が変われない
•戦略と業務とITがつながっていない
•今の業務構造で生き残れるはずがない
このままでは、情シスも、そして会社全体も前に進めない。
だからこそ部長は、「なんとかしなければ」と強い責任感を抱えています。
■しかし、部下は違う景色を見ている
一方で部下は、
•目の前の問い合わせ対応
•デバイスの準備
•不具合の原因切り分け
•ベンダーとの調整
•日々のルーティン
こうした日常業務の中に忙殺されています。
そこに「戦略」「構造設計」「アーキテクチャ」という概念は登場しません。
悪いのは部下ではなく、そのような役割を与えられてこなかった組織構造です。
■部長の「前に進もう」という意思は、組織にとって希望そのもの
もし情シス部長が危機感を持っていなければ、企業のIT投資は永遠に迷走します。
危機感を持つ部長がいるという事実は、その企業に“まだ変われる余地がある”という何よりの証なのです。
しかし、部下がついてこないからと言って、部長が歩みを止めてしまうと、その企業は次のステージに進む機会を永遠に失います。
■部長が一歩踏み出すために必要なのは「正しい地図」と「後ろ盾」
情シス部長にとって最もつらいのは、自分が正しい方向を向いていても部下がついてこないことです。
しかし、それは部下の意識が低いからではありません。“構造としてそうなっている”だけです。
だからこそ、部長に必要なのは、
•自分が歩むべき道の“正しい地図”(=戦略実装型の要件定義の理解)
•そして、背中を押してくれる“後ろ盾”(=経営 or 外部アーキテクト)
情シス部員をいきなり変えようとするのではなく、まず部長自身が 「何を変えるべきか」 をつかむことが大切です。
■情シス部員が変わるのは「構造が変わったとき」です
人は、役割が変わらない限り行動は変わりません。
つまり、情シス部員に危機感がないのは、“危機感を持つ役割ではない”構造の中に置かれているからです。
情シス部長が、経営と現場の間に新しい構造をつくったとき、部員は自然と変わり始めます。
その第一歩を今回のブログでお話ししました。
なお、今週(12/15~)からの5回連載Blog「いま日本で行われている”要件定義”は、本来の要件定義ではない」がとても参考になると思いますので、是非お読みください。こちらから
部長自身が “何が本質なのか” を理解すれば、部下にも伝えられる言葉が変わります。
■最後に:情シス部長へ。どうか勇気を持ってください
情シス部長の皆さんに、心からお伝えしたいことがあります。
あなたが危機感を持つのは、あなたが間違っているからではありません。あなたが正しく見えているからです。
情シス部長が危機感を失ったとき、企業はITで前に進む可能性を失います。
逆に、部長が一歩踏み出すだけで、会社の未来は大きく変わります。
タッチコアは、そんな部長とともに“構造を変える伴走者”でありたいと思っています。
情シス部長が勇気を持てる組織は、必ず強くなります。
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合同会社タッチコア 小西一有