TouchCore Blog | 第3回:なぜ基幹システムは止めてはいけないのか-Mission Criticalの本質
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第3回:なぜ基幹システムは止めてはいけないのか-Mission Criticalの本質

Mission Criticalの本当の意味
「Mission Critical」とは直訳すれば「任務遂行に必須の」という意味です。ITの文脈で言えば、「システムが停止すれば企業活動が成立しない」ということ。つまり止められないのは、システムが企業活動と一体化しているからなのです。
単なる「便利ツール」や「業務効率化システム」であれば、多少止まっても致命傷にはなりません。しかし基幹系は違います。受注・出荷・在庫・支払い・給与――これらが止まるということは、「企業が外部と約束した活動そのものが止まる」ということ。だからこそMission Criticalと呼ばれるのです。


記録を失えば「存在証明」を失う
基幹システムが果たしている役割は「企業活動の証跡を記録すること」です。受注伝票、出荷記録、在庫移動、人事異動、給与計算…。これらは企業がどのように活動しているかを示す唯一の証跡であり、止まれば「活動を記録できない=存在を証明できない」ということになります。
仮に一日システムが止まったとすれば、その日の受注も出荷も給与も「なかったこと」になってしまいます。これは取引先との信頼を失うだけでなく、会計・税務・監査の観点からも致命的です。会計は基幹で記録された事実を集計する仕組みであり、前提の取引が失われれば会計そのものも成立しなくなるのです。

「止められない理由」を誤解してはいけない
日本企業の多くは「止められない=会計が止まるから」と説明してきました。確かに会計処理は止まります。しかしそれは「結果」であって「原因」ではありません。
本当の理由は、取引や業務の事実を記録し続けることが企業活動の根幹であるからです。会計はその「副産物」であり、基幹システムの目的は「活動を絶え間なく記録すること」にあるのです。

「止めてはいけない」を支える仕組み

Mission Criticalを実現するために、基幹系には高い可用性と冗長性が求められます。
•冗長構成:複数のサーバーやネットワークを冗長化して、障害時も止まらない仕組みを構築する
•バックアップとリカバリ:記録データを即座に復旧できる体制を整える
•24時間365日の運用監視:止まらないために常時監視し、異常を即時検知する
これらの投資は「止められない」という要請に応えるための必須条件であり、「高額な維持費」ではなく「企業存続のための保険」なのです。

基幹システムと経営の一体性

基幹システムが止まることは、単なる「業務の遅延」ではなく「企業の停止」を意味します。だからこそ、経営者はシステムを「IT部門の責任」として片付けてはなりません。基幹システムは経営そのものの中枢であり、経営判断と同じレベルで扱うべき存在なのです。


まとめ

基幹システムが止められない理由は、「会計処理ができなくなるから」ではありません。企業活動を絶え間なく記録することこそが企業の存在証明であり、その継続が企業の生命線だからです。Mission Criticalとは「会計システムを守ること」ではなく「企業活動の証跡を守ること」なのです。


【連載】基幹システムの正しい理解はビジネス成長を支える

第1回:基幹システムとは何かー会計システムという誤解

第2回:基幹系と情報系 ー入力して記録する世界と加工して情報にする世界

合同会社タッチコア 小西一有