
「情シスにどんな人材が必要か」
この問いに対し、多くの企業は、
・クラウドに詳しい
・セキュリティに強い
・最新技術を知っている
といった答えを挙げます。
ですが、それらは条件の一部でしかありません。
ERPを再定義した今、情シスに求められる人材像は、根本から変わります。
情シスの仕事は「IT」ではありません
まず、前提を整理しておきましょう。
情シスの仕事は、ITそのものではありません。
企業活動を、正しく記録し続けることです。
前回までお話してきたように、基幹システムとは、企業の素活動をリアルタイムで記録し続ける仕組みです。
この記録が止まれば、企業は自分たちが何をしているのか分からなくなります。
つまり情シスにとって最も重要なのは、ITを止めないことではなく、企業活動の記録を途切れさせないことなのです。
▶求められるのは「業務を定義できる人材」
では、その役割を果たすには、どんな人材が必要なのでしょうか。
答えは明確です。
業務を、業務として説明できる人材です。
・どんな素活動が存在するのでしょうか
・何がリソースとして動いているのでしょうか
・どこで記録されるべきでしょうか
これを言語化できなければ、システム設計以前に、ERPは成立しません。
情シスに必要なのは、コードを書ける人でも、ツールを選べる人でもありません。
企業活動を構造として捉えられる人なのです。
▶ITスキルは「手段」に過ぎない
誤解してはならないのは、ITスキルが不要だという話ではありません。
ですが、ITスキルは目的ではなく手段です。
・クラウドは使えます
・データベースは分かります
・APIは理解しています
これらは、素活動を記録し、活用するための道具に過ぎません。
道具の使い方だけを磨いても、何を記録すべきかが分からなければ、企業の役には立ちません。
情シスに必要なのは「翻訳者」です。
これからの情シス人材を一言で表すなら、
翻訳者です。
・現場の活動を、構造に翻訳します
・経営の意図を、業務定義に翻訳します
・技術制約を、設計条件に翻訳します
この翻訳ができる人材がいなければ、ERPは永遠にパッケージ導入で終わります。
そして翻訳とは、ITスキルだけでは決して身につきません。
▶なぜ、こうした人材が不足しているのか
情シスに必要な人材が育っていない理由は単純です。
これまで、その役割を定義してこなかったからです。
・ITに詳しければ良い
・ベンダーと話せれば良い
・障害対応ができれば良い
そうした期待の積み重ねが、情シスを「保守屋」にしてきました。
業務を定義する責任を与えずに、業務が分かれと言っても、育つはずがありません。
▶これからの情シス人材に必要な三つの力
ERP再定義論の文脈で言えば、情シスに必要な力は次の三つに集約されます。
・業務を素活動に分解できる力
・記録すべき対象を設計できる力
・基幹と情報の役割を切り分けられる力
これらはすべて、資格では測れません。
ですが、企業経営にとっては極めて重要な能力です。
▶経営が変えなければ、人材は育たない
最後に強調しておきたいことがあります。
情シス人材の問題は、個人の能力不足ではありません。
経営が、どんな人材を必要としているかを言語化してこなかったことが原因です。
ERPを再定義するとは、人材像を再定義することでもあります。
▶次に問われること
では、この人材をどう育てるのでしょうか。どう評価するのでしょうか。
次回(第4回)、ERP再定義論は、思想から制度へ「情シス人材は、どう育成・評価すべきか」
という現実的なテーマに進みます。
合同会社タッチコア 小西一有
第1回:基幹システムとは何か―ERPを再定義すると、情報システムの意味が変わる
第2回:情シスの役割再定義―「守る仕事」と「変える仕事」を取り違えない