
第2回では、なぜお客さまの目にSAPコンサルもITコンサルもDXコンサルも、すべて「ITの人」に見えてしまうのか、その構造を整理しました。
今回は、そこから一歩進めて、なぜ「SAP導入に慎重な人」が、単なる異論ではなく、
“敵(エナミー)”として扱われてしまうのかを考えたいと思います。
■ SAP導入は、いつの間にか「議論」ではなくなる
多くの企業でSAP導入は、検討段階を過ぎると、次のような意味を帯び始めます。
• SAP導入=DX
• SAP導入=改革
• SAP導入=正しい経営判断
この時点で、SAPは単なる業務システムではなく、経営の意思表明になっています。
つまり、SAP導入は「やるか/やらないか」を議論する対象ではなく、すでに選ばれた“正解” なのです。
■ そこで投げかけられる「不都合な問い」
その状況で、私が何をするかというと、次のような問いを投げかけます。
• その業務構造で、SAPは本当に使いこなせるでしょうか
• カスタマイズ前提になっていないでしょうか
• 導入後に調整コストが爆発しないでしょうか
これらは、SAPを否定する問いではありません。
成功条件を確認する問いです。
しかし、受け取られ方は違います。
この問いは、SAPそのものではなく、「その判断を下した人」を直撃するからです。
■ 「反対意見」ではなく「否定」に聞こえてしまう理由
人は、自分の意思決定を否定されると、冷静ではいられません。
特に、
• 経営会議で決めた
• 役員が旗を振った
• すでに社内説明を始めている
こうした状況では、SAP導入は個人の判断ではなく、組織の顔になっています。
そこに「本当に大丈夫ですか?」と問うことは、
技術的な確認ではなく、面子と正当性への挑戦に見えてしまいます。
その瞬間、問いを投げた人は、「議論相手」ではなく「邪魔者」になります。
■ なぜ「嫌われる」では済まないのか
ここが重要なポイントです。
SAP導入にブレーキをかける人は、単に「慎重な人」では終わりません。
• プロジェクトを遅らせる
• 空気を悪くする
• 経営判断を疑う
こうしたラベルが貼られ、次第に “敵” として位置づけられます。
これは感情論ではありません。組織防衛反応です。
組織は、自らの意思決定を守るために、それを揺るがす存在を排除しようとします。
■ 正しい人ほど、前に出るほど、敵になる
皮肉なことに、この構造の中では、
• 問いが鋭い人ほど
• 全体を見ている人ほど
• 本質的な問題を突く人ほど
早く、強く、敵認定されます。
なぜなら、その人の指摘は「修正可能なミス」ではなく、前提そのものを揺るがすからです。
■ 問題は性格でも伝え方でもない
ここで誤解してはいけません。
• 言い方が悪かった
• 空気を読めなかった
• コミュニケーション能力の問題
ではありません。
これは、意思決定が物語化した組織で必ず起きる現象です。
正しい問いを投げることと、好かれることは、両立しない場合があります。
次回は、この「敵認定」が起きたあと、組織の中で何が起きるのか。
議論が止まり、異論が消え、プロジェクトが“正解ルート”を走り続けてしまうメカニズムを整理します。
合同会社タッチコア 小西一有
第1回(1/5):なぜ私は「ERP製品コンサルと同業だね」と言われて傷ついたのか
第2回(2/5):なぜお客さまの目には、まるっと「ITの人」に見えてしまうのか