
業務改革やシステム導入が思うように進まないとき、次に出てくる言葉は、だいたい決まっています。
「今回のシステムがダメだっただけだ」
「次はもっと賢い仕組みにしよう」
「AIを使えば判断も自動化できるはずだ」
この発想は、一見すると前向きかもしれません。
しかし、多くの場合これは問題の先送りにすぎません。
▶技術は「足りない」から失敗しているのか
まず冷静に考えてみましょう。
•処理速度が遅いから、改革は止まったのか
•画面が使いにくいから、現場は困っているのか
•アルゴリズムが未熟だから、判断が滞っているのか
多くのケースで、答えは「NO」です。
問題はもっと手前にあります。
•誰が決めるのかが曖昧
•判断基準が共有されていない
•失敗したときの責任の所在が不明
この状態で技術だけを高度化すると、どうなるでしょう。
▶AIは「決断」ではなく「露呈」を加速する
AIを導入すれば、判断が自動化されます。
少なくとも、そう期待されてますが、実際には、AIはこう問い返してくるでしょう。
•何を最適化するのか
•どの基準を正とするのか
•例外は誰が引き取るのか
これらが決まっていなければ、AIは動けません。
そして無理に動かせば、次の問題が一気に表に出てきます。
•「なぜその判断になったのか」と説明できない
•想定外の結果が出たとき、誰も責任を取れない
•結局、人が裏で調整を始める
AIは判断を代替するどころか、組織が決めきれていなかったことを露呈させるでしょう。
▶技術を高度化するほど、問題は深刻になる
ここで重要な事実があります。
技術で解決できない問題は、技術を高度化すると、より深刻になります。
なぜなら、
•判断が速くなり
•影響範囲が広がり
•修正が難しくなる
からです。
曖昧なまま放置されていた問題は、これまでは「人の調整」で吸収されていました。
しかしAIや高度な情報システムは、その“余白”を許しません。
結果として、
•誰かが無理をする
•現場が疲弊する
•組織内に不信が生まれる
技術は中立ですが、影響は中立ではないのです。
▶それでも人は「次の技術」に期待する
それでもなお、口々に人は言うでしょう。
「今回は使いこなせなかっただけだ」
「もっと精度が上がれば大丈夫だ」
この思考の根底にあるのは、技術に問題を押し付けたい心理です。
•決めきれない
•引き受けたくない
•衝突を避けたい
そうした組織の曖昧さを、技術で覆い隠そうとするのです。
でも、いくら高度な技術を導入しても、技術は決める責任までは代行してはくれません。
▶見えてきた「本当の設計対象」
ここまで読んで、気づき始めている方もおられるでしょう。
問題は、
システムの性能でも、AIの精度でもありません。
本当に設計すべきだったのは、技術が介入したときに、人と組織がどう振る舞うか。
その仕組みではないでしょうか。
これまで曖昧にされてきたこの領域こそ、改革の成否を分けるのです。
▶次回予告
では、その「仕組み」とは何か。そして、誰がそれを設計すべきなのでしょう。
次回は、情報システムに影響システムを合わせるという「最低最悪・極悪非道」をテーマに、これまでの議論をすべて束ねていきます。
合同会社タッチコア 小西一有
▶情報システムと影響システムー正しいITが壊すもの(全4回)今後の予定◀
第1回:ある一言が改革を失敗させる(1/19)
第2回:「現場の抵抗が強くて…」は本当か?(1/26)
第3回:「次はAIを入れれば解決する」―技術が問題を増幅させる(2/2)
第4回:第4回:情報システムに影響システムを合わせる極悪非道(2/9)