
「この技術は可能性があります。」
イノベーションの議論で、最もよく聞く言葉のひとつです。
しかし、その後に続く説明はたいていこうなります。
・AIで効率化できます
・IoTで可視化できます
・DXで生産性を向上できます
確かに正しい。
しかしその議論を、人口構造問題に当てはめてみましょう。
少子高齢化で労働力が減る。
だから自動化する。
だからAIで代替する。
だから外国人労働者を受け入れる。
ここで一度、冷静に立ち止まってください。
これらの提案はすべて、
「今の経済構造を維持する」前提に立っています。
・企業は成長し続ける
・GDPは拡大する
・労働が価値の源泉である
その前提を一切疑っていない。
つまりこれは、構想ではなく“穴埋め”です。
環境問題も同じ構造を持っています。
プラスティックが海に流出する。ではどうするか。
・分解性素材を開発する
・回収効率を上げる
・リサイクル率を向上させる
これもまた、「生産し続ける」前提を守ったままの改善です。
なぜ私たちは、前提を疑わずに済む方向に進むのでしょうか。
理由は単純です。
安全だからです。
テクノロジーは中立に見える。
改善は合理的に見える。
効率化は正義に見える。
しかし、前提を疑う問いは違います。
人口構造問題であれば、
・そもそも“成長”を前提にしない社会は成立しないのか?
・所得と労働を分離できないのか?
・企業の規模拡大を前提としないモデルは描けないのか?
環境問題であれば、
・“所有しない”ビジネスは成立しないのか?
・生産量を減らしても利益を上げる構造は描けないのか?
・廃棄を前提としない経済は本当に不可能なのか?
こうした問いは、不安を生みます。
なぜならそれは、
・既存の成功モデル
・現在のビジネス
・自分の専門性
を揺さぶるからです。
その瞬間、人は防衛的になります。
「現実的ではない」
「理想論だ」
「市場が受け入れない」
こうした言葉が出てきます。
しかし多くの場合、それは“論理的反論”ではありません。
前提が揺れたことへの防衛反応です。
✓テクノロジーに逃げる。
✓改善に留まる。
その方が安心だからです。
しかし競争優位は、
安心の側からは生まれません。
競争優位は、
・他社が疑っていない前提を疑い
・他社が壊せない構造を壊し
・他社が立てない場所に立つ
ことで生まれます。
人口構造問題や環境問題は、その訓練に最適なテーマです。
なぜなら、どちらも
・正義が絡み
・感情が入り
・固定観念が強く
・“現実的”という言葉が多用される
領域だからです。
本講座では、あえてこの2つのテーマを中心演習に据えます。
改善を禁止する回があります。
技術論を封じる回があります。
前提を書き出させる回があります。
それは意地悪ではありません。
安全地帯から出ない限り、構想は変わらないからです。
もしあなたが、
・いつも技術の話で終わってしまう
・改善案から抜け出せない
・議論が「実現可能性」で止まる
そう感じているなら。
それは能力不足ではありません。前提を疑う訓練を受けていないだけです。
次回は、改善がいかに魅力的で、いかに危険か。
人口構造問題と環境問題を使いながら、「改善思考の罠」を掘り下げます。
合同会社タッチコア 小西一有
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ー前回までー
第1回:なぜあなたのアイデアは「他にもある」と言われるのか