
DXがうまくいかない。
これは、いまや珍しい話ではありません。
多くの中堅企業がDXに取り組み、そして期待通りの成果が出ないまま、次のテーマへ移っていきます。
しかし冷静に考えてみてください。
本当にITが原因なのでしょうか。
システムベンダーの能力不足でしょうか。
ツールの選定ミスでしょうか。
あるいは社員のITリテラシー不足でしょうか。
私は、違うと考えています。
DXが失敗する最大の理由は、
ITの問題ではなく、業務構造の問題です。
多くの企業では、DXを「デジタル導入」と同義で捉えています。
SFAを入れる。
ERPを刷新する。
データ基盤を整備する。
AIを活用する。
しかし、それらはあくまで“手段”です。
本来DXとは、デジタルを使ってビジネスモデルや業務のあり方を再設計することのはずです。
ところが実際には、既存の業務構造をそのままに、
その上にデジタルを乗せようとします。
部門は縦割りのまま。
意思決定は階層的なまま。
責任範囲は曖昧なまま。
評価制度も変わらない。
この状態でITだけを高度化しても、
結果はどうなるでしょうか。
部分最適の高度化です。
営業部門は営業部門で最適化する。
製造部門は製造部門で最適化する。
管理部門は管理部門で最適化する。
その結果、部門間の“調整コスト”はむしろ増大します。
データは増えるが、意思決定は遅くなる。
可視化は進むが、責任は曖昧なまま。
これが、DXが「疲労感」だけを残す構造です。
ITベンダーはシステムを納品します。
コンサルタントは構想を描きます。
しかし、「業務構造をどう再設計するか」までは踏み込まないことが多い。
なぜなら、そこに踏み込むと組織の力学に触れるからです。
部門の権限に触れる。
役割の再定義に触れる。
既存の成功体験に触れる。
痛みが伴います。
だから多くのプロジェクトは、「システム導入」にスコープを限定します。
しかし本質はそこではありません。
DXの本質は、
デジタルを使った業務構造の再設計です。
戦略が変われば、
業務プロセスが変わる。
業務プロセスが変われば、
役割分担が変わる。
役割分担が変われば、
意思決定の流れが変わる。
その結果として、ITの配置も変わる。
順番が逆なのです。
多くのDXは、ITから入ります。
本来は、構造から入るべきです。
私たちがDX支援で最初に行うのは、ツール選定ではありません。
業務の分解と再構造化です。
どこに調整コストが潜んでいるのか。
どの意思決定がボトルネックになっているのか。
どの部門設計が戦略と不整合を起こしているのか。
そこを可視化し、設計し直します。
その上で初めて、
ITが“効く”状態になります。
DXが失敗するのは、ITが弱いからではありません。
構造を変えていないからです。
助言ではなく、ツール導入でもなく、構造設計。
これが私たちの立ち位置です。
次回は、「意思決定設計」という観点から、
経営の迷走がどこから生まれるのかを掘り下げます。
合同会社タッチコア 小西一有
第1回(1/5):なぜ経営コンサルは「違いが分からない」のか
第2回(2/5):私たちは“アドバイス業”ではありません