
私は山一證券の本店営業部で社会人生活をスタートさせました。
営業としての期間は決して長くはありませんでしたが、その経験は後のキャリアに大きな示唆を与えるものでした。
営業の現場において私が強く感じたのは、開拓営業と深耕営業は本質的に両立が難しいという事実です。
新規顧客の開拓には多くの時間と労力が必要です。
一方で、既存顧客との関係を維持し、取引を拡大していくためにも、継続的な対応が求められます。
しかし現実には、この異なる性質の活動を一人の営業担当者が同時に担うことが前提とされていました。
その結果、営業担当者は必然的に既存顧客や見込顧客への対応を優先するようになります。
これは合理的な判断です。
しかしその裏側で、新規開拓は後回しとなり、やがて営業活動全体の停滞を招きます。
私はこの構造的な問題を、営業の現場で実感することになりました。
その後、私は情報システム本部・システム企画部に異動し、全社に一人一台のパソコンを導入するプロジェクトに参画しました。
当時はパソコンの業務利用が黎明期にあり、「何に使うのか」そのものが議論の対象でした。
特に重要な論点となったのが、営業員がパソコンをどのように活用するのかという点です。
しかし、システム部門には営業経験者がほとんどおらず、営業の実態に即した議論は十分に行われていませんでした。多くはホストコンピュータへのアクセス手段としての利用にとどまっていたのです。
その中で、私は営業という仕事そのもののあり方を改めて考えるようになりました。
当時、私が本気で考えていたのは、営業という仕事は、外回りで体力を消耗する仕事から脱却すべきではないかということでした。
営業活動は、人と人とのコミュニケーションを基盤とする仕事です。
この点に疑いはありません。
しかし、そのコミュニケーションが常に対面でなければならないのかといえば、必ずしもそうではありません。
むしろ実務の多くは、電話によって十分に成立するものであると感じていました。
対面でなければ成立しない場面は、実はそれほど多くありません。
にもかかわらず、営業という仕事は「外に出ること」が前提となり、移動や訪問に多くの時間と労力が費やされていました。
私はそこに非効率性を見ていました。
そして考えたのが、電話機能を中核とした営業活動の再設計です。
パソコンに電話機能を取り込み、留守番電話やアウトバウンド機能を備えることで、営業活動の多くをオフィス内で実行できるのではないか。
さらに言えば、営業担当者の前段に、顧客への初期接触や見込顧客の選別を担う機能を設けることができるのではないか。
これは、当時の言葉で言えば「セクレタリー」に近い役割でしたが、それを人ではなく、仕組みとして実現できないかと考えたのです。
その後、私はコールセンターの運営にも関わることになります。
その経験を通じて確信したのは、コミュニケーションは対面でなくとも成立するということでした。
むしろ電話を中心としたコミュニケーションは、
効率性
再現性
管理可能性
の点で優れている側面すらあります。
こうした経験を経て、私は営業という仕事を改めて捉え直すようになりました。
すなわち、営業とは単に「訪問して売る仕事」ではなく、コミュニケーションを設計し、顧客を発見するプロセスであるということです。
この視点に立てば、営業活動の分業は必然となります。
見込顧客の探索および初期接触を担う機能と、関係構築および取引を担う機能は、本来分離されるべきものです。
これが、今日で言うところのインサイドセールスです。
インサイドセールスとは単なる効率化の手段ではありません。
それは、営業活動におけるコミュニケーションと探索の再設計に他なりません。
営業の現場、システム企画、そしてコールセンター運営という経験を通じて、私は一つの結論に至りました。
それは、営業は個人の努力に依存するものではなく、構造として設計されるべきものであるということです。
営業とは、商品を売る行為ではなく、市場の中から可能性を見つけ、適切なコミュニケーションによって顧客へと転換していくプロセスです。
そしてそのプロセスは、もはや「根性」や「経験」に委ねるものではなく、設計され、運用されるべき対象であると考えます。
合同会社タッチコア 小西一有
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