
中期経営計画を策定する際、多くの企業が売上高の成長目標を掲げます。
その実現に向けて、AI活用やシステム刷新による生産性向上、部門を横断したビジネスプロセス改革など、具体的な施策も計画に盛り込まれていきます。
では、その計画を実現したとき、お客さまにとって御社はどのような会社になるのでしょうか。
顧客にとって、今より何が便利になり、何を安心して任せられるようになるのか。
そして、これまで難しかったどのようなことが、新たに実現できるようになるのか。
この問いに答えがないまま、売上と生産性の目標だけが具体化していないでしょうか。
自社が得たい成果と、顧客が選ぶ理由をつなぐ
売上を伸ばすには、新しい顧客に選ばれる、既存顧客に購入を増やしてもらう、継続して利用してもらうなど、顧客側の行動が必要です。
その行動を、何によって生み出すのでしょうか。
「当社の生産性が向上した」という事実だけでは、顧客に購入を増やす理由は生まれません。
価格、品質、納期の確かさ、利用のしやすさ、問題が起きたときの対応。
顧客が認める価値に結び付いて、初めて選択に影響します。
売上目標を掲げる経営には、「顧客にどのような価値を認めてもらうのか」という構想が必要です。
自社のコストを下げても、顧客のコストが下がるとは限らない
顧客は、代金だけを負担しているわけではありません。
顧客は、必要な情報を探し、何度も同じ事情を説明しながら、回答を待ち、進捗を確認しています。
先の見通しが立たなければ、万一に備えて別の手段を用意しなければならないこともあります。
こうした時間や手間、そして先が読めないことによる不確実性も、顧客にとっては大きなコストです。
自社の入力作業を減らしても、顧客が何度も問い合わせる状況が残れば、その負担は変わりません。
「効率化すれば顧客に還元できる」と考えるなら、何を、どのように還元するのかまで決める必要があります。
削減した費用が、自動的に顧客経験価値へ変わるわけではないのです。
顧客経験は、社内の仕事の仕組みによってつくられる
例えば、顧客から「納期はいつになりますか」と尋ねられた場面を考えてみます。
営業が製造部門へ確認し、製造部門はさらに調達部門へ確認する。
それぞれの回答を待って、営業がようやく顧客へ返答する。顧客が経験している「待ち時間」は、こうした社内の情報と判断のつながりから生じています。
ここで、経営が目指す姿を「お客さまが注文前に信頼できる納期の見通しを得て、自社の計画を立てられる会社になる」と定めたとします。
すると、改革に必要なことが具体的に見えてきます。
在庫や生産余力をどのように把握し、どのような条件であれば、その場で納期を約束できるのか。
また、例外的なケースは誰が判断し、納期の見通しが変わった場合には、いつ顧客へ知らせるのか。
こうした情報の扱い方や判断の仕組みを、具体的に検討できるようになります。
これらを支える業務、権限、責任、情報、システムを、一つながりで設計する必要があります。
顧客経験価値は、接客部門だけの課題ではありません。会社全体の仕事の設計に関わる経営課題です。
E2Eで、何を良くするのか
部門を横断して業務を見直すことには意味があります。しかし、対象範囲を広げるだけでは、改革の目的は定まりません。
全工程で自社の費用を削減することと、顧客が目的を達成しやすくなることは、同じではありません。
顧客が何に困っているかを確かめ、どのような経験を提供するかを経営が構想する。
その実現に必要な企業能力を定め、E2Eで仕事を設計する。
顧客価値を高めるために、ある工程の費用を増やす判断もあり得ます。顧客に生まれる価値と、自社が継続して提供できる採算の両方を考える必要があります。
中期経営計画に、顧客の変化を書き込む
計画を見直す際には、次の三つを確認してみてください。
・5年後、どの顧客から、何を理由に選ばれたいのか。
・その顧客の負担を何から何へ変え、どのような成果を可能にするのか。
・そのために、会社として何ができるようになる必要があるのか。
答えは、顧客の実態に照らして確かめなければなりません。
ただし、その検討を現場やIT部門に任せきりにせず、経営が事業の方向性として引き受けることが重要です。
合同会社タッチコアは、経営者・事業責任者とともに、顧客から選ばれる理由を構想し、それを実現する業務・組織・情報・ITの設計を支援します。
売上目標と投資計画はある。しかし、顧客にとって何が変わるのかを説明しきれない。
その状態から、何を確かめ、何を決めればよいかを、一緒に整理します。
合同会社タッチコア
小西 一有
経営リフレーム ミーティング
ー見えている問題と、変えるべき問題は違う
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