TouchCore Blog | 【連載】中小企業の未来を拓く:第3回「デジタル=業務効率化」ではない!ービジネスモデルの中核に置くべき理由
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【連載】中小企業の未来を拓く:第3回「デジタル=業務効率化」ではない!ービジネスモデルの中核に置くべき理由

「DX(デジタルトランスフォーメーション)って、要するに業務の効率化でしょう?」

こうした声は、今なお多くの企業で耳にします。確かに、紙から電子へ、手作業から自動化へ…。業務プロセスの改善は、デジタルの重要な使い道の一つです。
しかし、それはデジタル活用の“入口”に過ぎません。
中堅・中小企業が、大企業に真正面から挑み、追随を許さないビジネスを作るために必要なのは、「業務の効率化」ではなく「構造の革新」です。つまり、ビジネスモデルの根幹にデジタルを据え、再設計するという視点です。

デジタルは“作業の効率化”ではなく“構造を再設計”する道具である
かつてのIT導入は、業務の「改善」にとどまっていました。たとえば:
•帳票を電子化する
•勤怠管理を自動化する
•顧客管理をExcelからクラウドへ移行する
いずれも、既存のやり方をデジタルに置き換えるものであり、構造自体は変わっていません。
一方で、本来のデジタルの強みは、「価値の届け方」「収益の仕組み」「顧客との関係性の構築」といったビジネスの骨格を作り直すところにあります。つまり、“儲かる仕組み”の刷新です。

中小企業は“構造を変える”ことで勝てるポジションにある
大企業はスケールに強く、既存モデルの最適化が得意です。しかし、構造を大胆に変える力は、中小企業のほうが上です。なぜなら、意思決定のスピードが速く、既存の利害関係や組織的制約が少ないからです。
たとえば以下のような変革は、中小企業ならではの機動力で実現できます:
•商品を単品売りから「選べるパッケージ制」へ
•営業からの受注型ビジネスを「顧客主導の注文設計」へ
•店頭販売から「双方向チャネル(EC+SNS)」へ
いずれも、「効率化」ではなく「仕組みを変える」発想です。こうした変化には、デジタルの力が不可欠です。


「サブスクリプション」はデジタル時代の理想ではない
近年よく耳にする「サブスクリプションモデル」は、一見するとデジタル時代にふさわしいように思えます。毎月一定額で使い放題、顧客との継続的な関係、予測可能な収益ー確かに魅力的な言葉が並びます。
しかし、その本質は“抱き合わせ販売”にあります。
ユーザーが本当に必要とする機能やサービスだけでなく、それを使うために不要な要素までも含めて「セット」にすることで、事業者側が都合の良い“収益構造”を確保しているにすぎません。
このモデルは特にソフトウェア産業とは相性が良いため、「デジタル時代=サブスク」という誤解が広まっていますが、**真にデジタルが目指すべきは「ユーザー主導の柔軟な価値設計」**であり、それに応じた提供形態です。


真にデジタル的な構造とは「可変性」と「関係性のデザイン」
これからのビジネスモデルで重要なのは、以下のような設計思想です
•使った分だけ支払う従量課金モデル
•成果が出た分だけ報酬が生まれる成果連動型モデル
•顧客が機能を組み合わせるモジュール型サービス
•顧客が参加する共創型エコシステム
これらはいずれも、ユーザー視点で設計された「価値提供の構造」であり、サブスクリプションのような“事業者都合の囲い込み”とは一線を画します。


アナログ産業こそ、デジタルで構造変革の余地が大きい

意外に思われるかもしれませんが、デジタル化が遅れている業界のほうが、ビジネスモデル改革の余地は大きいのです。
例:地域の学習塾
従来:月謝制、教室通学、画一的カリキュラム
変革後:1コマ単位の購入、個別進捗に応じたカリキュラム、アプリで自宅学習と教室を連携
例:建設資材の卸売業
従来:FAX発注、属人的営業、納期の不透明性
変革後:EC化、自動見積、納期のリアルタイム通知、顧客データに基づく提案営業
どちらも「業務の効率化」ではなく、「顧客との関係性の再設計」「提供価値の再定義」による構造変革です。

経営者が自問すべき問い
•顧客が本当に求めているのは何か?
•それを最も自然に、気持ちよく提供できる方法は何か?
•競合が真似できない“関係性の仕組み”を作れているか?
これらの問いに向き合い、仕組みを再設計する。そのとき、デジタルは最強のツールとなります。


次回予告
第4回「中小企業こそ試すべき!『小さく試して大きく育てる』モデル変革の進め方」では、
実際にリスクを抑えながらビジネスモデルを試作し、進化させていくための実践的な方法ー顧客インタビュー、仮説検証、ビジネスモデル・キャンバスの活用などをご紹介します。


合同会社タッチコア 小西一有


第1回なぜ中小企業はビジネスモデルを変える必要があるのか?ー価値を実装するための視点転換

第2回:日本企業はなぜビジネスモデルの研究を怠ってきたのか?ー「モノづくり信仰」の功罪


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