「DX(デジタルトランスフォーメーション)って、要するに業務の効率化でしょう?」
こうした声は、今なお多くの企業で耳にします。確かに、紙から電子へ、手作業から自動化へ…。業務プロセスの改善は、デジタルの重要な使い道の一つです。デジタルは“作業の効率化”ではなく“構造を再設計”する道具である
「サブスクリプション」はデジタル時代の理想ではない
近年よく耳にする「サブスクリプションモデル」は、一見するとデジタル時代にふさわしいように思えます。毎月一定額で使い放題、顧客との継続的な関係、予測可能な収益ー確かに魅力的な言葉が並びます。
しかし、その本質は“抱き合わせ販売”にあります。
ユーザーが本当に必要とする機能やサービスだけでなく、それを使うために不要な要素までも含めて「セット」にすることで、事業者側が都合の良い“収益構造”を確保しているにすぎません。
このモデルは特にソフトウェア産業とは相性が良いため、「デジタル時代=サブスク」という誤解が広まっていますが、**真にデジタルが目指すべきは「ユーザー主導の柔軟な価値設計」**であり、それに応じた提供形態です。
真にデジタル的な構造とは「可変性」と「関係性のデザイン」
これからのビジネスモデルで重要なのは、以下のような設計思想です
•使った分だけ支払う従量課金モデル
•成果が出た分だけ報酬が生まれる成果連動型モデル
•顧客が機能を組み合わせるモジュール型サービス
•顧客が参加する共創型エコシステム
これらはいずれも、ユーザー視点で設計された「価値提供の構造」であり、サブスクリプションのような“事業者都合の囲い込み”とは一線を画します。
アナログ産業こそ、デジタルで構造変革の余地が大きい
意外に思われるかもしれませんが、デジタル化が遅れている業界のほうが、ビジネスモデル改革の余地は大きいのです。経営者が自問すべき問い
•顧客が本当に求めているのは何か?
•それを最も自然に、気持ちよく提供できる方法は何か?
•競合が真似できない“関係性の仕組み”を作れているか?
これらの問いに向き合い、仕組みを再設計する。そのとき、デジタルは最強のツールとなります。
次回予告
第4回「中小企業こそ試すべき!『小さく試して大きく育てる』モデル変革の進め方」では、
実際にリスクを抑えながらビジネスモデルを試作し、進化させていくための実践的な方法ー顧客インタビュー、仮説検証、ビジネスモデル・キャンバスの活用などをご紹介します。
合同会社タッチコア 小西一有
第1回:なぜ中小企業はビジネスモデルを変える必要があるのか?ー価値を実装するための視点転換
第2回:日本企業はなぜビジネスモデルの研究を怠ってきたのか?ー「モノづくり信仰」の功罪
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