TouchCore Blog | 第4回:流行りのAI教育に欠けているもの―プロンプトではなく本質を学べ
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第4回:流行りのAI教育に欠けているもの―プロンプトではなく本質を学べ

近年、多くの企業で「AI教育」がブームになっています。
社員にChatGPTを使わせたり、生成AIの活用セミナーを受講させたりと、取り組みは活発です。
しかし私は、このAI教育ブームを少し冷ややかな目で見ています。なぜなら、その多くが 「プロンプトの打ち方」 を教えるだけに留まっているからです。

プロンプト研修の限界

確かに、AIに正しい指示を与える方法を学ぶことは有益です。
ただし、それはあくまで「道具の使い方」を学んでいるに過ぎません。
ハンマーの握り方を教えることはできても、それをどう使って家を建てるかを教えないのと同じです。

つまり、プロンプト教育は表面的なスキル習得に終わり、AIを経営やビジネスの変革にどう活かすかという根本的な問いに答えていません。

本当に必要なのは「AIの本質理解」

AI教育に欠けているのは、AIの仕組みやアルゴリズムの専門知識ではありません。
必要なのは、AIの本質と将来展望を理解することです。

・AIはなぜこれほど急速に進化しているのか

・どの領域に適用でき、どの領域には不向きなのか

・将来的にAIが組織や社会にどのような影響を及ぼすのか

こうした視点を持たずに「便利な道具」としてだけAIを学んでも、企業の競争力向上にはつながりません。


「AIを経営に組み込む」ための問い

幹部や経営層がAIを学ぶとき、最も重要なのは 「自社にとってAIは何を意味するのか?」 という問いを立てることです。

例えば―

・自社のバリューチェーンのどこにAIを活用できるか

・AIによって競争優位をどう確立できるか

・AIが進化した未来において、自社のビジネスモデルはどう変わるか

こうした問いを考えることが、AI教育の本質です。
単に「文章生成を効率化する」レベルではなく、経営戦略にAIを組み込む視座を持たなければなりません。


形式的な教育が生む危うさ

残念ながら、現状のAI教育の多くは「流行に乗るためのアリバイ作り」に近いものです。
経営者が「ウチもAI教育をやっている」と言いたいがために実施されているケースも少なくありません。

しかし、このような形式的な教育は、社員のモチベーションを下げるだけです。
「結局、プロンプトを教わったけど、何に使えばいいの?」という疑問が解消されないまま、学びは形骸化してしまいます。


幹部・経営者こそAIを学ぶべき

AI教育の中心に据えるべきは、若手社員ではなく幹部層と経営者です。
彼らがAIを理解し、経営にどう活かすかを考えなければ、若手がいくら学んでも成果は出ません。

経営者がAIの可能性と限界を理解すれば、戦略にAIを組み込む意思決定ができます。
幹部がAIを学べば、現場の提案を受け止め、実行に移すことができます。

つまり、AI教育の真の対象は「組織を動かす人たち」 なのです。


まとめ:AI教育の再定義を

AI教育はプロンプトの習得で終わってはいけません。
経営層が本質を理解し、未来を見据えて戦略を描くための学びに再定義すべきです。

私は、AIを単なるツールではなく、経営を変革するレバーとしてどう活かすかを考える場をつくりたいと考えています。
次回は最終回として、「経営者よ、自ら学び直せ―教育を経営戦略と一体化せよ」をテーマにまとめたいと思います。

AIを経営にどう活かすべきかを真剣に考える幹部・経営者の方へ。
表面的なスキル教育ではなく、本質理解と戦略への落とし込みが不可欠です。
ご関心ある方はぜひコメント・メッセージでご意見をお聞かせください。


合同会社タッチコア 小西一有

第1回:人材育成の誤解―なぜ若手教育だけでは会社は変わらないのか

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第3回:技術者出身経営者の罠―IT企業に顕著な「経営の未熟さ」