第3回:戦略を業務に翻訳するという仕事ービジネスアーキテクチャが描く「実装としての戦略」
「戦略を落とす」とは、構造を設計すること
「戦略を現場に落とす」という言葉はよく使われますが、実際にはKPI設定やスローガン共有で終わることがほとんどです。
しかし、真に戦略を落とすとは、「価値を実現する業務構造(ビジネスアーキテクチャ)を設計すること」です。
戦略は“何を実現するか”という構想、業務は“どう実現するか”という仕組み。
ビジネスアーキテクチャは、その2つを結ぶ“翻訳の設計図”です。
戦略の意図を構造に変換する3ステップ
1. 価値構造:なぜその戦略を取るのかを明確にする
例:低コスト→価格優位性、デジタル化→スピードと可視性
2. 機能構造:どの活動でその価値を実現するかを定義する
例:「スピード」を支える機能=需要予測・在庫最適化・意思決定支援
3. プロセス構造:価値がどのように生まれるかを可視化する
この3層を一貫させることで、経営戦略は現場の業務に翻訳されます。
実例:製造業の「脱下請け」改革
経営の「脱下請け」という意図が、価値・機能・プロセスの3層で再設計され、現場が“どの価値を支えているか”を理解するようになった。
結果、営業と開発が連動し、自社ブランド事業が確立した。
戦略が実現したのは、“構造を描いた”からです。
構造が自律を生む
構造が明確になれば、現場は指示を待たなくなります。
「自分の仕事がどの価値の一部なのか」を理解しているため、自ら判断し行動できるようになるのです。
これが“権限委譲”ではなく、構造的自律です。
合同会社タッチコア 小西一有
第1回:なぜ“成長戦略”は現場に届かないのか― 戦略と業務をつなぐ「構造設計」の欠如
第2回:意図が伝わらない組織の構造―経営の言葉を翻訳する「ビジネスアーキテクチャ」の必要性