TouchCore Blog | 第4回:情シス× 業務改革部門の役割再定義ー“便利屋”ではなく戦略を実装する企業の中枢機能です
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第4回:情シス× 業務改革部門の役割再定義ー“便利屋”ではなく戦略を実装する企業の中枢機能です

IT投資がうまくいかない企業の多くでは、情シス部門と業務改革部門が、本来とは異なる役割を背負わされています。

情シスは「問い合わせ対応」「トラブルシューティング」業務改革部門は「改善の旗振り」「業務効率化支援」このような役割イメージが、企業の至るところに染み付いています。
しかしこの認識は、企業改革を大きく遅らせる誤解です。
本来、情シスも業務改革部門も、経営の意志を形にするための“戦略実装機能” を担う極めて重要な存在です。
今回は、企業の未来を左右するこの二つの機能を、改めて“本来あるべき姿”として再定義します。

■情シスは「ITの技術担当」ではなく、企業構造の“翻訳者”です

情シスというと、「パソコン設定」「ネットワーク管理」「問い合わせ対応」といった役割で語られがちです。
しかし、本来の情シスはこれとはまったく異なる位置づけです。
情シスが担うべきは、次のような知的業務です。
•経営の意志を理解する
•業務構造を俯瞰し、全体の整合性を把握する
•情報構造(データ・システム)の役割を設計する
•業務部門とITベンダーの間の“翻訳機能”を担う
•経営視点でIT投資の優先順位を決める
つまり情シスとは、経営と現場、業務とITをつなぐ“構造の翻訳者” なのです。
この役割が組織の中に根づいている企業は、IT投資の成果が戦略に直結しやすく、進化のスピードも早い傾向があります。
逆に、この役割が曖昧な企業では、
•プロジェクトが現場要望に引きずられる
•ベンダー依存が進む
•経営の意志がITに反映されない
•システムが増えるだけで戦略に貢献しない
といった症状が現れます。

■業務改革部門は「改善の旗振り役」ではなく、企業価値を高める“構造設計者”です

業務改革部門(経営企画・改善推進室・業務改革チームなど)は、しばしば「改善支援部隊」として扱われています。
しかし、本来の業務改革部門は企業価値を高めるための“業務構造の設計機能”を担うべき存在です。
つまり、次の問いに答える役割です。
•企業はどの価値で勝つべきか
•その価値を支える業務はどのような姿か
•業務同士はどうつながるべきか
•その構造を支える情報はどう整理されるべきか
業務改革とは、手順を変えることではありません。
価値の出し方を“構造として再設計すること” なのです。
一般的な改善活動やカイゼンとは役割が異なります。
それら必要ですが、本質的な業務改革とは別物です。

■情シス × 業務改革部門が連携すると企業は“構造的に前進”します

本来、情シスと業務改革部門は補完し合う関係にあります。
•業務改革部門:業務構造の設計
•情シス:情報構造の設計と実装支援
この二つが噛み合うと、企業は“構造的に強い組織”へと変わります。
逆に、どちらかが欠けると、
•業務改革が絵に描いた餅になる
•ITが“現場の便利ツール”にとどまる
•データ活用が表面的になる
•経営の意志が現場に流れない
という状態が続きます。
多くの日本企業では、情シスと業務改革部門が「別々のミッションで動いている」という構造が見られますが、これは非常にもったいないことです。
本来は、両者が“戦略を実装するための一体チーム”として動くのが最も望ましい姿です。

■情シス・業務改革部門が本来担うべき5つのコア業務

ここで、二つの機能が組織として果たすべき役割を5つのコア業務に整理します。
① 経営の意志の言語化と構造化
経営の言葉を“業務のロジック”に翻訳できるかどうかで、すべてが決まります。
② 業務構造の設計(価値創出プロセスの再定義)
改善ではなく、“企業の価値の出し方”を設計する仕事です。
③ 情報構造(データ・システム)の設計
業務構造に合わせて、情報・データの役割を整理する機能です。
④ ベンダーとの翻訳・監督機能
要件定義をベンダー任せにせず、“経営視点での要件”を企業が主導する立場を確立します。
⑤ 戦略と現場の整合性チェック(構造のメンテナンス)
戦略変更・組織変更があっても、業務と情報が整合を保つように調整します。

この5つを自社で担える企業は、IT投資の質が劇的に向上します。

■それでも「うちには難しい」と感じる企業が多いのも事実です

ここまで読んでいただくと、多くの経営者がこう感じます。
「理想はわかるが、うちの情シスや業務改革部門ではここまで役割を果たせない」
これは正直な感覚であり、当然のことです。
なぜなら、情シスも業務改革部門も、本来の役割を訓練する機会が与えられてこなかった ためです。
だからこそ、企業が“戦略実装能力”を獲得するためには、一時的に外部の専門知を取り入れるという選択肢が極めて合理的です。

■外部CIOという「第三の方法」が、役割の再定義を現実にします

外部CIOは、企業の内側に入り込みながら
•経営の意志の構造化
•業務構造・情報構造の一貫設計
•情シス・業務改革部門の能力強化
•ベンダーコントロールの仕組みづくり
などを支援します。
タッチコア
では、この外部CIOとして“企業の戦略実装能力そのもの”を底上げする支援を行っています。
情シスの価値が最大化し、業務改革部門が本来の役割を果たせる組織構造をつくる。
これが、企業のDXやIT投資を再び前に進めるための鍵なのです。

■まとめ:情シスも業務改革部門も、企業の未来をつくる“戦略実装機能”です

情シスは「ITの便利屋」ではありません。
業務改革部門は「改善の旗振り役」ではありません。
両者はともに、経営の意志を構造化し、企業の未来をつくるための中核機能 です。
この役割を再定義しなければ、企業は永遠に部分改善のループから抜け出せません。

次回(第5回)は、この“正しい要件定義”を企業に根づかせる方法 を整理します。


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第1回:いま日本で行われている「要件定義」は、要件定義ではないー情シスがなぜ疲弊し、ベンダーがなぜ“ユーザー要望書”を量産するのか

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