TouchCore Blog | 第4回:「何を決めるのか」が曖昧なまま業務モデリングは始められる ―「業務モデリング」が日本で活用されない理由④
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第4回:「何を決めるのか」が曖昧なまま業務モデリングは始められる ―「業務モデリング」が日本で活用されない理由④

業務モデリングに取り組んだものの、議論が発散し、結局使われなかった。
こうした経験を持つ人は少なくないでしょう。その背景には、ある共通した問題があります。
それは、「何を決めるためのモデリングなのか」が最初から定義されていないという点です。


日本企業で業務モデリングを始める際によく聞く目的は、
「業務を可視化したい」
「現状を整理したい」
「DXを進めるために必要だから」
といったものです。


しかし、これらはいずれも“行為”の説明であって、“意思決定”の説明ではありません。
可視化した結果、何を決めるのか。整理した先に、どの判断を下したいのか。
そこが語られないまま、モデリング作業だけが進んでいきます。


目的が曖昧なまま始まったモデリングでは、必ず粒度の問題が発生します。
ある人は業務を大きな塊で捉え、別の人は細かな作業レベルで語ります。
どちらが正しいかではありません。目的が定まっていないため、揃えようがないのです。

さらに議論は、「現状をどこまで忠実に表現するか」という方向に流れがちです。


例外はどうするのか、実際にはこういうケースもある、といった指摘が次々と出てきます。
結果としてモデルは肥大化し、複雑になり、誰も全体像を把握できなくなります。

ここで多くのプロジェクトは疲弊します。
「完璧な現状把握」を目指すほど、意思決定からは遠ざかっていくからです。

業務モデリングの目的は、現状を正確に写し取ることではありません。
意思決定に必要な“違い”を浮かび上がらせることにあります。


そのためには、「このモデリングで何を決めたいのか」を最初に合意しておく必要があります。
たとえば、
・業務を統合したいのか
・標準化と例外の線を引きたいのか
・システム化の範囲を決めたいのか


目的によって、必要なモデルの粒度も、切り口もまったく異なります。

にもかかわらず、日本の組織では「決める」ことを後回しにしがちです。
まずは整理しよう、まずは見える化しよう。その姿勢自体は理解できますが、
結果としてモデリングは“準備作業”のまま終わってしまいます。


業務モデリングは、準備ではありません。意思決定そのものです。

この認識を欠いたまま、どれだけ高度な手法を導入しても、業務モデリングが使われることはありません。


次回は、これまでの議論を総括し、業務モデリングが根付かない最大の理由について踏み込みます。


合同会社タッチコア 小西一有

第1回:なぜ日本では「業務をモデルで考える」文化が育たなかったのか―「業務モデリング」が日本で活用されない理由①

第2回:業務モデリングが「説明資料」で終わってしまう理由―「業務モデリング」が日本で活用されない理由②

第3回:なぜ業務モデリングは「専門家の仕事」になってしまうのか―「業務モデリング」が日本で活用されない理由③