
「IT企画人材が足りない」この言葉は、もはや日本企業の常套句になりました。
採用しても来ない。
育てても育たない。
外注に頼るしかない。
ですが本当に、IT企画人材は「不足」しているのでしょうか。
結論から言えば、不足しているのではありません。
存在できなかったのです。
IT企画とは、そもそも何をする人なのでしょうか。
IT企画とは、何を企画する仕事なのでしょうか。
まず、この問いから逃げてはなりません。
多くの企業では、
・要件定義をまとめる人
・ベンダーと調整する人
・プロジェクトを回す人
このあたりが「IT企画」と呼ばれています。
しかしこれらは、すでに決まった前提の中で仕事をする役割です。
本来の企画とは、「何をやるか」を決める仕事です。
日本企業では、この「何をやるか」は、長らく誰も定義してきませんでした。
▶ERP再定義から見える、決定的な欠落
ERP再定義論の文脈に立つと、IT企画人材に本来求められる役割は明確になります。
・どんな素活動を記録すべきなのか
・何を企業資源として管理するのか
・どこまでを基幹とし、どこからを情報とするのか
これらを定義するのが、本来のIT企画です。
ですが現実は、
・パッケージありき
・ベンダー提案ありき
・「標準に合わせましょう」ありき
この状態で、何を企画せよというのでしょう。
▶「決めてはいけない仕事」にされたIT企画
IT企画人材が育たなかった最大の理由は、決めてはいけない仕事にされていたことです。
・業務は現場のもの
・経営判断は経営のもの
・ITは手段だから黙って作れ
という扱いです。
この三点セットの中で、IT企画は常に「調整役」に押し込められてきました。
・現場の言い分を聞く
・ベンダーの言い分を聞く
・何も決めずに板挟みになる
これを何年繰り返しても、企画力は育ちません。
▶IT企画人材が「要件定義屋」になった理由
多くの企業で、IT企画人材は「要件定義ができる人」として扱われています。
ですが要件定義とは、企画の結果を書き写す作業に過ぎません。
本来あるべき順序は、
1.何を記録すべきかを決める
2.業務構造を定義する
3.その結果として要件が生まれる
この1と2をすっ飛ばして、3だけを任されてきました。
それで「企画人材が育たない」と嘆くのは、筋違いです。
「ITが分からないから企画できない」は嘘です
よくある言い訳に、「ITに詳しくないから企画できない」というものがあります。
これは完全に逆です。
企画とは、ITを使わない前提で考える仕事です。
・何を記録したいのか
・何を管理したいのか
・何に責任を持ちたいのか
これを決めるのに、クラウドの知識は要りません。
必要なのは、企業活動を構造として捉える視点です。
▶IT企画人材は「育成不足」ではない
ここまで見てきて明らかなように、
IT企画人材不足は、以下の問題ではありません。
・育成の問題
・採用の問題
・個人の能力の問題
役割を定義しなかった経営の問題です。
企画する権限を与えず、決める責任も与えず、それで「企画人材がいない」と言うのは、存在できないようにしておいて「いない」と言っているだけです。
では、どうすればIT企画人材は生まれるのでしょうか。
答えは単純です。
・企画してよい範囲を明確にする
・決めるべきテーマを与える
・失敗しても責任を取らせない
そして何より、「何を記録するかを決める仕事」こそがIT企画であると定義し直すことです。
ERP再定義論とは、
IT企画人材を生み出すための前提条件でもあります。
▶次に問われること
次に問われるのは、ではそのIT企画人材をどこに置くのかという組織論です。
・情シスなのか
・経営企画なのか
・現場なのか
ERP再定義論は、組織設計へと進んでいきます。
合同会社タッチコア 小西一有
第1回:基幹システムとは何か―ERPを再定義すると、情報システムの意味が変わる
第2回:情シスの役割再定義―「守る仕事」と「変える仕事」を取り違えない
第3回:情シスに必要な人材像の再定義―「ITが分かる人」ではもう足りません