TouchCore Blog | 第3回(3/5):改善の先に競争優位はない―人口構造問題と環境問題が示す“安全な思考”の限界
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第3回(3/5):改善の先に競争優位はない―人口構造問題と環境問題が示す“安全な思考”の限界

改善は、悪ではありません。むしろ企業活動の大半は改善で成り立っています。

品質を上げる。
コストを下げる。
効率を高める。

これらは重要です。しかし、ここに一つの決定的な限界があります。

改善は、前提を守る行為であるということです。

人口構造問題を例に考えてみましょう。

少子高齢化で労働力が減少する。
社会保障費が増加する。
現役世代の負担が重くなる。

この構造の中で出てくる提案は、ほぼ次の3系統に収束します。

・労働参加率を上げる
・生産性を向上させる
・負担を分散する

すべて合理的です。

しかし冷静に見ると、これらはすべて「今の社会構造を維持する」ための改善策です。

つまり、

・働く人がいて
・企業が成長し
・税収が増え
・社会保障を支える

という前提は一切疑われていない。

だから提案は似通います。

どの企業も、どの政策も、同じ方向を向く。

ここに競争優位は生まれません。

環境問題も同様です。

プラスティックの海洋投棄が問題になると、

・回収率を上げる
・素材を改良する
・廃棄量を減らす

という改善案が出ます。

しかしこれも、

生産→消費→廃棄という構造を守ったままの最適化です。

構造そのものは壊していない。

改善が魅力的なのは、誰も傷つけないからです。

既存事業は守られる。
雇用は維持される。
産業構造は変わらない。

そして何より、「現実的」に見える。ここに大きな罠があります。

現実的という言葉は、しばしば

「前提を疑わない」ことの言い換えです。

人口構造問題で

「労働を前提にしない社会を考えよう」

と言うと、すぐにこう返されます。

「そんなの現実的ではない。」

しかしそれは本当に不可能なのでしょうか。

・ベーシックインカム
・分散型コミュニティ経済
・自動化前提の所得再配分

こうした構想は、少なくとも思考の射程には入るはずです。

環境問題で「生産しない設計を考えよう」と言うと、やはり同じ反応が返ってきます。

「ビジネスにならない。」

しかし、

・所有しないビジネス
・使用権モデル
・循環を前提にした設計

これらはすでに一部で実装されています。

つまり、
“不可能”なのではなく、前提を壊すことが怖いのです。

改善思考は、安心を与えてくれます。

・既存事業を否定しない
・自分の専門性を守れる
・組織内で摩擦が少ない

だから改善は評価されやすい。

しかし競争優位は、摩擦の外側にあります。

他社が守っている前提を壊したとき、初めて違いが生まれます。

新イノベーション創造講座では、改善を否定しません。

しかし改善を一度禁止する回があります。

人口構造問題では、「労働力を増やす案は禁止」

環境問題では、「生産を前提にした案は禁止」という条件を出します。

すると、多くの受講者が沈黙します。これまで考えたことがないからです。

その沈黙の中に、本当の思考が始まります。

競争優位は、アイデアの数では生まれません。

前提をどこまで壊せるかで決まります。

改善に留まるか。構造を疑うか。

その分岐点に立つための訓練が、この講座の中核です。

次回は、

なぜ前提を疑うと人は怒るのか。
なぜ議論が止まるのか。

人口構造問題と環境問題を通して、その心理構造に踏み込みます。

合同会社タッチコア 小西一有

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ー前回までー

第1回:なぜあなたのアイデアは「他にもある」と言われるのか

第2回:なぜテクノロジーに逃げ改善に留まるのか