
会社が停滞するとき、よく聞く言葉があります。
「うちは意思決定が遅い」
「会議が多すぎる」
「誰が決めるのか分からない」
これは能力の問題でしょうか。
リーダーシップの問題でしょうか。
私は違うと考えています。
問題は、意思決定の“設計”にあります。
多くの中堅企業では、意思決定は「慣習」で運用されています。
どの会議で何を決めるのか。
誰が最終責任を持つのか。
どの情報を前提に判断するのか。
それが明確に設計されていない。
その結果、
・根回しの増加
・事前説明の連鎖
・会議の多層化
・責任の分散
が起きる。
意思決定が遅いのではありません。
意思決定の経路が設計されていないのです。
ここで思い出すべきことがあります。
野中郁次郎先生は、日本企業が暗黙知に依存しすぎていることに警鐘を鳴らしてこられました。
暗黙の了解、阿吽の呼吸、察する文化。
それ自体は強みでもありました。
しかし、それを前提としたままでは、持続的成長は難しい。
にもかかわらず、いま多くの企業が
「DX」や「AI活用」に希望を託しています。
しかし、暗黙知だらけの構造を放置したまま、DXやAIで補完できるはずがありません。
業務が明確に定義されていない。
意思決定基準が形式知化されていない。
責任範囲が曖昧。
その状態でAIを入れても、学習させる前提が存在しないのです。
業務は本来、論理的に設計可能です。
どの情報をインプットとし、どの判断基準で評価し、どの権限で決裁するのか。
これは構造の問題です。
それを設計しないまま、「データ活用で成長する」「AIで生産性を上げる」と夢見るのは、率直に言えば順番が逆です。
まず設計。
その上にデジタル。
意思決定が設計されていない会社では、DXは必ず迷走します。
・誰が最終判断するのか曖昧
・リスクを引き受ける主体が不在
・部門横断の権限が未定義
だから、「もう少し検討しよう」となる。
これは慎重なのではありません。
構造が未設計なのです。
私たちは、意思決定を文化ではなく構造として扱います。
・意思決定階層の明確化
・権限と責任の一致
・会議体の再設計
・情報フローの整理
これを行うと、会議は減り、調整コストは下がり、判断は速くなります。
意思決定が速い会社は、優秀だから速いのではありません。
設計されているから速いのです。
暗黙知の上にAIを乗せても未来は拓けません。
構造を設計し、形式知化し、その上にデジタルを配置する。
これが、私たちがDX支援で行っていることです。
経営の迷走は能力不足ではない。
構造不在の結果です。
次回は最終回。
なぜ私たちは「経営構造設計会社」でありたいのか。
その存在理由をお話しします。
合同会社タッチコア 小西一有
第1回(1/5):なぜ経営コンサルは「違いが分からない」のか
第2回(2/5):私たちは“アドバイス業”ではありません
第3回(3/5):なぜDXは失敗するのか