TouchCore Blog | 業務設計:第2回 「断捨離」が局所改善になる会社―なぜ日本企業は“構造”ではなく“現象”を見てしまうのか
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業務設計:第2回 「断捨離」が局所改善になる会社―なぜ日本企業は“構造”ではなく“現象”を見てしまうのか

先日、とある中堅企業の社長が、こんな話をされていました。

「当社は今期、まず“断捨離”をすることにした」

私は、その言葉を聞いた瞬間、

「社員の皆さんは、きっと細かい節約を始めますよ」

とお答えしました。

すると社長は少し不思議そうな顔をされ、

「いや、そんなことは無いと思う」

と仰いました。

しかし私は、このやり取りに、日本企業が抱える極めて本質的な問題が表れているように感じました。

なぜなら、多くの企業では、

「何を減らすか」は考えていても、

「なぜムダが発生しているのか」を、構造として見ていないからです。

そして、構造が見えていない組織では、「断捨離」という言葉は、ほぼ確実に“局所改善”として解釈されます。

例えば、

・コピー用紙を減らす
・会議時間を短くする
・経費を削減する
・フォルダ整理をする
・印刷を減らす
・出張を減らす

といった話です。

もちろん、これらも必要かもしれません。

しかし、本当に企業体力を削っているものは、そこではないケースが非常に多い。

私は、多くの日本企業において、本当の問題は、

「調整コスト」だと考えています。

例えば、皆さんの会社でも、次のような業務が日常的に行われていないでしょうか。

・部門間確認
・二重入力
・Excel転記
・メール問い合わせ
・承認待ち
・手戻り対応
・資料再作成
・会議のための会議
・システム間のデータ突合

これらは一見すると、“仕事”に見えます。

しかし、その多くは、「業務構造が整備されていないこと」によって発生しています。

つまり、社員が怠けているから発生している訳ではありません。

構造が悪いから、調整が増殖しているのです。

ところが、日本企業では、この問題を「構造問題」として捉えず、

「もっと効率化しろ」
「もっと工夫しろ」
「ムダを減らせ」

という、“現場努力”の問題として扱ってしまうことが非常に多い。

結果として、社員は、「どこを節約すれば良いのか」を考え始めます。

しかし、それでは本質的な改善にはなりません。

例えば、

・データ定義が部署毎に違う
・責任分界が曖昧
・判断ルールが属人的
・業務フローが標準化されていない
・システムが分断されている

そうであれば、調整が増えるのは当然です。

むしろ、調整しなければ仕事が成立しません。

つまり、多くの日本企業では、

「調整そのもの」が業務になってしまっているのです。

これは非常に恐ろしい状態です。

なぜなら、調整コストは、財務諸表に直接現れにくいからです。

例えば、

・会議時間
・確認作業
・問い合わせ対応
・再入力
・資料修正
・承認待ち

は、売上原価にも販管費にも綺麗には現れません。

しかし、企業全体では膨大な時間と人件費が使われています。

つまり調整コストとは、「見えない固定費」なのです。

そして、この調整コストを削減するためには、本来、「業務構造」を見直さなければなりません。

しかし、日本企業では、ここが極めて弱い。

なぜでしょうか。

私は、その理由の一つは、

「業務を設計する」という発想自体が、日本企業にあまり根付いていないからだと思っています。

日本企業は長年、「現場改善力」を武器にしてきました。

これは日本企業の大きな強みでした。

しかし、その成功体験が強すぎた結果、「構造を変える前に、まず頑張る」文化が定着してしまった。

・根回し
・会議
・確認
・例外対応
・属人運用

を、人間系で吸収する方向へ進んでいったのです。

しかも、IT導入ですら、「現場運用を壊さないこと」が優先されることが多かった。

つまり、「業務を再設計する」のではなく

「現状運用を維持したままシステム化する」方向に進んでしまったのです。

その結果、システムは複雑化し、調整は増殖し、企業は大量の見えないコストを抱え込むようになりました。

私は、本当に必要なのは、

「断捨離」ではなく、「構造設計」なのではないかと思っています。

つまり、「どこを削るか」ではなく、

「なぜ、その調整が発生しているのか」を定義することです。

そして、そのために必要なのが、「業務モデリング」です。

業務モデリングとは、単なる業務フロー整理ではありません。

本来の業務モデリングとは、

・誰が
・何を
・どの資源(情報を含む)を使い
・どのような判断を行い
・どの状態へ遷移させるのか

を構造として定義することです。

つまり、「調整が不要になる構造」を設計することです。

DXとは、本来、単なるデジタル化ではありません。

調整コストを生み続ける業務構造そのものを、再設計することなのだと思います。

合同会社タッチコア 小西一有

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