
ここまで私は、
・調整コスト
・現場ヒアリング主義
・要件定義崩壊
・「動くが誰も触(さわ)れないシステム」
・業務モデリング
・データドリブン経営
・AI活用
についてお話ししてきました。
そして私は、これら全てに共通する本質は、
「業務構造を定義出来ていないこと」にあると思っています。
多くの企業では、
・システムを導入する
・AIを導入する
・データ分析を行う
・DXを推進する
こと自体が目的化してしまっています。
しかし本来重要なのは、
「どのような業務構造で企業活動を成立させるのか」を定義することです。
つまり、「構造」です。
私は、日本企業は長年、
「運用力」によって競争力を維持してきたのだと思っています。
例えば、
・現場調整
・根回し
・擦り合わせ
・暗黙知
・ベテラン判断
によって、曖昧な構造を人間系で吸収してきました。
これは、日本企業の強さでもありました。
しかし現在、その前提が崩れ始めています。
なぜなら、
・DX
・AI
・人材不足
・リモート化
・グローバル化
などによって、「人間が空気で補完する」ことが難しくなってきているからです。
つまり今、日本企業は、「運用依存型経営」の限界へ近付いているのです。
ここで重要になるのが、「構造化能力」です。
私は、これからの時代に本当に必要なのは、「システム開発力」だけではなく、
「業務構造を定義する力」なのだと考えています。
例えば、本来企業は、
・誰が
・何を
・どの条件で
・どの状態へ遷移させ
・どのデータを生成し
・どの知識を獲得するのか
を定義出来なければなりません。
つまり、「仕事そのもの」を設計する必要があるのです。
これは単なるIT論ではありません。
経営そのものの話です。
なぜなら、
・商品構成
・サービス構造
・支払方法
・承認ルール
・責任分界
といった業務構造は、本来、「経営判断」だからです。
私は以前、大手金融機関のCIOのお話をご紹介しました。
その企業では、システムが極めて複雑化していました。
しかし、その原因は、「技術力不足」ではありませんでした。
本当は、
・商品乱立
・例外運用
・特殊契約
・多種類の支払方法
など、「業務構造そのもの」が複雑化していたのです。
しかし、その後、社長は、
・商品削減
・サービス整理
・支払方法削減
へ本気で踏み込みました。
つまり、「システムを変える前に、業務構造を変えた」のです。
私は、ここに非常に大きな意味があると思っています。
DXとは、本来、「デジタル化」ではありません。
「業務構造を再設計すること」です。
そしてAI時代になると、この重要性はさらに高まります。
なぜならAIは、「空気」を読まないからです。
AIが理解出来るのは、
・状態
・条件
・ルール
・データ
・関係性
です。
つまり、「業務構造」が定義されていなければ、AIも正しく機能しません。
逆に言えば、
・業務状態
・状態遷移
・判断ルール
・責任構造
が整理されている企業では、
・AI活用
・データ分析
・業務最適化
が成立しやすくなります。
つまり、これからの時代に本当に重要なのは、「デジタル技術」そのものではありません。
「構造化能力」なのです。
私は、日本の経営学部情報コースなどで、本来教えるべきなのは、まさにこの力なのではないかと思っています。
もちろん、
・IT戦略
・ITガバナンス
・情報セキュリティ
も重要です。
しかし、それ以前に必要なのは、
「企業活動そのものを構造として理解し、設計出来る力」ではないでしょうか。
つまり、「業務を設計する力」です。
私は、日本企業に今、本当に必要なのは、「システムを作る人材」ではなく、
「業務構造を設計出来る人材」だと思っています。
なぜなら、構造が定義されていない組織では、
・調整
・属人化
・例外運用
・暗黙知
が増殖し続けるからです。
しかし逆に、構造化された企業では、
・変更容易性
・保守性
・分析可能性
・AI適応力
が高まります。
つまり、「変化に耐えられる企業」に近付いていくのです。
私は、これからの日本企業に必要なのは、「頑張って回す力」ではなく、
「構造を定義し、変化へ適応する力」だと思っています。
そして、その出発点になるのが、「業務モデリング」なのです。
合同会社タッチコア 小西一有
[先週からの関連Blog]
第1回 「現場に聞けば業務は分かる」という危険な誤解
第2回 「断捨離」が局所改善になる会社
第3回 日本企業は「調整」を仕事にしてしまった
第4回 なぜ要件定義でシステムが壊れるのか
第5回 「動くが誰も触(さわ)れないシステム」が完成する
第6回 業務モデリングとは「仕事の設計図」である
第7回 システム構造は、業務構造によって決まる
第8回 なぜ“データドリブン経営”は失敗するのか
第9回 AI時代に必要なのは「業務構造」である