TouchCore Blog | 業務設計:第3回 日本企業は「調整」を仕事にしてしまった ― なぜDXを進めるほど会議が増えるのか
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業務設計:第3回 日本企業は「調整」を仕事にしてしまった ― なぜDXを進めるほど会議が増えるのか

「最近、調整ばかりしている気がする」

そう感じたことがある人は、少なくないのではないでしょうか。

会議。
確認。
問い合わせ。
承認。
根回し。
再説明。
資料修正。
メール往復。

気が付くと、一日の大半が「誰かとの調整」で終わっている。

不思議なことに、多くの日本企業では、それが“普通の仕事”として成立しています。

私は、この状態そのものに、日本企業の構造問題が表れていると思っています。

本来、企業活動とは、

・価値を生み出す
・顧客へ届ける
・利益を生み出す

ために存在しています。

ところが、多くの企業では、「価値を生み出す仕事」よりも、

「社内調整」の方に大量の時間とエネルギーが使われています。

しかも恐ろしいことに、その調整コストは、多くの場合“見えない”のです。

例えば、

「この件、営業に確認してください」
「経理の承認が必要です」
「情報システム部門にも確認します」
「前回と運用が変わっています」
「Excel最新版を送ってください」

こうしたやり取りは、日常的に行われています。

しかし、それらは財務諸表には直接現れません。

ですが企業全体で見ると、膨大な人件費と時間が使われています。

つまり、多くの企業では、

「調整」が巨大な固定費になっているのです。

では、なぜここまで調整が増えるのでしょうか。

私は、その理由の多くは、

「業務構造が定義されていないこと」にあると考えています。

例えば、次のような状態は、日本企業で非常によく見られます。

・部署毎にデータ定義が違う
・業務フローが統一されていない
・責任分界が曖昧
・判断ルールが属人的
・システム毎に入力項目が違う
・部門毎にExcel管理が存在する

こうなると、当然ながら調整が必要になります

なぜなら、構造が揃っていないからです。

つまり、多くの企業では、「構造で解決すべき問題」を、「人間の調整能力」で吸収しているのです。

これは、日本企業の歴史とも関係があります。

日本企業は長年、

・現場力
・改善活動
・擦り合わせ
・根回し

を強みとしてきました。

これは、日本企業の競争力の源泉でもありました。

しかし一方で、その文化は、「構造化しなくても、何とか回る」という成功体験を生みました。

つまり、「多少曖昧でも、現場が頑張れば回る」という文化です。

その結果、本来なら構造として定義すべきものまで、人間系で吸収されるようになっていきました。

例えば、

・責任が曖昧でも、空気を読んで対応する
・データが揃っていなくても、電話で確認する
・業務フローが未整備でも、ベテランが調整する

といった状態です

これは短期的には柔軟に見えます。

しかし、企業規模が大きくなり、システムが複雑化し、組織横断業務が増えると、この方法は限界を迎えます。

その典型が、最近のDX推進です。

本来、DXとは、「業務構造を再設計すること」です。

ところが、多くの企業では、「現状運用を維持したままデジタル化する」方向に進んでしまう。

すると何が起きるか。

調整が増えます。

なぜなら、デジタル化によって業務の曖昧さが可視化されるからです。

例えば、

・データ定義が統一されていない
・業務ルールが人によって違う
・例外処理が大量に存在する
・責任範囲が不明

という状態では、システム化すればするほど確認が必要になります。

つまり、

「DXを進めるほど会議が増える」という現象が起きるのです。

これは、DXが失敗しているのではありません。

本当は、「元々、業務構造が未整備だった」ことが露呈しているだけなのです。

私は、多くの企業で必要なのは、

「効率化」より前に、「構造化」なのではないかと思っています。

つまり、

・誰が
・何を
・どのデータを使い
・どの判断を行い
・どこへ引き継ぐのか

を定義することです。

これは単なる業務整理ではありません。

企業活動そのものを設計することです。

そして、その設計無しに進められたDXは、最終的に、「調整をデジタル化しただけ」になってしまう危険があります。

私は、日本企業に本当に必要なのは、

「デジタル化」より先に、「業務構造を定義する文化」

なのではないかと思っています。

合同会社タッチコア 小西一有

[今週のBlog]

第1回 「現場に聞けば業務は分かる」という危険な誤解 

第2回 「断捨離」が局所改善になる会社