
営業部門では入力作業を自動化し、製造部門では生産状況の集計を自動化しました。
管理部門でも承認書類の電子化が進み、各部門からは作業時間の削減が報告されています。
ところが、顧客から納期を尋ねられると、相変わらず複数の部門に確認し、それぞれの返答を待たなければなりません。
「社内の効率化は進んだ。それなのに、顧客への対応はなぜ変わらないのか」
この疑問に、E2Eでビジネスプロセスを改革するための重要な論点があります。
作業の自動化では、仕事のつながりは変わらない
入力や集計を自動化する際には、既存の仕事を前提に「どう速く、少ない手間で処理するか」を考えます。
しかし、顧客が待たされる理由は、個々の作業時間だけとは限りません。
必要な情報が別の部門にあったり、情報は揃っていても回答を確定する権限がなかったりすることがあります。
また、例外的な対応について、誰が判断するのか曖昧になっている場合もあります。
こうした状態が残っている限り、個々の作業が速くなっても、顧客が回答を得るまでの時間が十分に短縮されるとは限りません。
改革する必要があるのは、作業そのものに加えて、情報と判断、責任のつながりです。
部門を越えて、何を基準に設計するのか
営業は営業の効率を、製造は製造の効率を追求します。
それぞれに合理的な理由があっても、部門ごとの改善を集めるだけでは、会社全体としてどのような仕事に変えるかは決まりません。
例えば、製造部門では、問い合わせへの個別対応を減らすため、納期確認を一日一回にまとめたいかもしれません。
営業部門では、顧客を待たせないため、問い合わせのたびに確認したいと考えるでしょう。
この対立を、どちらかの部門の都合だけで解くのは困難です。
そこで必要になるのが、「顧客にどのような経験を届けるか」という、部門を越えた設計の基準です。
顧客経験を定めると、変えるべき仕事が見えてくる
経営が、次のような姿を目指すとします。
「顧客が、標準的な注文についてその場で納期を確かめ、安心して発注できる会社になる」
この目的から考えれば、「個別確認を速くする」だけに検討を限定する必要はありません。
そもそも、標準的な注文であれば、部門間の個別確認を不要にできないでしょうか。
そのためには、在庫や生産余力、調達予定をどのように把握し、どのような条件であれば営業担当者が納期を確約できるのかを明確にする必要があります。
また、その条件から外れる注文については、誰が、いつまでに判断するのかも決めなければなりません。
こうして、仕事の順序や部門の役割、判断権限、必要な情報を組み直すための議論が始まります。
その設計を支える手段として、システムやAI、自動化を位置付けます。
顧客経験の構想があることで、既存の作業を改善する範囲を越え、仕事全体のあり方を検討できるのです。
E2Eは、社内の最初から最後までを眺めるだけではない
E2Eという言葉を使い、複数部門を改革の対象にしても、目的が「今ある作業の費用を減らす」にとどまれば、顧客が経験する不便を残す可能性があります。
例えば、社内では出荷処理が完了していても、顧客が必要な日に使い始められなければ、顧客の目的は達成されていません。
顧客が何を実現しようとしているのか、その過程でどのような手間や待ち時間、不確実性が生じているのか。
そして、自社はそうした顧客の経験をどのように変えたいのか。
こうした視点から考えることで、改革すべき仕事の範囲も変わってきます。社内の処理が完了したからといって、そこを改革の終点とすることはできません。
経営が定めるのは、実現したい顧客経験
顧客経験価値の向上を掲げるだけでも、改革は進みません。
どの顧客に、どのような経験を届けるのかを具体化し、実際に価値があるかを確かめる必要があります。
さらに、品質、採算、提供能力を踏まえ、どこまでを会社として約束するかを判断します。
その方針に基づき、部門を越えて業務・権限・責任・情報を設計する。経営には、その判断を引き受ける役割があります。
「何を自動化できるか」という問いだけでは、現在の仕事が出発点になります。
「顧客に何ができる会社になるか」という問いからは、これから必要な仕事を構想できます。
売上成長や顧客から選ばれることを目指すE2E改革では、この出発点が欠かせません。
自動化の計画から、価値提供の構想へ
現在の改革計画に並んでいる施策を、一度見直してみてください。
それぞれの施策によって、顧客の何が変わるのか。
その施策をつなげれば、目指す顧客経験を実現できるのか。
さらに、実現に必要なのに、誰も担当していない仕事はないか。
合同会社タッチコアは、経営者・事業責任者とともに、実現したい顧客経験と、それを支える企業能力を構想し、業務・組織・情報・ITの設計につなげます。
「自動化の案件は増えている。しかし、顧客から選ばれる理由がどう変わるのか見えない」
その違和感を、改革の出発点にしませんか。
現在の計画から、何を問い直す必要があるかを一緒に整理します。
合同会社タッチコア
小西 一有
経営リフレーム ミーティング
ー見えている問題と、変えるべき問題は違う
経営者のための90分・戦略対話セッション
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