TouchCore Blog | 【連載】中小企業の未来を拓く:第4回 中小企業こそ試すべき!「小さく試して大きく育てる」モデル変革の進め方
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【連載】中小企業の未来を拓く:第4回 中小企業こそ試すべき!「小さく試して大きく育てる」モデル変革の進め方

「ウチみたいな会社が、ビジネスモデルを変えるなんて無理だよ」

「下手に変えて、今の売上が落ちたらどうするんだ」
このような声をよく耳にします。確かに、現場を支える経営者にとって、「変える」ことは「壊す」ことと紙一重に思えるかもしれません。
ですが、変革は“すべてを変えること”ではありません。
むしろ大切なのは、“変える前に小さく試す”ことです。
中小企業には、大企業よりも小さく素早く実験できるという大きな武器があります。今回はその活かし方を具体的に解説します。

なぜ「いきなり変える」は失敗するのか?

ビジネスモデルとは、「価値をどう届けるか」の構造です。それをいきなり変えるのは、船の設計図を変えたまま出航するようなもの。現場が混乱し、顧客が離れ、社員のモチベーションも落ちかねません。
だからこそ必要なのが、**“仮説検証型のビジネス設計”**です。
これは、スタートアップの世界では常識になっていますが、中小企業にこそ向いています。
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ステップ1
:仮説を立てる ─ 「変えたい構造」を明確にする
まず、「今のモデルのどこが機能していないのか?」を見極めるところから始めます。よくある仮説は以下のようなものです。
•単発取引ばかりで収益が安定しない → 継続関係にできないか?
•顧客の声が社内に届かない → 接点を再構築できないか?
•価格競争に巻き込まれている → 価格以外の価値で勝てないか?
これらは、「商品」ではなく「仕組み」に関する問いです。
つまり、ビジネスモデルを再設計する出発点になります。

ステップ2
:仮説を検証する ─ 小さなスケールで“プロトタイプ”を作る
仮説が立ったら、**「小さく試せる仕組み」**としてプロトタイプを作ります。ここで重要なのは、以下の3つの制約を自ら課すことです。
1.コストをかけすぎない(10万円以下が目安)
2.時間をかけすぎない(1ヶ月以内に形にする)
3.完璧を目指さない(60点で出して反応を見る)
たとえば:
•通常1年契約のサービスを、1ヶ月お試しパッケージにしてみる
•対面営業しかしていなかった商品を、SNSだけで案内してみる
•月額制をやめて、「1回500円」など単発課金にしてみる
これらを一部の顧客層にだけ案内し、反応を数字で測ることが重要です。


ステップ3:顧客に“聞く”ではなく“観察する”
プロトタイプを出したら、ただ「どうでしたか?」と聞くだけでは不十分です。人は往々にして、思っていることを正確に言葉にできないからです。
むしろ観察すべきは次のような行動指標です:
•どの部分に関心を持ったか?
•どこで離脱したか?
•どの選択肢が選ばれたか?
•紹介・リピートは生まれたか?
「買わない理由」より「買われる理由」を発見するのが目的です。


ステップ4:キャンバスで可視化する
試した結果、どの構造がうまくいきそうかが見えてきたら、ビジネスモデル・キャンバスで全体像を整理します。
このキャンバスは以下の9つのブロックで構成されます:
1.顧客セグメント
2.価値提案
3.チャネル
4.顧客との関係
5.収益の流れ
6.主なリソース
7.主な活動
8.パートナー
9.コスト構造
このテンプレートに沿ってモデルを可視化すると、全体として“構造がつながっているか”が見えてきます。


ステップ5
:構造を磨きながら大きく育てる
いきなり全社導入するのではなく、プロトタイプ → 改良 → 小さく展開 → 構造化 → 収益化、という流れで段階的に育てていきます。
成功のカギは、「いけそうだ」と思ったタイミングで、一気に拡大する勇気を持つことです。

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中小企業は「大きく賭ける」のではなく「小さく試して速く動く」
このプロセスを通じて、次のような強みが中小企業にはあります:
•意思決定が速い
•社長が直接顧客と対話できる
•少人数だから情報伝達が速い
•柔軟な仮説検証が可能
つまり、中小企業こそが“試せる特権”を持っているのです。

次回予告
第5回「“真似できない仕組み”をつくれ ─ 大企業の追随を許さないビジネスモデルの条件」では、
競合他社が簡単に真似できない「構造的優位性」をどのように作り出すのか。
中小企業が仕組みで勝つための最終章です。

合同会社タッチコア 小西一有


第1回なぜ中小企業はビジネスモデルを変える必要があるのか?ー価値を実装するための視点転換

第2回:日本企業はなぜビジネスモデルの研究を怠ってきたのか?ー「モノづくり信仰」の功罪

第3回:「デジタル=業務効率化」ではない!ービジネスモデルの中核に置くべき理由

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