TouchCore Blog | 第5回:基幹システムとDXー記録基盤と情報基盤の融合
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第5回:基幹システムとDXー記録基盤と情報基盤の融合

DXの出発点は「正しい記録」

DXを推進するには、データに基づいた意思決定が不可欠です。ところが、データは勝手に生まれるものではなく、まず「正しく記録された事実」がなければ始まりません。
受注・出荷・在庫・仕入・支払い・給与ーこうした企業活動の記録を担うのが基幹システムです。ここで欠落や誤りがあれば、その後の分析やAI活用はすべて不正確になります。つまり DXの第一歩は基幹系の正確性を担保することに他なりません。


情報系がもたらす「未来を考える力」

基幹系が事実を記録するのに対し、情報系はそれを加工して未来に備える力を与えます。
•売上推移を分析して次期の販売戦略を立案する
•在庫回転率を分析して調達リードタイムを改善する
•人員配置のデータから採用計画を策定する
情報系は「過去を未来につなげる翻訳機」です。DXはこの翻訳をさらに高度化し、新しい価値創造に結びつける取り組みだといえます。


基幹と情報の融合がDXを生む

DXの本質は、基幹系(記録)と情報系(加工)を高度に結合し、価値創造のスピードを飛躍させることにあります。
たとえば、販売実績(基幹)と顧客属性データ(情報系)を組み合わせれば、より精緻な需要予測が可能になります。これをAIや機械学習と接続すれば、従来は勘に頼っていた経営判断がデータ駆動に変わります。
逆に、基幹と情報が分断されていれば、DXは掛け声倒れに終わります。正しく融合させることで、初めて企業は「データを資産化」できるのです。


日本企業に足りない視点

多くの日本企業では、基幹=会計、情報系=経営分析、という矮小化が続いています。その結果、「会計処理を早めること=DX」といった誤解が生じているのです。
しかし本質は、基幹で生まれたトランザクションデータを、情報系で統合・分析し、新しい業務プロセスやビジネスモデルに転換することです。会計処理を早めただけでは、未来を創るDXにはなりません。


DXの未来像ー記録と情報をつなぐ経営

これからのDXは、単なるシステム刷新ではなく「記録基盤」と「情報基盤」をつなぐ経営です。
•基幹系で正確に活動を記録する
•情報系で加工・分析し意思決定を支援する
•双方向の連携で、新しいビジネス価値を創出する
この三段階を回し続けることが、データ駆動型経営の実現であり、DXの真の姿なのです。


まとめ

基幹システムは「過去を記録する装置」、情報系は「未来を考える装置」。DXは両者を融合し、過去・現在・未来を一つの流れとして経営に活かすことです。基幹システムを会計に矮小化している限り、日本企業はDXを実現できません。DXの第一歩は、基幹系と情報系の本質を正しく理解し、その融合を戦略的に進めることです。

【連載】基幹システムの正しい理解はビジネス成長を支える

第1回:基幹システムとは何かー会計システムという誤解

第2回:基幹系と情報系 ー入力して記録する世界と加工して情報にする世界

第3回:なぜ基幹システムは止めてはいけないのか-Mission Criticalの本質

第4回:日本で基幹システムが会計に矮小化された歴史的背景


合同会社タッチコア 小西一有