TouchCore Blog | 第5回:正しい要件定義を組織に根づかせる方法ー経営・情シス・業務部門・ベンダーの4者構造を“戦略実装型”に組み替える
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第5回:正しい要件定義を組織に根づかせる方法ー経営・情シス・業務部門・ベンダーの4者構造を“戦略実装型”に組み替える

ここまでの4回で、要件定義が本来担うべき役割と、なぜ現実の要件定義がその役割を果たせなくなっているのかを整理してきました。

最終回では、企業がどのようにして“正しい要件定義”を組織に根づかせるかについて解説します。
正しい要件定義とは、経営の意志を構造化し、業務と情報として設計するプロセスです。
しかし実際には、
・現場の改善要望に偏る
・ベンダー主導になってしまう
・情シスの役割が限定される
という構造によって、その本質が実現されていません。
では企業はどうすればよいのでしょうか。
企業が“未来を変える要件定義”を実現するためには、次の 3つのステップ を踏む必要があります。

ステップ1:経営の意志を明確に“構造として言語化”する
最初に必要なのは、経営が持つ「こうなりたい」という方向性を構造として表現することです。
ここで重要なのは、“スローガンでは意味がない”という点です。
•DXで何を強化したいのか
•競争優位をどこに置くのか
•顧客価値の源泉はどこか
•それを支える業務はどうあるべきか
これらを論理的に繋げ、戦略 → 業務 → 情報 が一本の線でつながる形に言語化する必要があります。
この段階を曖昧にしたままプロジェクトを始めると、要件定義は重力に従うように“現場の課題”へと落ちていきます。
経営の意志を“構造化された言葉”にすることが、すべての起点です。

ステップ2:業務構造を“改善”ではなく“設計”として見直す
次に必要なのが、業務を「再設計の対象」として見直すことです。
多くの企業では、現場ヒアリングを中心に業務改善が進みます。
しかし、改善は部分最適に終わる危険が高い。必要なのは、企業がどの価値で勝つのかという視点から
•業務の役割
•業務間の関係性
•業務の入力・出力
•必要なデータの粒度と位置づけ
を整理し直すことです。
ここで役に立つのが、戦略 → 業務構造 → 情報構造 を一貫して扱える国産の優れた構造化アプローチです。
従来のようにフロー図を修正するのではなく、価値創出の仕組みを“構造”として設計し直す ことで、初めて本来の要件定義が成立します。

ステップ3:情シス・業務部門・ベンダーの役割を再定義する
正しい要件定義を根づかせるためには、
関係者の役割を“戦略実装の観点で”再定義する必要があります。
・情シスの役割
技術担当ではなく、戦略翻訳者・構造調整者 として機能する。
・業務部門の役割
現場の課題提示ではなく、価値創出プロセスの責任者 として構造議論に参加する。
・ベンダーの役割
戦略設計や業務再設計ではなく、決められた構造を実装する専門家 として関わる。

この役割分担が確立すると、要件定義が“現場要望の寄せ集め”から“企業の未来設計”へと変わります。

■ただ、これを“自力で”成し遂げられる企業は多くありません

情シスも業務部門も、本来の役割を果たすための訓練を受けていないため、この構造転換をいきなり組織内で行うのは現実的に難しいものです。
経営者からよく聞く言葉があります。
「理想は理解できるが、うちの組織だけでは実現できない」
まさにその通りで、これは組織の能力不足ではなく、今までその役割を与えられたことがないためです。
だからこそ、多くの企業が“外部CIO”という選択肢を採用し始めています。

■外部CIOという選択が、要件定義を“根づかせる”最短距離です

外部CIOは、企業の内側に入り込みながら
•経営の意志の構造化
•業務構造・情報構造の一貫設計
•情シスや業務部門の育成
•ベンダーコントロールの仕組みづくり
•継続的なアーキテクチャ管理
などを支援します。
タッチコア
では、“要件定義の再定義”を企業全体に浸透させる伴走支援を行っています。
企業が自力でここに到達するには数年かかりますが、外部CIOを導入すれば、数ヶ月で“戦略実装の仕組み”を構築できます。
これは、経営者にとって最もリスクの低い投資です。

■まとめ:要件定義を変えることは、企業の未来を変えることです

要件定義を「現場要望の集約」から「未来の設計」へと転換させること。
それができる企業は、IT投資が確実に戦略に結びつき、組織が“構造的に強く”なっていきます。
逆に、この転換をしないままDXを進めても、結果は変わりません。
最後にひとつ強調したいことがあります。
要件定義を変えることは、企業の未来を変える最も確実な方法です。
そして、その変革は、いつでも始められます。


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合同会社タッチコア 小西一有

第1回:いま日本で行われている「要件定義」は、要件定義ではないー情シスがなぜ疲弊し、ベンダーがなぜ“ユーザー要望書”を量産するのか

第2回:本来の要件定義とは“経営の意志の構造化”ー戦略を業務と情報に落とし込むための実務的アーキテクチャ思考

第3回:ITベンダーが“本来の要件定義”を担えない構造的理由―ベンダー依存の限界と経営が理解すべき役割分担

第4回:情シス× 業務改革部門の役割再定義ー“便利屋”ではなく戦略を実装する企業の中枢機能です