TouchCore Blog | 第5回(5/5):私はITコンサルではない―「入れる前の仕事」を再定義する
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第5回(5/5):私はITコンサルではない―「入れる前の仕事」を再定義する

第1回からここまで、SAP導入を巡る「誤解」と「構造」についてお話ししてきました。

• なぜ「同業」に見られてしまうのか

• なぜ、すべてが「ITの人」に見えるのか

• なぜ、慎重な人が敵になるのか

• なぜ、組織から中立が消えるのか

これらはすべて、個人の能力や性格の問題ではありません。

日本企業におけるIT導入の構造的な問題です。

その構造の中で、私は長らく「ITコンサル」と呼ばれてきました。

しかし、ここまで読んでいただいた方なら、もうお気づきだと思います。

私は、ITコンサルではありません。


■ ITコンサルという言葉が覆い隠してきたもの

一般に「ITコンサル」と言うと、

• システムに詳しい人

• 導入を支援する人

• ベンダーの上流工程をやる人

そんなイメージが先行します。

ですが、この言葉は決定的な違いを覆い隠しています。

それは、「 ITを入れることが前提の人」と「 ITを入れるかどうかを問う人」

この二者は、同じ括りにしてはいけません。


■ 私の仕事は「導入」ではない

私の仕事は、システムを選ぶことでも、要件を詰めることでもありません。

やっているのは、次の三つです。

・経営戦略や方針を、業務構造に落とす

・その業務構造が、ITで支えられるかを検証する

・IT投資として成立するかを判断できる状態を作る

その結果として、

• SAPを導入する

• 時期を見送る

• 別の手段を選ぶ

があるのです。

どの結論になっても構いません。

結論を出すことが仕事ではありません。

結論を間違えない状態を作ることが仕事です。


「入れる前の仕事」は、なぜ軽視されるのか

この仕事が正しく評価されない理由は明白です。

• 成果が「見えない」

• 成功すると「何も起きない」

• 失敗を未然に防ぐから「語られない」

入れなかったSAP、作らなかったアドオン、起きなかったトラブル。

これらは、会議資料にも、成果報告にも残りません。

しかし現実には、IT導入の成否の8割は、入れる前に決まっています。


■ 私は「止める人」ではない

誤解してほしくありません。

私はIT導入を止めたいわけではありません。むしろ逆です。

• 入れるなら、きちんと入れてほしい

• 失敗する形で入れてほしくない

• 組織が疲弊する導入をしてほしくない

そのために、一度立ち止まり、前提を確認します。

これは反対ではありません。

責任ある判断のための前工程です。

■ なぜ、今この仕事が必要なのか

DX、ERP刷新、基幹再構築。

IT導入は、もはや避けて通れません。

だからこそ、「入れること」自体が目的化してはいけません。

必要なのは、

• 業務を設計する視点

• 中立的に前提を確認する立場

• 成功条件を言語化する役割

私は、その立場を引き受けています。

それを便宜的にでも「ITコンサル」と呼んでしまうと、この仕事の本質は永遠に伝わりません。


■ 再定義

最後に、改めて定義しておきたいと思います。

しつこいようですが、私はITコンサルではありません。

業務と意思決定の構造を設計し、IT投資が成立するかどうかを導入前に見極める仕事をしています。

この仕事が正しく理解されることは、企業が同じ失敗を繰り返さないための、小さな一歩になると信じています。


最後に

この5回連載は、SAPの話であり、ITの話であり、同時に 組織の意思決定の話 でもありました。

もし、「自分たちの会社にも、思い当たる節がある」そう感じていただいたなら、

この連載の目的達成です。

合同会社タッチコア 小西一有

第1回(1/5):なぜ私は「ERP製品コンサルと同業だね」と言われて傷ついたのか

第2回(2/5):なぜお客さまの目には、まるっと「ITの人」に見えてしまうのか

第3回(3/5):なぜERP製品導入にブレーキをかける人は「敵」になってしまうのか

第4回(4/5):なぜ組織から「中立な立場」は消えていくのか