TouchCore Blog | 第4回(4/5):前提を守る人はなぜ反発するのか ―人口構造問題と環境問題が示す“思考の防衛本能”
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第4回(4/5):前提を守る人はなぜ反発するのか ―人口構造問題と環境問題が示す“思考の防衛本能”

人口構造問題を議論しているとき、

「成長を前提にしない社会は成立しないのか?」

と問いかけた瞬間、場の空気が変わることがあります。


環境問題で、

「生産しない設計を考えませんか?」

と言った瞬間も同じです。

静かになるか、あるいは強い反発が起きる。

「それは理想論だ」
「現実を見ていない」
「経済が回らない」

なぜ、ここまで強い反応が出るのでしょうか。

それは、前提が単なる論理ではなく、自己と結びついているからです。


前提とは、

・これまでの成功体験
・これまでの努力
・これまで築いてきたビジネス
・これまでの専門性

の積み重ねです。

人口構造問題で「成長を前提にしない」と言われると、

・成長戦略に関わってきた人
・企業拡大を目指してきた経営者
・生産性向上に取り組んできた現場

は、自分の歴史を否定されたように感じます。

環境問題で「生産しない」と言われれば、

・製造業に誇りを持つ人
・サプライチェーンを支えてきた人
・大量生産で社会を豊かにしてきた人

は、自分の仕事そのものを否定されたと感じる。

つまり、前提は合理性の集合体であると同時に、アイデンティティの集合体でもあるのです。

だから前提を疑われると、人は怒る。


これは理屈ではなく、防衛本能です。

もう一つ重要な構造があります。

前提は、多くの場合、“善”と結びついているということです。

人口構造問題では、

・成長は善
・雇用創出は善
・社会保障維持は善

環境問題では、

・リサイクルは善
・回収率向上は善
・技術革新は善

善を疑うことは、倫理を疑うことのように感じられます。

しかし、ここで一つ区別が必要です。

「善であること」と「競争優位を生むこと」は別です。

善であっても、前提が共有されていれば差別化はできません。


本講座で人口構造問題や環境問題を扱う理由はここにあります。

この2つは、

・正義が絡み
・歴史が絡み
・専門性が絡み
・感情が絡む

最も前提が固定化されやすいテーマです。

そして固定化されているからこそ、破壊したときのインパクトが大きい。

講座の中では、意図的に問いを投げます。


人口構造問題で、

「もし“働く”という概念がなくなったら?」

環境問題で、

「もし“所有”という概念がなくなったら?」

この問いに対して、多くの受講者はまず抵抗します。

しかしその抵抗の中に、自分の前提が潜んでいます。

怒りは、前提が揺れた証拠です。


本当の思考は、怒りの先にあります。

改善案を出している間は、怒りは出ません。

テクノロジーの話をしている間も、怒りは出ません。

しかし前提を疑った瞬間、場は緊張します。

その緊張に耐えられるかどうか。

それが構想力の分岐点です。


新イノベーション創造講座は、快適な学習の場ではありません。

問い返されます。
構造を書かされます。
「それは前提ではないか?」と問われます。

その不快さを避ける人には向きません。

しかし、もしあなたが

・これまでの延長線ではない構想を描きたい
・人口構造問題や環境問題のような重いテーマでも、独自の視点を持ちたい
・競争優位を“構造”から設計したい

そう思うなら、この訓練は避けて通れません。

次回、最終回では

「アイデア創出」をどのように再定義するのか。

人口構造問題と環境問題を通じて鍛えた思考が、どのように“違ってしまう構想”を生むのかをまとめます。

合同会社タッチコア 小西一有


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ー前回までー

第1回:なぜあなたのアイデアは「他にもある」と言われるのか

第2回:なぜテクノロジーに逃げ改善に留まるのか

第3回:改善の先に競争優位はない