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人材育成:第5回 経営学部に本当に必要な情報教育とは何か

ここまで4回にわたり、経営学部における情報教育の現状と課題について考えてきました。

情報コースが“SE養成”に見えてしまう現実

・経営とITの分断という構造的問題

・教育が「作る側の論理」に偏る理由

・本来必要とされるIT企画人材の姿

最終回となる今回は、これらを踏まえて、
経営学部における情報教育はどうあるべきかを考えます。

まず、前提として押さえておきたいのは、
技術教育そのものを否定するものではないという点です。

プログラミングやシステムの基礎理解は、現代のビジネスパーソンにとって重要な素養です。

問題は、それが教育の中心になってしまっていることです。

経営学部における情報教育の中心に据えるべきは、
「ITを使って企業や業務をどう変えるか」という問いです。

そのためには、従来とは異なる教育設計が求められます。

例えば、次のようなアプローチです。

●業務を構造的に捉える訓練

単に業務フローを理解するのではなく、

なぜその業務が存在するのか

どこに価値があり、どこに無駄があるのか

を分解し、再構成する力を養う

●経営戦略と業務を接続する思考

戦略は抽象的で、現場は具体的です。

この間をつなぐには、

戦略を業務レベルにブレークダウンし

実行可能な形に落とし込む

という思考プロセスが不可欠です。

●ITを“手段として使いこなす”理解

重要なのは、「何ができるか」を知ることです。

どの技術がどの課題に適しているのか

どこまでが現実的なのか

を判断できるレベルの理解があれば、必ずしも自ら実装する必要はありません。

正解のない問いに向き合う訓練

最も重要なのはここかもしれません。

・何が問題なのか

・どこから手をつけるべきか

・どうすれば変革が実現できるのか

こうした問いには、決まった答えがありません。

だからこそ、仮説を立て、検証し、修正するというプロセスそのものを学ぶ必要があります。

これらは従来の「技術教育」とは大きく異なるアプローチです。

しかし、考えてみれば、
これはまさに経営学が本来扱ってきた領域でもあります。

経営学部に情報コースを設ける意義は、技術を教えることではなく、

経営とITを統合的に捉え、実行できる人材を育てることにあります。

ここで、もう一つ重要な視点があります。

それは、この問題が単なる教育の話にとどまらないという点です。

現在、多くの企業で「DX人材が不足している」と言われています。

しかし実際には、

・技術者はいる

・外部ベンダーもいる

それでも変革が進まない。

その背景には、経営とITを結びつける人材の不在があります。

この構造は、そのままCIO(Chief Information Officer)の不在・機能不全にもつながります。

本来CIOは、ITを単なるコストではなく、経営戦略の実行手段として位置づけ、企業全体を変革していく役割を担う存在です。

しかし、その前提となる人材層が育っていなければ、CIOは育ちません。

あるいは、名ばかりの役職になってしまいます。

つまり、経営学部における情報教育の問題は、

・企業のDXの成否

・そして日本企業全体の競争力

にも直結するテーマなのです。

では、これをどう変えていくのか。

その答えは決して簡単ではありません。

しかし少なくとも、

・ITを“専門家に任せるもの”と捉えるのではなく

・経営の中核として扱い

・それを担う人材を意図的に育てる

という方向に舵を切る必要があります。

経営学部は、その出発点になり得る存在です。

もしここで教育のあり方を変えることができれば、
企業の中でITと経営をつなぐ人材が育ち始めるでしょう。

本連載では、経営学部における情報教育の課題について、あえて少し踏み込んだ形で問題提起を行ってきました。

これは決して特定の大学や教育者を批判するものではなく、構造的な課題に対する問いかけです。

「ITを作る人材」ではなく、
「ITで企業を変える人材」をどう育てるのか。


この問いに向き合うことが、これからの教育に求められているのではないでしょうか。

合同会社タッチコア 小西一有

[関連Blog]

第1回 経営学部の「情報コース」は誰のためのものか?

第2回 なぜズレたのか?—経営学とITの“不幸な分断”

第3回 なぜ情報教育は“作る側の論理”に偏るのか

第4回 プログラミング教育では育たない「IT企画人材」とは