
ここまで、内製化について考えてきました。
・なぜ内製化がブームになっているのか
・本当にそれで問題は解決するのか
・本質は技術ではなく構造にあること
・「作れる組織」と「変えられる組織」の違い
これらを踏まえると、一つの結論にたどり着きます。
内製化は手段であって、出発点ではない
多くの企業では、
・ベンダー依存から脱却したい
・コストを下げたい
・スピードを上げたい
といった理由から、内製化に取り組みます。
しかしその前に、立ち止まって考えるべき問いがあります。
「何を変えるのか?」
「なぜそれをやるのか?」
この問いに答えられないまま内製化を進めれば、
それは単に「作る場所を変えただけ」に終わります。
では、内製化の前にやるべきことは何でしょうか。
答えは明確です。
▶▶IT企画機能を確立する
まず必要なのは、「IT企画機能」の確立です。
ここで言うIT企画とは、
・システムの要件をまとめることでも
・現場の要望を集めることでもありません
本来の役割は、
・経営の意図を理解し
・業務の構造を捉え
・何を変えるべきかを定義し
・それを実現可能な形に設計する
ことです。
この機能がなければ、
・内製化しても混乱は続き
・外注しても同じ問題が繰り返される
だけです。
▶▶業務を構造として設計する
次に必要なのは、業務を構造として捉えることです。
多くの企業では、
・現場の要望を集める
・それをシステムに反映する
という進め方をします。
しかしこれは、部分最適の積み上げに過ぎません。
本来必要なのは、
・業務全体を俯瞰し
・どこに価値があり
・どこを変えるべきかを見極める
という視点です。
そしてその構造に基づいて、システムは設計されるべきものです。
▶▶外部との関係を再設計する
内製化か外注か、という議論は、本来は二者択一ではありません。
重要なのは、どこを自社で持ち、どこを外部に委ねるかという設計です。
・構想・設計は自社
・実装は外部
という形もあれば、
・中核は内製
・周辺は外部
という選択もあります。
つまり、外部を排除することが目的ではないのです。
▶▶内製化は「結果」である
ここまでをまとめると、こうなります。
・IT企画機能が確立され
・業務が構造的に設計され
・何を作るべきかが明確になった
その時はじめて、
「では、それをどう実現するか」という問いが意味を持ちます。
その答えの一つが、内製化です。
つまり、内製化は“出発点”ではなく、“結果”であるということです。
▶▶なぜこの順序が重要なのか
この順序を間違えると、
・作れるが変えられない組織になり
・コストは下がらず
・システムは複雑化する
という状態に陥ります。
一方で、この順序を守れば、
・投資は適切に配分され
・無駄な開発や運用が減り
・結果としてコスト構造も改善される
という流れが生まれます。
これは決して理想論ではありません。
実際に、上流(企画・設計)に投資した企業ほど、全体最適化が進むという傾向は、多くの調査でも示されています。
■最後に
内製化は、間違った選択ではありません。
しかし、それを“解決策”として位置づけてしまうと、本質を見誤ります。
必要なのは、
・ITを「作るもの」としてではなく
・「経営を実現する手段」として捉えること
そして、何を変えるのかを設計できる力です。
この力こそが、今週に繰り返し述べてきたIT企画人材の役割です。
内製化を検討する前に、
まずこの点から見直してみてはいかがでしょうか。
合同会社タッチコア 小西一有
[今週のBlog]
第1回 なぜ今、内製化がブームになっているのか?
第2回 内製化すれば本当にうまくいくのか?
第3回 内製化の失敗は“技術”ではなく“構造”の問題である
第4回 「作れる組織」と「変えられる組織」は何が違うのか