
中期経営計画に、3年後、5年後の売上高と利益率が並んでいる。
その達成に向けて、営業強化や生産性向上、AI活用、システム刷新など、さまざまな施策が掲げられています。
しかし、その計画には、次の問いへの答えがあるでしょうか。
「3〜5年後、お客さまと当社の関係を、どうしたいのか」
お客さまに何を頼りにしてもらい、どのような場面で真っ先に相談される会社になりたいのか。そして、何を理由に継続して選んでもらいたいのか。
こうした顧客との関係のあり方を明確にし、経営の方向性として計画書に示す責任は、経営者自身にあります。
計画書の作成を任せても、構想する責任は残る
経営企画部門に計画書の取りまとめを任せる。
各事業部門に売上見通しや施策を提出してもらう。
それ自体に問題はありません。
ただし、各部門から提出された数字を積み上げ、目標との差を埋めるように求めるだけでは、「どのような会社になるのか」は定まりません。
現在の延長でどこまで成長できるかという予測と、顧客との関係をどう変えるかという経営の意思は、区別する必要があります。
経営者が引き受けるべきなのは、顧客や現場の実態を踏まえながら、将来どのような価値を提供する会社になるかを選び、その実現に資源を振り向ける判断です。
「顧客との関係」を、具体的な言葉にする
例えば、部品を供給する企業が、次のような姿を目指すとします。
「価格を比較されたときだけ検討される会社から、生産計画を立てる段階で、まず相談される会社になる」
これは単なる標語ではありません。
顧客に対して、これまで以上の役割を果たすという意思です。
顧客が安心して相談できる会社になるためには、何が必要でしょうか。
供給できる時期を早い段階で示し、希望する納期への対応が難しい場合には、代替案を提示できること。
また、供給の見通しが変わった際には、顧客が対応できるだけの時間的な余裕をもって知らせることも大切です。
こうした経験を積み重ねることで、初めて「この会社に相談すれば、自社の計画を前に進められる」という信頼につながっていきます。
経営計画には、顧客からどう思われたいかとともに、その信頼を得るために自社が何をできるようにするかを書く必要があります。
そこから、売上目標の根拠を組み立てる
「売上を増やしたい」という希望だけでは、顧客が購入を増やす理由を説明できません。
一方、顧客の計画の初期段階から相談される会社を目指すのであれば、早い段階で顧客の案件を把握し、実現可能な供給案を提案することで、受注機会や継続取引の拡大につなげるという筋道が考えられます。
そのうえで、対象となる顧客数や相談が見込まれる案件数、受注率、取引額などの前提を確かめながら、具体的な売上計画へと落とし込んでいきます。
もちろん、「選ばれる会社になる」と書くだけで数字に根拠が生まれるわけではありません。
顧客がその価値を認めるか、自社に提供能力があるか、競合と比較してどうかを検証する必要があります。
それでも、顧客との関係をどう変えるかという構想があれば、何を確かめればよいかが明確になります。
数字は、その構想と検証を踏まえて組み立てるものです。
生産性向上も、目指す関係から考える
この企業が、社内の処理時間を短縮したとします。
その結果、顧客へ供給案を早く提示できるようになったなら、生産性向上は、目指す関係づくりにつながっています。
一方、社内の集計が速くなっても、顧客への回答を決める仕組みが変わらなければ、顧客が感じる違いは小さいかもしれません。
どの仕事を変え、どの情報をつなぎ、誰に判断権限を持たせるのか。ITやAIに何を担わせるのか。
これらを、顧客との未来から考える必要があります。
計画書で、経営者自身が答える
中期経営計画には、少なくとも次の内容を記したいところです。
・3〜5年後、どの顧客と、どのような関係を築くのか。
・その顧客に、何を理由に選ばれるのか。
・そのために、自社は何ができるようになるのか。
・それが売上や利益につながると考える根拠は何か。
・実現のために、何へ投資し、何を変えるのか。
顧客との関係をどうしたいかが明確になることで、数字、施策、投資を一つの計画として説明できます。
計画書を作成する実務は任せられます。
しかし、顧客との未来を構想し、その実現を引き受ける責任は、経営者に残ります。
合同会社タッチコアは、経営者・事業責任者とともに、顧客から選ばれる理由と必要な企業能力を具体化し、業務・組織・情報・ITの設計につなげます。
中期経営計画の数字はそろったものの、その数字が実現する筋道を説明しきれない。
そう感じるときは、顧客との関係をどう変えるかから、一緒に整理します。
合同会社タッチコア
小西 一有
経営リフレーム ミーティング経営者のための90分・戦略対話セッション

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