
現場が強い会社ほど、構造の問題が見えなくなる
「何とかする力」は誇るべき強みである。だが、それを前提に経営すると、会社は同じ問題を繰り返します。
金曜日の夕方、重要な納品に問題が起きました。
営業が聞いていた納期と、製造部門の認識が違います。物流部門には変更情報が届いていません。
システムを見ても、どの情報が最新なのか分かりません。
そこで担当者たちは電話をかけ、個人管理のExcelを確認し、予定を組み替え、残業して納品に間に合わせました。
週明けの会議では、「現場の迅速な対応で解決しました」と報告されます。経営者も「やはり、うちは現場が強い」と評価します。
しかし、本当に問題は解決したのでしょうか。
情報が正しく流れなかったこと。誰が納期変更を決めるのか曖昧だったこと。
正式なシステムより、担当者のExcelが頼りになっていたこと。これらは何も変わっていません。
問題が消えたのではなく、誰かが吸収しただけです。
現場が何とかすると、経営には「問題なし」に見えます。
日本企業の現場力は、大きな強みです。
顧客の変化を感じ、異常を察知し、想定外へ対応する力は、これからも必要です。
問題は、現場力が「例外への対応」ではなく、「構造不備の常時補完」になっていることです。
情報が届かないので、担当者が個別に連絡します。責任者が分からないので、管理職が根回しします。
システムで仕事が完結しないので、Excelで補います。
その結果、顧客への影響は防げます。数字も悪化しません。経営から見ると、会社は正常に動いているように見えます。
構造に問題がある。
現場が何とかする。
経営には問題が見えない。
構造は変わらない。
また現場が何とかする。
私は、この状態を「現場力依存経営」と呼んでいます。
問うべきは、「誰が頑張ったか」の次です
現場の努力には、きちんと感謝すべきです。しかし、次回も同じ努力を求めてはいけません。
問題が収まった後に、次の三つを確認します。
• なぜ通常の業務プロセスでは解決できなかったのでしょうか。
• 誰が、どの情報不足や責任の曖昧さを補ったのでしょうか。
• 次回は、残業や個人的な連絡網なしに解決できるでしょうか。
同じ問題が繰り返されているなら、それは例外ではありません。
経営が引き取るべき構造問題です。
現場力をなくす必要はありません。
構造の穴埋めではなく、顧客の変化を捉え、新しい価値を生むために使えるようにするのです。
次に「うちの現場は強い」という言葉を聞いたら、一つだけ確かめてください。
今日も仕事が回ったのは、仕組みが機能したからでしょうか。
それとも、誰かが黙って穴を埋めてくれたからでしょうか。
合同会社タッチコア 小西一有
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