
朝から会議に出て、関係部署へ確認し、資料を修正し、上司へ説明し直します。
夕方になると、ようやく自分の仕事に取りかかれます。
「昼間は会議ばかりで、仕事は夜になってからです」
多くの管理職から、私はこの言葉を聞いてきました。
企業は生産性向上というと、入力作業の自動化、ペーパーレス、RPA、生成AIによる資料作成の効率化を考えます。
もちろん、作業時間を減らすことには意味があります。
しかし、その隣で膨大な時間が「調整」に消えていないでしょうか。
営業に確認します。経理に確認します。法務に確認します。部長に相談します。会議の前に関係者へ説明します。
会議後に認識をそろえます。「一応、共有しておきます」というメールを送ります。
こうした調整のすべてが無駄なのではありません。組織で働く以上、必要な対話はあります。
問題は、責任、権限、情報、判断基準が曖昧なために生まれる調整です。
誰が決めるのか分からないので、全員に聞きます。
どの数字が正しいか分からないので、別の資料を作ります。
判断基準が見えないので、経験者に確認します。一人で責任を負いたくないので、会議で合意を取ります。
つまり調整とは、しばしば構造の欠落を人間関係で埋める行為なのです。
属人化は、全社に調整コストを発生させます
「あの業務は山田さんしか分かりません」
この言葉は、山田さんへの称賛に聞こえます。しかし、経営の視点では警報でもあります。
山田さんのもとには、問い合わせ、確認、判断依頼が集中します。
山田さんが会議に呼ばれ、メールの宛先に加えられ、承認の前に相談されます。
山田さん本人が忙しくなるだけではありません。山田さんを待つ人、説明する人、日程を調整する人にも時間が発生します。
属人化は、一人の負荷ではなく、組織全体に調整コストを広げる構造問題です。
AIでメールを速く書いても、調整は減りません
生成AIを使えば、確認メールや会議資料は速く作れます。
しかし、確認そのものが必要な構造を変えなければ、調整は残ります。
会議資料を2時間から30分で作れるようになっても、不要な会議が五つあれば、会社の動きは速くなりません。
AIで根回し文書を速く作れるようになっても、根回しを必要とする意思決定構造は変わりません。
これは「少し速くなった古い会社」です。
本当に必要なのは、調整を効率化することではなく、調整しなくても進む構造をつくることです。
誰が決めるのか。どの情報を使うのか。どこまで現場に任せるのか。例外は誰へ上げるのか。
これらを業務の中に設計すれば、確認、会議、根回しは減らせます。
会議を減らす前に、会議が必要な理由を見ます
「会議を3割減らそう」と号令をかけても、構造が同じなら、別の会議や個別相談が増えるだけです。
まず、一つの会議について確かめてください。
この会議では、誰が何を決めるのでしょうか。
判断に必要な情報は事前にそろっているでしょうか。
参加者全員が本当に必要でしょうか。会
議で決められず、さらに根回しが必要になっていないでしょうか。
答えが曖昧なら、問題は会議時間ではなく、意思決定の構造にあります。
作業を1割速くすることより、調整を半分にする方が、会社の生産性を大きく変える場合があります。
次に「忙しい」という声を聞いたら、仕事量だけを見ないでください。
その人は、価値を生む仕事で忙しいのでしょうか。
それとも、会社の構造に空いた穴を、確認と会議と根回しで埋めているのでしょうか。
経営が減らすべきものは、社員の労働時間だけではありません。
社員が調整しなければ会社が動かない、という状態そのものです。
合同会社タッチコア 小西一有
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