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経営・戦略:第8回 何ができるようになったのか

DXを進めるには、ビジネスアーキテクトが必要だ。

最近、この言葉を耳にする機会が増えました。

しかし、少し気になることがあります。

ビジネスアーキテクトが、単なる「DX推進担当」のように扱われていることです。

システム導入を進める人。

現場の要望を聞く人。

IT部門と事業部門の間に立つ人。

ベンダーとの調整をする人。

DX施策の進捗を管理する人

もちろん、そうした仕事に関わる場面はあります。

しかし、それだけなら、わざわざビジネスアーキテクトという言葉を使う必要はありません。

ビジネスアーキテクトの本質は、もっと深いところにあります。

ビジネスアーキテクトは、DX推進担当ではありません。

経営を構造として設計する役割です。

経営が実現したいことを、業務の構造へ翻訳する。

業務の現実を、情報の構造へ翻訳する。

情報を、判断の構造へつなげる。

判断を、責任と組織の構造へつなげる。

そして、それらをITやAIの実装へ接続する。

これが、ビジネスアーキテクトの役割です。

つまり、単なる通訳ではありません。

調整役でもありません。

各部門の要望を集めて、一覧表にする係でもありません。

むしろ、問い直す人です。

その要望は、本当に顧客価値につながっているのか。

その業務は、何の状態を変えるために存在しているのか。

そのデータは、どの判断に使うのか。

そのシステム投資によって、会社は何ができるようになるのか。

こう問える役割がなければ、DXはすぐに「導入プロジェクト」になります。

現場の要望を集める。

ベンダーが提案する。

システムを入れる。

運用を始める。

そして、しばらくしてから言われる。

「思ったほど変わりませんでしたね」

この繰り返しです。

問題は、現場が悪いのではありません。

IT部門が悪いのでもありません。

ベンダーだけが悪いのでもありません。

経営の意思を、業務・情報・判断・責任・組織の構造へ翻訳する役割がないことが問題なのです。

だから、ビジネスアーキテクトには、進める力だけでなく、止める力も必要です。

目的が曖昧なプロジェクト。

現場の要望を寄せ集めただけの要件定義。

経営判断に結びつかないデータ活用。

ベンダーの提案が、そのまま経営方針のようになっている案件。

こうしたものに対して、いったん立ち止まり、問い直す。

その投資で、会社は何ができるようになるのか。

この問いをプロジェクトの中心に戻すこと。

それが、ビジネスアーキテクトの重要な役割です。

ビジネスアーキテクトは、DXを前に進める人ではあります。

しかし、ただ前に進める人ではありません。

会社が変わる方向へ進んでいるのか。

顧客価値につながっているのか。

業務・情報・判断の構造が変わっているのか。

現場の知が、会社の力に変わっているのか。

そこを問い続ける人です。

DXやAIを「導入」で終わらせないために必要なのは、流行語としてのビジネスアーキテクトではありません。

必要なのは、経営を構造として見て、問い直し、翻訳し、設計する役割です。

そして必要であれば、止める役割です。

その役割を会社の中に置けるかどうか。

そこに、DXやAIが「導入」で終わる会社と、経営能力に変えられる会社の分かれ目があります。

合同会社タッチコア 小西一有

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