
「3年後の売上を、この水準まで伸ばしたい」
「そのために顧客へ提供する価値は、各部門で考えてほしい」
現場に考えてもらうことは必要です。顧客の困りごとや、現在の仕事の問題を知る人の参加なしに、実行できる計画はつくれません。
しかし、顧客から選ばれる理由を構想し、会社として何に取り組むかを決める責任まで、各部門に預けてよいのでしょうか。
それは、中期経営計画の数字を支える、最も重要な判断の一つです。
現場が案を出すことと、経営が決めること
営業部門は価格を下げることで受注を増やそうと考え、製造部門は品種を絞ることで品質と供給の安定を図ろうとします。
一方、サービス部門は個別対応を充実させることで、顧客満足度を高めようと考えます。
いずれも、それぞれの立場から見れば、十分に検討する価値のある意見です。
ただし、すべてを同時に実現できるとは限りません。
価格を下げながら個別対応を増やせば、採算を圧迫する可能性があります。
品種を絞れば、応えられなくなる需要もあります。
どの顧客を重視するのか。
何を、当社が選ばれる理由にするのか。
そのために、何を優先し、何を引き受けないのか。
各部門の提案を踏まえ、会社として選ぶ必要があります。
その選択と結果への責任を引き受けるのが、経営です。
各部門に任せるだけでは、顧客への約束が定まらない
例えば、「急な注文にも、確実な見通しを示してくれる会社」として選ばれたいとします。
営業が「迅速に対応します」と伝えるだけでは、その価値は提供できません。
製造部門の生産余力や調達の見通しを把握したうえで、対応できる条件と難しい条件を明確にし、必要に応じて代替案を提示する。
また、一度示した見通しに変更が生じる場合には、顧客が対応できるだけの時間的な余裕をもって知らせる。
こうした一連の仕事が適切につながって初めて、顧客は安心して注文できるようになります。
その実現には、部門の役割変更や、情報への投資、判断権限の見直しが必要になるかもしれません。
各部門が自分の予算と権限の範囲で努力するだけでは、届かないことがあります。
経営者が、会社としての約束を定め、必要な変更を決めなければなりません。
それ自体に問題はありません。
ただし、各部門から提出された数字を積み上げ、目標との差を埋めるように求めるだけでは、「どのような会社になるのか」は定まりません。
現在の延長でどこまで成長できるかという予測と、顧客との関係をどう変えるかという経営の意思は、区別する必要があります。
経営者が引き受けるべきなのは、顧客や現場の実態を踏まえながら、将来どのような価値を提供する会社になるかを選び、その実現に資源を振り向ける判断です。
数字を求めるなら、数字が生まれる筋道を引き受ける
売上目標を掲げるということは、顧客が今よりも多く購入してくれるという前提を置くことでもあります。
そのためには、なぜ顧客の購入が増えるのか、なぜ競合他社ではなく自社が選ばれるのか、そして、なぜ取引を続けてもらえるのかを考える必要があります。
その根拠となる価値を「各部門で考えてほしい」と預け、経営者は数字の達成だけを要求する。
それでは、計画の最も重要な部分について、責任の所在が曖昧になります。
経営者がすべての案を一人で生み出す必要はありません。
現場の知見、顧客の声、外部の視点を取り入れるべきです。
そのうえで、どの価値を事業の柱にするかを選び、実現に必要な人と資金を配分し、顧客の反応を確かめながら修正する。
この責任は、案の作成を任せても残ります。
供給できる時期を早い段階で示し、希望する納期への対応が難しい場合には、代替案を提示できること。
また、供給の見通しが変わった際には、顧客が対応できるだけの時間的な余裕をもって知らせることも大切です。
こうした経験を積み重ねることで、初めて「この会社に相談すれば、自社の計画を前に進められる」という信頼につながっていきます。
経営計画には、顧客からどう思われたいかとともに、その信頼を得るために自社が何をできるようにするかを書く必要があります。
経営者の報酬は、何のために支払われるのか
経営者には、会社全体を見て判断し、資源を配分する権限があります。
その権限には、個々の部門では引き受けられない選択と、その結果への責任が伴います。
売上目標の上積みを求め、部門間で意見が割れれば、当事者同士で調整するよう促す。
さらに、顧客から選ばれるためにどのような価値を提供すべきかについても、現場に考えさせる。
もし、経営者の役割がそれだけで終わっているとしたら、経営者自身は何に責任を持っているのでしょうか。
高い報酬に見合う仕事を問うなら、売上目標をどれだけ強く要求したかより、選ばれる会社になるために何を決め、何を実現したかを見る必要があります。
中期経営計画に、経営の意思を記す
計画書には、目標数値と部門別施策に加え、経営としての選択を明記したいところです。
・3〜5年後、どの顧客から、何を理由に選ばれる会社になるのか。
・その価値を提供するために、どの企業能力を獲得するのか。
・実現に向けて、部門の役割や資源配分をどう変えるのか。
・顧客に価値が届いたことを、何によって確かめるのか。
ここが定まれば、現場は自分たちの仕事を何のために変えるかを理解し、具体策を考えられます。
顧客から選ばれる価値を、各部門の宿題にしたままにしない。
それを会社の方針としてまとめ、実現を引き受けることが、経営者の仕事です。
合同会社タッチコアは、経営者・事業責任者とともに、顧客から選ばれる価値を構想し、必要な企業能力と業務・組織・情報・ITの設計につなげます。
各部門から案は集まっている。しかし、会社として何を選ぶかが決まらない。
その判断を具体化するところから、ご支援します。
合同会社タッチコア
小西 一有
経営リフレーム ミーティング|経営者のための90分・戦略対話セッション

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