最終回:経営者への提言:企業は、何を活動と認め、何に責任を持つのか //ERPは長い間、「どのパッケージを選ぶか」「いくらで導入するか」といったITの話として語られてきました。しかしERP(企業資源計画)とは、本来、企業が何を活動と認め、それをどこまで記録し、何に責任を持つのかを定義する経営の枠組みです。本連載が一貫して問い続けてきたのは、この一点でした。 最終回では、ERPを「導入するもの」ではなく「定義するもの」と捉え直し、記録されない活動は存在しないのと同じであるという厳しい前提に立ち返ります。技術的制約がほぼ消えた今、それでも記録しない選択をするのかーそれは経営の意思そのものです。ERP再定義論が経営者に突きつける問いを、総括していきます。
第7回:戦略と記録をつなぐ組織設計―DXが進まない企業に「欠けている組織」の正体 //多くの企業で、戦略は語られ、DX方針も掲げられ、IT投資も行われています。 それでも戦略が現場の行動に落ちないのは、戦略を「記録される企業活動」に翻訳する組織が存在しないからです。 経営企画は計画を立て、情シスはシステムを運用する─この分業の間に、「どの活動を、どの戦略のために、どう記録するのか」を設計する役割が欠けていました。 ERP(企業資源計画)を再定義すると、その本質は戦略と記録を一貫させる枠組みにあります。本稿では、DXを成立させるために不可欠な“戦略と記録をつなぐ組織”の役割と設計原則“を分かり易くお話しします。
第6回:CIO/CDOは何をすべきか」―「ITを管轄する役員」では足りない //CIOやCDOという肩書きは広まりましたが、その役割は今なお曖昧なままです。 システムの責任者、DX推進役──その理解に留まっている限り、企業変革は点の改善に終わります。 ERP(企業資源計画)を再定義すると、CIO/CDOの本質的な役割は「IT」ではなく、企業活動をどこまで記録し、その記録をどう計画と意思決定につなげ、何に責任を持つのかという枠組みを定義することだと見えてきます。 本稿では、CIOが担うべき「記録の連続性への責任」と、CDOが担うべき「記録に意味を与える責任」を明確に切り分けたうえで、肩書き論ではなく責任構造としてのCIO/CDO像を提示します。
Weekly:「現場を知らない者に、設計などできるはずがない」という誤解 ―業務改革とIT開発に共通する、日本的“設計不在”の正体 //「現場を知らない者に、設計などできるはずがない」 業務改革の議論で、ほとんど反射的に出てくるこの言葉。 しかしその前提には、「設計とは何か」を取り違えている構図があります。 設計とは、現場を詳しく知ることではありません。 経営戦略に基づき、業務の目的・判断・構造を論理的に決める行為です。 IT開発の現場でも見られる“経験者アサイン”という慣行は、実は設計不在の裏返しではないでしょうか。 業務設計は、現場に精通していなくても可能です。その理由を整理しました。
第5回:経営企画と情シスの分断はなぜ起きたのか―「戦略」と「記録」を切り離した組織の末路 //多くの企業で、経営企画は戦略と計画を語り、情シスはシステムの運用と安定を守ります。一見合理的な分業に見えますが、この分断がDX停滞を生む必然的な構造になっています。問題は、戦略を日々の活動としてどう記録するかを設計する役割が、組織のどこにも存在しなかったことです。計画は抽象のまま現場に落ちず、記録は会計中心のまま経営の問いに答えられない。結果として「間をつなぐ人材」も育たない。第5回では、ERPの本質を「計画と記録の一貫」に置き直し、分断が生んだ弊害と、再統合の鍵が“記録の設計”にあるということをお話したいと思います。
第4回:IT企画人材不足の正体―「いない」のではなく「存在できなかった」 //「IT企画人材が足りない」は常套句になりました。しかし結論から言えば、不足しているのではなく、存在できなかったのです。多くの企業でIT企画は、要件定義の取りまとめやベンダー調整、プロジェクト推進に押し込められ、「何をやるか」を決める仕事として扱われてきませんでした。ERP再定義の文脈では、IT企画の本質は、どんな素活動を記録すべきか/何を企業資源として管理するか/どこまでを基幹にするかを定義することにあります。にもかかわらず、パッケージ前提・提案前提・標準前提の構造の中で「決めてはいけない仕事」にされてきた。だから育たなかった。第4回では、IT企画を“要件定義屋”にしてしまった構造を解き、企画人材が生まれるために経営が設計すべき条件を提示します。
第3回:情シスに必要な人材像の再定義―「ITが分かる人」ではもう足りません //「クラウドに詳しい」「セキュリティに強い」といったスキル要件は重要ですが、それだけではERPは成立しません。ERPを再定義したとき、情シスに求められる中心能力は、IT知識よりも先に、企業活動を“業務として説明できる力”になります。どんな素活動が存在し、何がリソースとして動き、どこで記録されるべきか―これを言語化できなければ、設計も投資判断もブレます。第3回では、情シスの本質が「ITを止めないこと」ではなく「企業活動の記録を途切れさせないこと」にあると整理したうえで、現場・経営・技術の間をつなぐ“翻訳者”としての情シス人材像についてお話しします。
第2回:情シスの役割再定義―「守る仕事」と「変える仕事」を取り違えない //DXが進まないとき、情シスが槍玉に上がることがあります。一方で情シス側にも「無理な要求ばかり」「現場が分かっていない」という不満が溜まります。しかしこの対立は感情論ではなく、役割が定義されていないことが原因です。ERP再定義の立場から見ると、情シスが守るべきものはサーバーでもネットワークでもパッケージでもなく、「企業活動の記録が途切れない状態」そのものだと分かります。止めてはならないのは基幹(記録)であり、情報(利活用)は試して作り替えてよい。第2回では、守る仕事と変える仕事を取り違えないための判断軸を示し、情シスが変革のブレーキではなく、変革を成立させる前提条件になり得ることをお話しします。